① ~友達(アンジール)~
案の定アンジールだった
「お早い到着で」
待ちわびた挙句、皮肉が出た
「お久しぶりですお嬢様。ご機嫌麗しゅう?」
皮肉で返され多少腹が立つが、それよりも会えてうれしかった
「本当久しぶりだねー。弓、練習してる?」
「もちろん。相変わらず外に出してもらえないのから矢は撃てないけど、弦を引くのはかなり楽になったよ」
そりゃハンターの素質ありかもなぁ。と笑われた。なれればなってるっつーの。
玄関ホールを上がり2階のさらの部屋に招き、メイドにあったかいミルクを持ってくるように命じる
アンジールはコートを脱ぎどっしりとソファーに腰をかけ「「今回のお土産はこれでーす」などと陽気に皮の袋から何かを取り出した
ちょっと登った先ポッケ村からの土産、マフモフコートと言うポッケ村のハンター装備らしい
アンジールはさらがハンターに憧れている事を知っている。これ以上うれしいプレゼントはない。
「これさえあれば雪山の寒さなんてへっちゃらですぜぇ。お穣ちゃん」といらない謳い文句もつけてくる。
確かにものすごく暖かい、室内で着てると汗が出てくるくらいだった。これで外に出してもらえるかも知れない
父は絶対に許してくれなそうなのでまずは母から説得することにしよう
結果は明白だった。
父を呼ばれ「嫁入り前に何を言っている」「お前の身に何かあったらこの家はどうなる」
結婚、家系の存続、後取り...もう聞き飽きた。
一目散にその場から逃げ、アンジールに泣きついていた
「私だってもう20なの!外のモンスターどれくらい危険なのはわかってる!それにいつまでもこんな狭い屋敷の中じゃ嫌なんだよ!ここから出たい!ハンターになりたい!!」
アンジールはただうんうんと優しく肩を抱きしめるので余計に涙が溢れてくる。
「じゃあ、なっちゃおうか」
えっ
涙が止まった。最初何を言ってるのかわからなかった
ハンターになる?どうやって、家を出ろとでも言いたいのか
そんなことをしても無駄だ。子供の頃にこっそり家を出て近所の山村まで行ったがギルドまで雇って大捜索の大騒ぎになった。今度も別のギルドを雇って連れ戻されるに決まっている
「ちょっと待ってて」
アンジールが何か決意した顔で部屋から出て行った。
数分後、父の怒号が広間だけでなく廊下中に響き渡る
何事だ。アイツは何言った。急いで声の響く方に駆けた
広間を覗くとアンジールは父と母に土下座をしていた
「さらを私に預けて下さい」
父の手には金色のオブジェが握られている
次言ったらコレで殴るぞと言わんばかりの気迫である
「さらに私を預けて下さい」
言葉は歪まない
預ける?
「貴様何を言ってるかわかっているのか」
父が声を上げるがアンジールはそれよりも大きな声で食いいった
「『マカライト鉱石の納品』。このクエストであれば草食モンスターしか確認していない地域でも発見が可能です。」
草食モンスター。こちらから攻撃しなければ害のないモンスター郡である。
「アンジール、確かに貴様の腕には信頼している。だがそれは訳が違うぞ」
元々アンジールは父の依頼を受けてくれるハンターとして頻繁に家に来ていた。同年代ながら憧れの対象になっていたのだ
「お嬢様のお身体にはモンスターの毛一本でも触れさせません。外の空気を吸わせてあげたいのです」
「ならん」
それはそうだ。そんな言葉で説得されるような父ではない
「私の友を2人お供させます。かなりの腕利きです」
名を挙げると父が黙り込んだのはどちらも名の知れたハンターだったからだ。まさに泣く子も黙る名前とはこのことだ
「草食モンスターでも攻撃性はあるし危険だわ。もちろんあなた方が倒してくださるんですよね?」
母が怪訝な顔をしながら問う。草食竜等が自分から攻撃してくるのは繁殖期だけだし、今はそんな時期ではない。まぁもちろん例外もいるわけだが
「もちろんです。お嬢様に武器は一応持たせはしますが使わせません」
それはそれでハンターと言えるのだろうか。と思うのだが...
結局2時間の説得の末に精鋭2人派遣、報酬金、素材は全引渡し というハンター達には全く無駄働きと言う結果になっていたがアンジールは「全く親父さんの過保護っぷりにはまいるよー」などと苦の表情ではなくむしろ生き生きとしていたのだ
こうして私の1日だけのハンターデビューが始ろうとしていた