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創造主(仮)と異世界日記  作者: 真央
第1章『目覚めは新しい人生と共に』
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第12話 救出 編集中

傭兵、レインを仲間にして再び走ること数分。

狭い路地裏を何度も走り抜け、ようやく辿り着いた場所は人っ子一人いない路地だった。

石の壁は全体的にボロボロで、その壁に吊されている簡素なランタンの明かりももう限界とばかりに明滅していて、それがめったに人が来ない場所だと物語っている。


「なんか…随分街の中心とは雰囲気が違うね。」


「ここはこの街の住民でさえ、知らない人が沢山いる程の場所だ。さっき通って来た道の複雑さを考えたら、知らないのも無理はないだろうな。」


なるほど。

確かにここに着くまでに通って来た道は、明かりのない路地裏だったり、明らかに人が通る為には作られていない場所を無理矢理切り開いたような道だった。

この街の住民が知らないのも納得できる。

それは同時に、この街をたまにしか訪れない人はほとんど知ることはないということだ。

つまり、密売などにはうってつけの場所ということか。


「ここにみんなが…」


そして今僕の目の前には目を疑うような光景があった。

長い道いっぱいに並ぶ石造りの建物。

しかしそのどれもに壁はなく、代わりに鉄格子がはめられていた。

そんな建物が、今こうして目の前に建ち並んでいる。

話の通りなら、この鉄格子に皆が捕われている事になるが…。

そう考えると、また怒りが込み上げてきた。

さっき鎮まった怒りの炎が今は見えない賊に向けてふつふつと燃え上がる。


「…同じ人間を、檻の中に閉じ込めて飼い馴らそうってこと?何様だよ…。」


「落ち着け。気持ちはわかるが今ここで怒りのままに動けば向こうにこっちの存在がばれるぞ。」


「分かってる。分かってはいるんだ…。」


より一層背中の剣の柄を握る手に力が込められる。

まさかこんな風に自分が誰かを憎んだりするだなんて、前の世界の僕なら思いもしなかっただろう。

それだけ前の世界が平和だったということか。

今の世界は、僕がいたあの世界とは違うのだ。

科学は発展せず、国を守る法もない。

いや、法はあれど、それでも国の民を守れる程の悪に対する圧力が圧倒的に足りないのだ。

だから今こんな事態が起こっている。

僕が生み出した世界というのは、こんなにも残酷な世界だったのか。

僕が憧れた世界は、こんなことが当たり前のように起こり得るものだったのか。

そう思うと、たまらなく悲しかった。


…でも、だからこそ。

だからこそ、僕はこの手で、大切な人達を。

マリナを、助けたい。守りたい。



「いいから落ち着け。まずはそこからだ。」


「うん…大丈夫。まずは皆を集めなきゃ。」


そう言って僕は服のベルトに複数付けられたポーチの一つに手を突っ込む。

そして取り出したのは手の中に簡単に収まるくらいの小さな球体だ。

麻布に包まれたこの球体の中には少量の火薬と、ある粉末が入っている。

改めて辺りを見回す。

高い壁に囲まれた場所である。

このまま使うとあんまり効果は期待できそうにないかな。

そう思い、レインに球を手渡す。

本当はこういう使い方じゃないんだけど、まぁとにかく救助隊の皆が気付けばいいのだ。


「これを、この辺りの建物よりも高い所まで投げて欲しいんだけど。」


「?…ああ、分かった。」


レインは素直に応じてくれた。

綺麗なフォームで、一直線に真上に投擲する。

僕はそれを見上げてその球のある方向、空中に向かって人差し指を向ける。

魔力集中ーー目標照準・発射。


「魔の弓よ、我が敵を貫け…『マナボルト』!!」


再び人に聞かせるにはちょっと恥ずかしい呪文を唱える。

人差し指から魔力を凝縮した光の矢を発射する。

それなりのスピードで飛び出した矢は、綺麗に空中の球体に吸い込まれ、その瞬間。


パンッ


乾いたような小さな爆発音と同時に大量の光と煙が溢れ出した。


「ああ…なるほどな。」


レインが何かを察したように頷く。

実はこれは、出撃する直前に村長から皆に配られた召集弾というアイテムだ。

強い衝撃を与える…例えば地面に叩きつけたりすると、大量の煙と強い閃光が発生して、周りに場所を知らせることができる。

主に緊急時の集合などに使われるので、召集弾。

今回は場所が高い壁に囲まれ、地面に叩きつけるだけじゃ周りに気付かせにくいと考えたので空中で爆発させたのである。ちなみにモロに光を見ると数分間ム○カタイムに突入する。


「さてと、じゃあ、行こうか。」


「後から来る奴らを待たなくていいのか?」


「今ので向こうもなんとなく気付いてくるだろうし、できれば早いうちにこっちから打って出たいかなって。」


「じゃあ、お前だけでなんとかする気か?」


「でも守ってくれるんだよね?」


「…依頼人だからな。」


「じゃあ行こう。今すぐ。」


さっきの召集弾の存在に、山賊達も気付いているはずだ。

こんなところでモタモタしてられないよね。

助けに来た頃には時既に遅しとかじゃ、何のためにここまで来たのか。

全てが無駄に終わってしまう前に、助け出さなきゃ。

本当は何も策なんてなかった。

怒りのままに走り抜けようとしていた。

あのままならほぼ死んでいただろう。

後先考えないと

でも今はどうか?

この戦いの勝率はぐっと上がっているだろう。


「さて、どう潜入したものかな…」


「俺は奴らとの面識がある。おそらく俺一人ならそう警戒されないはずだが…」


「でも今更また用もなく出て来たらそれはそれで警戒されないかな?」


「…それもそうだな。」


レインと一緒にうーむと唸る。

全員助けられなきゃ意味がない。

だからこそ慎重にいかなければならない。

一人でも人質に取られたりしたら危険性はかなり高まってしまう。

さっきの召集弾に村長達が気付いてこっちに着くまで二十分ってところか。

道が入り組んでいるせいで迷ってしまう可能性が高い。

無理な作戦で突入するのもかなり危険だし、村長達を待って突入するのも時間のロス的に危険だ。


「…こうなると、レインさんに護衛されたまま正面突破した方が手っ取り早い気がしてきたよ…。」


「いや、俺が必ずしもお前をフォローしきれるとは限らない。」


「でも村で僕が山賊の一人に斬り掛かった時、横から簡単に割り込んで攻撃を防いだよね?」


「それはお前一人だったからだ。大体小さな子供の、しかも女に見えるような奴に、剣の心得があるとは思えなかったしな。」


「失礼な。僕はれっきとした男だよ。まさか女に見えるはずがないじゃないか。」


「さあ、どうだかな。連中の馬車でこっちに向かう道中、一瞬見えたお前の姿を男だとはっきり認識していた奴はあまりいなかっ…た…」


「ん?何、どうしたの?」


突然レインが考え込み出して、問い掛ける。

レインは小さく何か呟きながら、こっちをじろじろと見てくる。

何ですか。

そんなに男には見えませんか。

失礼な。

あと数年すればきっと男らしく成長しているはずだ。

きっと女だと思われるなんてことは無くなるはず。

大丈夫。

数年後に期待だ。


まぁそんなことは置いといて。


「じろじろと、さっきから何なのさ?」


「…作戦を思いついた。」


「え、本当?」


「ああ。一応はな。」


そう言うレインは真面目な表情でそう応える…と本人は意識しているのだろう。

だけど、その顔がちょっと目を逸らされて不安げに揺れているのを僕は感じとった。

ん?いや、不安というよりも、微妙な表情?


「…危険、なの?」


「いや…なんというか、成功するのか…というより、まともに作戦として成り立つのかすら危ういな。」


「…どういった作戦なの?」


「それは…」


レインの口から作戦を教えられる。

その作戦は、確かに作戦とも言えない、自爆行為もいいところなとんでもない作戦だった。

そしてそれを遂行するには、色々と失ってしまうものがある。

主に僕が。

精神的に。

なんて非情なんだ、このヒトデナシー!!


「………それ、本気?」


「いや……正直最初はちょっと名案だと思った自分がいる。」


おそらく人生で一番だとばかりに嫌な顔をする僕にレインは引き攣った顔をする。


…まぁ、選んでいられる程作戦を考えられる余裕なんてないし、時間もそろそろ危ないかな。

多分召集弾を撃ってから5分くらい経ってる。

チラリと壁越しに向こうの様子を見ると、なんだかちょっと慌ただしい。

やっぱり向こうも召集弾に気付いてるよね。


「………はぁぁぁあああ。」


深い深い溜め息をつく。

これくらいは許してもらおう。


「じゃあ、行こうか。」


「え、いや…」


「時間も無いんだから、もうそれしかないでしょ。確かに一番安全に向こうまで辿り着けるしね。」


「……いいのか?」


「いい悪いの問題じゃないよ。今は…マリナを助けることだけを考える。」


これで助けられませんでしたーとかなら、一生この世界を呪ってやる。


さぁ、男としてのプライドは捨てろ。

ここからはただ作戦を遂行する為だけの人形だ。



ーーーーーーーーーーーー


「お?なんだ、忘れ物か何かでもしたか、傭兵さんよォ?」


「いや、街の中で両親のいなさそうな娘を見つけたから、お前達にくれてやろうと思ってな。」


レインはそう言って後ろ手に引き連れる私を前に押し出す。

場所は全く人通りのない路地。

そこには山賊と商人が何人か話し合っている。

おそらく捕らえた奴隷候補の売値を交渉しているのだろう。

今から私もその奴隷候補の中に放り込まれる。

こいつらにいいように弄ばれ、名前も顔も知らない貴族共に売り飛ばされるのだ。

男は値踏みするみたいに私の顔をじろじろと見てくる。

気持ち悪い。

こっち見るな。


「そいつか?…へぇ、中々じゃねぇか。んじゃ、そいつを連れてこっちに来てくれ。まずはそいつを牢に入れてからだ。」


「ああ。」


私はレインと共に山賊の一人である男に連れられ、牢の並ぶ怪しい路地の、その奥へと足を踏み入れた。

そこは袋小路。

周りを建物に囲まれ、逃げ場など何処にもないように思える。


「お前はあっちだ。行け。」



男が檻の方向を指差しながら私に告げる。

私は袋小路の入口から、建ち並ぶ檻の建物をザッと眺め回した。

そこには、何人、何十人もの色んな人達が、鉄格子の中に閉じ込められていた。

ある人はうずくまり、またある人は力無く横たわっていたりと、人の数だけ様々な様子が見て取れる。

しかし、ただ一つ共通点がある。

ここからでも顔が見える人達は、その誰もが全てを諦めたような、虚ろな目で虚空を見つめていた。

自分の運命を呪うこともない。

悲しみの涙などとうに枯れ果てた。

絶望なんてしても意味がない。

ただただ虚無感だけが、その空間にはあった。


「オラ、さっさと行けよ。」


男が苛立ち気味に急かす。

私はそれに耳を傾けることもしない。

遠目でその牢屋の中に、知っている顔を、髪の色を探す。

すると、ちょうどここから真正面の方向、真ん中にある檻。

そこに知っている面々を確認できた。

ミルラ村の人達だ。

捕まってばかりなのか、まだその瞳には生気が残っているように見える。

そして、さらにその牢屋の端っこ。

ほとんどが固まって身を寄せ合っている集団から外れて、一人だけ隅っこでうずくまっているのに気付いた。

その後ろ姿から、銀色の長い髪が地面に広がっている。


…見つけた。



「おい、早くしろって言って…あがっ!!」


男が苛立ちを爆発させて怒鳴りかけたその時。

ガッという音と共に男の短い叫び声が響き、すぐにドサリと何かが倒れ込む音が続く。


「おい、一体何をしている!!」


商人が何か叫んでいる。

すると少し遠くの方から足音が聞こえてきた。

私はそれを合図に後ろの傭兵に向かって叫ぶ。


「レイン!!」


「行け!」


後ろに伸ばした手に、すぽりと何かが収まる。

その感触を感じ取ったその瞬間、走り出していた。

視界に映るのは前方の鉄の牢獄のみ。

私はそろそろ相棒のような雰囲気を漂わせるその剣を抜き放ち、近づいてきた目の前の鉄格子を、


「りゃあああああああ!!」


叩っ斬った。


はた目から見たら不思議な光景だっただろう。

この時、私の持つ剣は、刀身が白い光を帯びはじめていたのだ。

文字通り輝きを放つ白刃は、真っ直ぐ鉄の牢獄へと吸い込まれていき、

ズガン!!と大きな音の後に、周りの扉が周りもろともズンッと前に倒れた。

中の村人達全員が目を見開いてこっちに注目、私の…いや、僕の姿を見ている。


僕はその村人達に向かって呼びかけた。


「早く逃げよう!!」


その言葉がトリガーになったのか、一斉に牢屋の中の人達が我先にと外へと出て行く。

僕はそのまま牢屋内へと飛び込み、奥の方へと進む。

そしてそこにいる女の子に向かって名前を呼んだ。


「マリナ!!」


女の子はその呼びかけにこっちを振り返る。

その目が僕の姿を捉えると、何故か半信半疑のようなよくわからない表情をしている。

って、そりゃそうか。

改めて自分の姿を見る。

今僕が着ている服は、さっきまで着ていた旅団服ではなく、ただの布の服。

その下は半ズボンで、それだけなら普通に僕がマオだと気付いてくれるだろう。

問題は僕の頭だ。

前屈みでいたからか、長い髪が視界にちらつく。

今の僕は、ウィッグを着けているのである。

これが山賊達の目を欺く為の作戦。

僕が女装してレインに捕まったふりをし、山賊達のいる場所に堂々と潜入するという、聞く人が聞けば呆れて何も言えなくなりそうなとんでもない作戦である。

ちなみにウィッグはレインが街の中心部で調達してきたものである。

なんでこんなものが売ってるのかは突っ込むと面倒だからスルー。


ってか、さっきからウィッグの髪が目にかかってる。

ええい鬱陶しい。

カツラのようなウィッグのようなそれを頭から取っ払う。

すると、おそるおそる近づくといった様子だったマリナは、ようやく僕のことを理解してくれたようだ。


「マオ!」


マリナが体当たりで抱き着いてきた。

それを優しく抱き留める。

まるでもう何年も会えなかったような、そんな懐かしさと嬉しさが心の奥底から込み上げてくる。

全身を喜びと達成感に包まれそうになる。


…いや、まだ終わってない。

安心するにはまだ早い。

マリナを引き離す。

そして後ろを振り返り、状況を確認する。

村人達が檻を出た所で固まっている。

その向こうではレインが袋小路の入口で襲い掛かる山賊達を食い止め、捌いていた。


「………………うぇ?」


目の前の光景に思わず口をポカンと開ける。

いやもう、バッタバッタと捌いてます。

手に持った大剣を片手で振り回し、峰の部分で殴り飛ばすように薙ぎ払う。

しかもなんか時々光る斬撃を飛ばすとかいう明らかに人間技じゃないことまでやってのけている。

本当はやっぱり彼一人で山賊なんか張り倒せるんじゃなかろうか。

指先一つでダウンなんじゃなかろうか。

僕は彼の圧倒的な強さに、魅せられていた。

憧れた、といっても間違いじゃないと思う。

物理的な強さだけなら、彼の姿は、僕の理想そのものといっても過言ではない。

もうすぐ村長達救助隊もここに着くだろう。

やっぱり安心してても大丈夫じゃないかな、うん。

マリナと一緒に檻から出て、村人達をかきわけて前に出る。

前方にはレイン無双の産物、死体(戦闘不能)の山が築かれていた。

あれ、商人もろとも薙ぎ払われてるんだね…。

そんな間の抜けた考えが頭に浮かんでいたその時。

死体(戦闘不能)の山の影に何かがうごめいている。

そこから、キラリと光る物が見えた。

あれは何か、そんな考えが頭に浮かぶ前に身体が動いていた。


「危ない!!」


マリナを抱き寄せて光る物の方に背を向けて伏せる。

マリナの盾になるような形で。


「マオ!!」


レインの叫び声も何処か遠くに感じる。

きつく目をとじた。

それとほぼ同時。


キンッ


甲高い、それでいて澄んだような不思議な音が鳴り響いた。

しばしの沈黙。

……何も起こらない。

自分の身にも。

目を開き、後ろを確認する。

死体(戦闘不能)の山の傍に、男が一人倒れている。

右腕がまっすぐこちらに向かって伸ばされ、その手の向かう場所、そこには壊れたボウガンが落ちていた。

さらに辺りを見回すと不思議な光景が広がっている。

僕とマリナを除く全ての人が、ある一点…月の昇っている方向を見ていた。


つられて僕とマリナもその方向を見る。

鉄格子の建物の上に、月明かりを背に、人が立っていた。

謎の闖入者によって場の空気が硬直する。

その間に、その人は建物から消え失せ、一瞬の間に目の前へと現れていた。


「うわっ!?」


びっくりした。

目の前にいきなり人が出て来るんだもの。

しかしそれ以上に、目の前の闖入者は、目を疑うような意外な人だった。


「何だか大変な事になってたみたいだけど…大丈夫?」


「……リディア…おねえ…さん…?」


朝からお出かけしていたハズのリディアお姉さんが、右手に流麗な剣を持って立っていた。


「ええ。マオ君の愛しい愛しいお姉さんですよ?」


いや、その理屈はおかしい。

確かにリディアお姉さんには感謝してもしきれないくらいお世話になってるし、お姉さんはすっごい美人さんだけど…って違う。

問題はそこじゃない。

ツッコミ所はありまくりだけど、まずは何故リディアお姉さんがここにいるのか。

あとその右手に持つ物騒な物はなんですか。

教えてお姉さん。


「まぁまぁとりあえず込み入った話は後にしましょう?まずは…」


お姉さんはニコリとこっちに笑いかけると、くるりと後ろを振り返り、


「この場をなんとかしないと、ね。」


目の前から消えた。



ーーーーーーーーーーーー



そこからは展開が速かった。

お姉さんが初対面であるはずのレインと連携し、残っていた山賊共を鎮圧。

さらに村長率いる救助隊も合流し、この場は完全にお姉さん達の手によって文字通り制圧された。

ええ。いつの間にか死体(戦闘不能)の山が一回りも二回りも大きくなってました。

なんなんだろう。

自分の知る、しかもかなり身近な人が実は最強系ポジションだったーとか分かると、すごく微妙な気分になるね。

疾風怒涛。電光石火。

僕やマリナを含むほとんどの村人達があまりの展開の速さについてこれていない。


「ふぅ…いやしかし、何故リディアはこんな所にいるんだい?」


改めて村長がお姉さんに尋ねる。

うん、それは僕もずっと疑問に思ってた。


「びっくりしたわよ。村に帰ったら、ほとんどもぬけの殻だったから。マオ君やマリナちゃんまでいないし。残ってた人に事情を聞いてこっちに飛んで来たのよ。」


「いくら隣街とはいえ、片道馬車で半日の道をよくそんな速く来れたものだね?」


「久々に魔法を使ったけど、上手く作動してくれたみたいで良かったわ。」


お姉さんは軽い口調でそんなことを言っているけど、瞬間移動の魔法とか、さっき僕が使ってた『ウィンドブースター』みたいな移動強化魔法はあるけど、相当強力な魔力がないと、あの長距離をこんな短時間で詰められない。

…このお姉さん、一体何者なのか。

初対面の時から薄々思っていた疑問が今日という時間を経てより色濃くなった。

そりゃもう、濃すぎて目がチカチカしそうなくらい。



馬車にみんなが乗って(かなり満員)、街道をミルラ村に向かって進む道中。

僕は村長にお叱りを受けた。

まぁ、一人で突っ走るなと釘を刺しておいてこの結果だしね。

そりゃお怒りになるのも分かる。

僕も村長の立場なら怒ってたと思う。

今は当事者だけど。

ちなみにレインも一緒に馬車に揺られている。

彼はあれからもう用はないからと帰ろうとしてたけど、僕と村長とお姉さんに「お礼がしたいから」と押しに押しまくった結果、半分拉致されるような形で同行している。

なんだか山賊達とやってることが変わらないような気がしたけど、気がしただけだよね。


マリナは、僕に身を寄せてすやすやと眠っていた。

恐怖や緊張から解放された安心感からか。

あれから彼女は僕の胸に顔を埋めて静かに泣いていた。

今は泣き疲れたのか、夜中というのも相まって、深い眠りにいるようだ。

その安らかな寝顔を見ながら、白銀の髪を、頭を優しく撫でる。

もうこの子に、辛い思いはさせたくない。

だから、僕が守ろう。

もう二度と危険な目に遭わないように。

そのために、僕は強くなりたい。

誰よりも強く…は言い過ぎにしても、大切な物を守り抜く為の力を。

それをマリナが望むかどうかは分からないけど。

ちょっと押し付けがましいかな?

まぁ、自己満足でもいいじゃないか。

もともと冒険者を目指しているんだから、強くなるのは最初からの目標だし。

レインにでも鍛えてもらおうかな。

村に着くまでの間、ずっとそう遠くない未来について、目指すものについて考えていた。

お待たせしました!!

え、待ってない?


(´・ω・`)


今回は、文章がまとまらなかったせいもあり、かなり時間がかかってしまいました。

すみません。


あ、挿絵描いてたからというのもあります。


第5話しか挿絵無いですが。

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