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Episode-X:少しの勇気と大きな希望

レーザー武器とは、要するに熱である。

一世紀前に軍事開発されたレーザーライフル・SF−1の例を挙げてみよう。

二酸化炭素、窒素、ヘリウムなどの混合ガスを充填したガスレシーバーに内蔵されたポロニウム210という熱源から発せられる熱を数枚のレンズを介して一点に焦点を置き、特殊なノズルを通過して更にキャビティやレンズで圧縮した熱を発射する。これがレーザー武器の正体である。口頭で説明するのはいとも簡単だが、実はそうではない。

それが冷却装置(ラジエーター)や断熱素材の問題だ。

冷却装置の小型化を図れば、中の熱線が焼き切れてスクラムする。

断熱素材を薄くすると人が持っていられない程の熱を帯びる。

かと言って冷却装置や断熱素材を大型化すれば、今度は重量の問題に突入してしまう。

携帯できない、隠密性のない武器に意味はない。使い捨て対戦車ミサイルの様に破壊力もない武器など尚の事だ。

しかし、大気のある空間ならともかく、宇宙空間では火器が役に立たない。

宇宙を占める元素は水素であるが、酸素がなければ大して意味がない。

そういった諸々の理由により、宇宙艦の主砲はレーザーとされている。

ハープーン等の対艦ミサイルも積んでいるが、こちらはあくまで敵の装甲を貫かなくては意味がない。





だとしたら。

アンノーンの使う、高熱源レーザー。あれは一体、どういう仕組みなのか――。







戦闘は全て、ブリッジから肉眼で見て取れる。

一見優勢に見えるこの戦闘も、実は単に力のごり押しで戦っているだけに過ぎない。

量子機雷などの強力なミサイルならばいざ知らず、戦闘機に搭載されたガトリングガンや対戦車ミサイルなどで倒せる程、戦艦級アンノーンは甘くない。

生ぬるい攻撃など意に介した様子もなく、アンノーンがヴィーゴに接近してくる。

その度に上下左右前後から戦闘機による牽制・迎撃・攻撃が入るのだが、足止めにすらなっていない。

孤軍奮闘する<バトルアクス>部隊、<アーバレスト>部隊に指令を絶えず送り続けるブリジットからも、疲労の様子が窺える。

「おい、アンタ。そこのアンドロイド」

エドワードは隣に佇む少女に声を掛けた。

戦闘を傍観していた少女は直立不動の体勢のまま、首だけをエドワードに向けた。

「この戦闘……アンタから見て、勝てると思うか?」

「無理だと思われます。予想演算(シミュレート)によると、勝率は8%です」

「……ハッキリ言うなぁ」

「アンノーン相手に単独戦線は危険です。まずは長距離GCWを行い、師団に助力を求めるべきです」

「そのチャージには、どのくらい掛かりそうだ?」

「主砲に回しているエネルギーを解除するのに四〇秒。変圧器でエネルギー分解を行うのに八〇秒。チャージに一八〇秒。単純計算で三〇〇秒はかかります」

「主砲をブッ放した後では?」

「タービンからのエネルギー充填に三〇〇秒かかります。そこからチャージで一八〇秒です」

「四八〇秒……八分か」

「地球連邦の最強母艦<インビジブル>が相手では、その間に二六八手もの戦略が行えます」

絶望的だ。エドワードは掛けていた椅子に身体を預け、天井を仰いだ。

吹き抜けの様に満天の星々。それらを眺め、ため息を漏らす。

相変わらず、ブリッジには罵声と怒声が響いている。それら全てが虚ろに思えてならない。

これは、夢か。

これは、現か。

半日前まで、ゲーセンで友人と遊び、いつも通りのくだらない日常を送っていたのに。

たった一時間前後で、実に様々な事があった。

アンノーンが襲撃してきた。

友人は死んだ。

変なアンドロイドが助けに来た。

自分が天才・ハロルド博士のクローンである事を知った。

家族と思ってきた者が実は他人だと知った。

これから、自分はどうすればいい。

周りは、自分に何を求めている。

どうして自分は特別扱いされている。

全て、空虚な幻に思える。

ここで、自分は死ぬのか?

(……それはそれで、いいかも知れない)

自虐的な考えが浮上しては沈没してゆく。

(でも……今はダメだ)

ここには、探し焦がれていた少女がいる。

(マドカを……ここで死なせる訳にはいかない!)

だったら、どうする?

考えればいい。

今この場を生き延びる方法を。

目の前の化け物を潰す方法を!







予想演算(シミュレート)

一秒間に二〇〇通りの戦術・戦略・戦法を頭に思い描き、その中から最も効果的なものを選抜する。

更にそこから四〇〇手までをアレンジし、変則的なまでの変換を繰り返す。

勿論、宙域情報も模索し、地の利を最適に活かす。

時間にして、僅か二〇秒。

エドワードはその間に二五〇〇もの戦略を編み出し、改竄改正改修を重ね、

ニヤリと、映画の悪役よろしく邪悪な笑みを浮かべた。







「おい、アンドロイド!」

少女に耳打ちし、その旨を告げるエドワード。

「……出来るか?」

「お望みとあらば、この身を粉にしてでも」

深々と会釈をする少女をよそに、エドワードはガラス越しにアンノーンを見据える。

「反撃……開始だ」

その呟きを聞いたのはアンドロイドの少女だけだった。







そして――。







ヴィーゴの主砲<グラディウス・レイピア>が発射され、アンノーンの中心点を貫いた。

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