表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

Episode-IX:戦略級の存在理由(レーゾンデートル)

久しぶりの投稿です。正直、専門用語が多すぎる……というのが僕の感想DEATH……。

……やばい。何人の読者が途中で読むの止めるかな?(´∀`;)ゝ

マドカ・ハーゲンシュタイナー。

彼女は幼なじみであり、遠縁の親戚でもあり、親友でもあった。

元はイギリスの家系であるヘンデルトの一族は、宇宙開発による多民族交流の影響を受けて、ドイツの血も混ざり、今ではヘンデルト一族とハーゲンシュタイナー一族の関係は円満に築かれている。

マドカの母親はジャパニーズらしく、彼女の中にはイギリス・ドイツ・ジャパニーズと三種類の血が混ざっている。

合理主義のドイツ、独創主義のイギリス、共和主義のジャパニーズという噛み合わない民族主義の混血、その象徴だったマドカは、ヘンデルトからもハーゲンシュタイナーからも煙たがられる存在だった。

更に両親の早死。彼女がどれだけ絶望の縁に立たされたのか何て、想像もつかない。

そして、そんな彼女に初めて――イジメ以外で初めて近付いたのは、紛れもなくエドワードである。

親類縁者の反対を押し切り、一族の同年代の子供からは裏切り者扱いされ、それでもエドワードはマドカに近付き、よく遊ぶ様になっていた。

熱意ある説得により、彼女はエドワードの家に引き取られ、幼少時代を過ごす。

だがある日、彼女は一族の謀らいで施設に送られた。

エドワードはそれ以降、逢っていない。

どこに行ったのか、何故行ったのかを知ったのは、士官生になってからだった。学校のネットワークを駆使して探し、軍にいる事を知った。

ただの九歳の少女は、同い年だと言うのに、軍人になっていたのだ。それも空母クラスのオペレーターに。

彼女は、幼なじみであり遠縁の親戚であり親友であり、そして――初恋の人でもあった。




「戦艦級アンノーン、α-PEACEを離脱!ヴィーゴを追ってきています!」

「十二時方向に旋回、それと155mm砲を十六門射出!何とか足を止めなさい!」

「了解!155mm砲、十六門射出!四番から十番、弾幕包囲!AFCS XXII自動射撃統制システム起動!パルスIよりパルスIII解放、サプレッサー冷却!」

「撃ち方、照準合わせ!」

「火器制御システム(FCS)オールグリン!どうぞ!」

オペレータが叫ぶ。流石にエドワードの表情が強ばる。

「発射!」

ブリジットのかけ声と同時、けたたましい爆音が響く。155mm砲が、綺麗な軌跡を描いてアンノーンに飛来する。

着弾した瞬間、小さな爆発が起こる。

が、やはりというか何というか、ダメージどころか足止めにすらならない。

「ッ、次!量子砲弾を全砲門用意!主砲の準備も同時にしなさい!」

「了解!量子砲弾用意!FCSオールグリン!」

「撃てェ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴン!

僅かだが艦体が揺れる程の衝撃と同時、量子砲弾が発射される。

「主砲、エネルギーチャージまで後120秒!」

マドカが叫ぶ声を、エドワードは聞き逃さなかった。

と、視界の端から光が弾ける。

量子砲弾がアンノーンに着弾したらしい、エドワードは向き直る。

「ダメージがあるのかどうか……まるで分からないわね……」

ブリジットが神妙に呟く。

アンノーンは僅かに速度を落としたものの、再び追ってくる。

周りに漂う避難カプセルには目もくれていない(もっとも、目なんてない訳だが)。

そこが、エドワードにはどうしても引っかかる。

(どうして……本当に、アイツの目的は何なんだ……?)

衛星都市内での行動もそう。今もそう。目的がまるで見えてこない。

(……目的?バカな、アレはただ単に菌と水の塊だ。目的なんてある筈がない)

そんな知能ない、とは思うものの、不安は拭えない。

エドワードはバカじゃない、どころか天才と言ってもいい。彼は気付いていた。多分、……ただの推測に過ぎないのだが、多分、アンノーンの目的は――。

エドワードの思考を遮る様に、オペレーターが叫ぶ。

「アンノーンより高エネルギー反応を確認!熱源、中心部からです!こちらを狙っています!」

「六時方向に旋回!振り切りなさい!」

「主砲、チャージまで後七八秒!」

また、エドワードはいかなる事態でもマドカの声を聞き漏らさない。

「敵主砲、来ます!このままではかわしきれません!」

「サイドブースター、全速力で回避しなさい!」

「了解!サイドブースター放射、緊急回避!乗員はショックに備え――うわぁ!」

オペレーターが言い終わる前に、ヴィーゴのサイドブースターが火を噴く。

艦が大きく揺れ、移動したと同時に、先程までヴィーゴがいた宙域を黒いレーザー光線が走る。

ヴィーゴのグラディウスシールドを掠めただけに終わったのは、ほとんど奇跡だろう。

「被害報告と戦闘員の状況を報告しなさい!」

衝撃に唇を噛みしめていたブリジットが叫ぶ。

「被害報告!グラディウスシールド出力、4%低下。レーザー攻撃の余波により、電子機器の異常を確認!戦闘に差し支えはありません!」

「<バトルアクス>部隊及び<アーバレスト>部隊、出撃準備整いました!出撃許可を!」

「行け!」

ブリジットが命令すると同時に、ヴィーゴから勢いよく飛び出していく宇宙用戦闘機の数々。

戦斧(バトルアクス)強弓(アーバレスト)とはまた、安直な……」

エドワードのぼやきは、誰にも聞こえない。

正直、エドワードは圧倒されていた。つい半日前まで

「実戦に立っても生き延びれる」

と笑っていたが、とんでもない。

自分の様な素人が戦場なんかに出たら、活躍どころか足手まといでしかない。

無力を、改めて痛感する。

(今の俺に出来る事は……何もないのか?)

恐らく、いやきっと、ない。

この戦闘に参加できない自分に嫌気が差す。

幼なじみの少女ですら、戦っているというのに。









彼はまだ、気付いていない。

自分の存在が如何に、戦略的(とんでもない)存在であるかを。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ