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衝動が生まれるとき

お兄ちゃんに憧れるってのに憧れるであります!

かつん、かつん。

階段を下りてくる音が聞こえた。

ただその音はいつもとは異なり2人分のように感じた。

(瑠香・・・じゃないのか?)

動けないときに見知らぬ来訪者・・・この状況に敏哉は身を固くした。

「せんぱーい!良かったぁそんな死にそうってワケじゃないですねぇ」

「岡見!?何でこんなトコに・・」

お互いがお互いを確認し発したその声は場にそぐわないほどに緊張感に欠けており

ちょうど重なる形となった。

「よかった。瑠香さん。

 先輩は無事みたいだね。

 よかったよかった。

 おかげで君を罰する必要はなさそうだよ」

京介はほっとした。

吸血鬼一族では吸血行為自体は禁じていないが殺したりするような行為は

固く禁じておりもしも殺人などを犯した吸血鬼は極刑と決まっている。

それがもしも半端モノの吸血鬼でも同じだ・・・・

瑠香を殺す必要がなくなり京介は内心ほっとした。

「岡見・・・なんで・・・瑠香・・・」

「いやぁ・・・先輩を初めて学校で見かけた時、何か同族の匂いがしたんすよね。

 でも話してみてもいくらどうみても人間だし・・・なんでだろうな?って

 ずっと思っていたんですよ。

 その答えは瑠香ちゃん見て判りました。

 瑠香ちゃんの方が血を濃くついでますね」

それで初めて瑠香を見たときあんなに驚いた表情を浮かべていたのか?

やっとのことで口をひらき

「お・・かみ・・・俺にはわからないんだが・・・同族って何だ?」

敏哉は狐につままれたような気持ちだった。

「あ、すみません。そうですよね。瑠香さんと違って先輩は自覚ないんだっけ。

 えっとですね。

 先輩、最近瑠香さんに血吸われていることからも判ると思いますが

 瑠香さんって吸血鬼なんですよ・・・いや、違うぞ。

 え・・と・・・先輩と瑠香さんは吸血鬼の血を引いているんですよ」

ほんの少しですがね、岡見はちょっと肩を竦めながら付け足した。

「先輩の両親で・・・お父上さんは健在だってことなのでおそらく母上さまの

 方だと思うのですが・・・お年の割りに若くて綺麗なんじゃないですか?

 または若くして精神を病んだことがあるとか・・・早死になさったとか?

 あ、すみません。

 答え難いことをずけずけ聞いちゃって」

すまなそうにぺこりと頭を下げ謝った。

こうして見ているとさっきの脅迫している京介と

こっちの飄々とした京介とどっちが本性なのかわからない。

しかしながらきっとどちらも京介の一部であることは間違いないだろう。

「え・・と確かに母は瑠香産んですぐに死んだが・・・

 同族って・・・吸血鬼?

 ってことは岡見、お前吸血鬼なのか?」

敏哉は段々話が飲み込めてきたが話がわかったイコール納得出来たではない。

「吸血鬼ってお前・・・考えてみろ!?今昼間だぞ?

 吸血鬼って日光ダメなんじゃないのか?

大体そんな化け物が日本にいるわけないだろ!?」

至極全うな意見を敏哉はまくしたてた。

「はは、やっぱりそう考えちゃうもんなんですかねぇ。

 吸血鬼が日光に弱いってのは小説の中だけですよ。

 実際は日光だろうがにんにくだろうが十字架だろうが大丈夫ですよ」

Vサインなんて作りながらおどけて答えた。

「そして何代・・もしかしたら何十代も前のご先祖様が吸血鬼で・・

 そのままみんなは人間として生きていたけれど瑠香さんで先祖返りして

 牙と吸血衝動が現れたんじゃないかなぁ?」

現在は吸血鬼と人間の婚姻、および生殖は完全に管理されていて

吸血鬼一族側が関知しない混血児はいないが

昔だったら人知れず混血が生まれている可能性もあること、

今の瑠香はほとんど人間と変わりないが先祖の・・・

ハーフやクォーターくらいの子供は異様に寿命が長かったり生殖能力がなかったり

吸血衝動がみられたりしたのではないかと考えられること、

血が薄くなりにつれ精神に異常をきたし短命だった者や

寿命は人間の平均から大きく変わらないが周囲と比べ

異様に若く見えるものがいたのではないか?と説明した。

「詳しくは知らないけれど・・・母は確かに・・・」

若く美しかった母。

精神に異常をきたし短命だった母。

母の親戚縁者がどのような人たちだったかわからない。

母がなくなってから水穂家とはほとんど交流がなかった。

「瑠香さんはいつ頃から吸血行動をとるようになったの?」

もう抵抗する気はないのだろう。

「もう・・・何ヶ月も前から・・・・血が気になって・・・」

瑠香は憔悴したようにつぶやいた。

「そっか・・・じゃあ被害者は八雲先輩だけ?」

「はい・・・・他の人の血には興味がなくて・・・」

そっかぁ・・・・・

ちらりと京介は二人を見比べて

(他の人に興味がない・・・

 つまり八雲先輩に特別な感情を持っていた可能性が高い?)

しかしそれは京介の口から語るべきことではないだろう。

吸血鬼は自分が好ましいと思った異性の血を欲する事が通例だ・・・

しかしもしかしたら血の薄い瑠香はより血を濃くするために

肉親である八雲に惹かれた可能性もある。


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