小さな跡
私は昨夜、蚊に食われた跡が首筋についていました。
もう秋なのに・・・(涙
朝、洗面台の鏡の前で気付く左首筋にある小さな傷二つ。
最初は洋服のタグかボタンにでも引っかかったのかと思って気にも止めなかったが
ほぼ毎朝その傷は付いていて何故か夜には消えてしまう。
傷と言っても小さなカサブタになっているだけで触れてみても
痛くも無ければかゆみすら感じず、気が付くとカサブタは消えいていた。
(こんなホラー映画なかったけ?・・・そうだ・・)
「吸血鬼みたいですね、八雲先輩」
「!?」
ぼんやりと学部の掲示板の前にたっていたら、
考えていたコトを言い当てられ敏哉は不意に頬が紅潮し声の主を凝視してしまった。
「あ、ごめんなさい。怒らせるつもりはなかったんです。
ただその首筋の傷がまるで吸血鬼につけられたみたいですねって」
穏やかに笑いながら1学年下の男子学生・岡見 京介が敏哉の首筋を指さした。
「やっぱりそう思う?」
「はい。面白いトコロに面白い傷つくりましたね。どうしたんですか?」
「それがさぁ俺にも判らないんだよねぇ」
「じゃあやっぱ吸血鬼っすよ。八雲先輩格好良いから」
笑いながら冗談を言いつつも岡見は察するような目でしげしげと首筋を見た。
「これ、どうして着いたと思う?」
敏哉はいつも考えて答えがでなかったので好奇心から聞いてみた。
情報科に在籍する自分よりも生物工学科の岡見の方がもしかしたら変な虫やらに
詳しいかもしれない、と考えたからだ。
「そうっすねぇ・・・・・そうだなぁ・・・・ひっかき傷じゃあないし・・
妥当なところでダニですかねぇ」
ダニだったら毎日同じ場所のみに傷を作ることはないだろう、
しかし毎朝この傷が付いていて夜には消えるなんてことを知らない岡見が
ダニと考えるのは妥当だった。
「やっぱそうかなぁ俺、ちゃんと布団干そうかなぁ」
「そうですよ。殺菌殺菌」
岡見は学科が違うのに何故か何かと敏哉に懐いてきてくれ、
俊哉としても何かとかまっていたら今では学内では結構よく話す方になっていた。
人当たりもよく話も面白い岡見とは生物学と情報科学を融合させられないかなどという
青い学術話から学部内ナンバーワンの美人学生の話まで
実に幅広く話せる貴重な後輩の一人だった。
妹しかいない俊哉にとっては可愛い弟、おそらく岡見にとっても優しい兄
といった役回りなのだろう。
「岡見って一人暮らしだよね?春休みは実家戻るの?」
「いや、バイトもあるし俺実家遠いので金かかるし帰りません」
あれ?岡見の実家ってどこだったけ?と聞こうとしたら
「ってことで春休み中、暇なんで飲みでも何でもお供しますよ」
Vサインなんて作りながら愛嬌ある笑顔で岡見が言った。
「おっ!じゃあ俺も混ぜて」
イキナリ話に入ってきたのは俊哉と同じ学年同じ学科の望月 大輔だった。
「あ、望月先輩。ちーすっ」
「うっす、岡見。お前追試とかなかったか?」
「おい、望月。コイツはお前より優秀だぞ?」
「そいえばそうだった。お前より俺のが追試危ないよなぁ」
岡見はばーんっと豪快に背中を叩かれてよろけそうになった。
どちらかといえば細身の俊哉や岡見とは違い、
望月はバスケ部でしっかりと鍛えている体躯と180センチ台の恵まれた身長で
どこから見てもスポーツマンといった雰囲気だ。
「で、さ。お前ら遊ぶ予定立てているなら結構暇だよな?
俺んちさぁテレビ壊れたちゃったんだよ。
そこで!お願いだ!八雲!!
お前んちでゲームやらせてくれないか?」
「何かやりかけのゲームでもあるんすか?」
「そうなんだよ!岡見、お前『ZONBOID』クリアしたか?」
望月は1週間ほど前に発売されたばかりの前評判のよかった
シューティングゲームの名を挙げた。
「あ、俺まだ買ってないんすよ。どうっすか?面白いっすか?」
「おう、こいつぁスゲエぞ。ってことで八雲。
このとおりだ。
お前のうちのあのでっかいTVでこのゲームをやらせてくれ!」
望月は最初から敏哉にそれをお願いするつもりだったのだろう。
トートバックからソフトを出すと「お前んちPS2あったよな?」と満面の笑みを見せた。
まぁどうせ特別やることもないし・・・敏哉は放課後の予定を思い浮かべてみたが
特別何もなので
「いいよ。岡見もせっかくだから来いよ」
そう軽く望月の願いを聞き入れた。
大学生の春休みって長くてうらやましい!!




