第4話 漆黒の気体を纏う生徒
入学式は、新入生代表の答辞を終え、閉幕。
鳳凰学園 1棟 3階の廊下
新入生は担任の教師に誘導され、各自の教室に向かっていた。
そんな中、先ほどの入学式で退屈をもてあまし怒りすら覚えた大男は、態度が一変。さまざまな生徒に話しかけ、高校生活の最初の試練である「友達作り」を難なくこなしていた。
「よう、君何組?」「奇遇だな~おれも4組さ」「先行教科は?」
「ギア?いいいい。俺、才能ないからさ」「あはは、そうそう!じゃあまたあとで」
「君何組?」「俺の名前は司。」「気軽に声かけてくれ!」
実に饒舌である。
司と名乗った高身長生徒は、見ての通り相手と話すのが得意で、明るく好奇心旺盛な人格。
故に友達が多く、誰とでもコミュニケーションをとれる。
が、短気。
しかし、弱点もあるというところは、実に人間らしい人間である。
5分くらい時間がたつと、新入生たちは自分の教室に戻りだした。
そして、各教室でHRが始まった。
「初めまして。この4組の担任を受け持つことになった、沖田といいます。皆さんどうもよろしくお願いします」
しばらく話が続くと、沖田と名乗った担任がこの高校の最重要事項である『クラス対抗バトル』の話を始めた。
「皆さんも知ってると思いますが、ギア・戦闘分野専攻の高校では、戦い方の基本や知識の成長を促進するため、『クラス対抗バトル』を行えます」
「『クラス対抗バトル』とは、ギアの行使を自由にし簡単に言うと相手を降服させた方が勝ちの戦闘形式の年中行事であり、本人の今後のための経験積みを目的とされます」
「この学校も例外なく、何時でも行えるように準備されていますので、行いたい場合はチームを結成して申し出るという形になります」
「勝利した方のチームにはポイントがもらえ、勿論ポイントで待遇が変わったり自分にとってプラスに働くと思いますので、『バトル』は是非何回かは行ってください」
そのとき、どこかのクラスから拍手が聞こえた。
生徒たちは、この拍手の正体はおそらく1組か2組だろうと予測した。
なぜなら、ギアを使えて、ギア使いを本格的に目指している生徒が多くいるからである。
ギアを使える場合、このバトルで優位に戦えるのは誰でも理解できるだろう。
各クラスの担任の話は同時進行。
つまり、自分たちは他の組を踏み台にして成長できるという「喜び」と「余裕」を、拍手という形で表現したのだ。
すると、4組で1人の男子生徒が教師の話中にもかかわらず、勢いよく立ち上がり一言言う。
「今の拍手が悔しかった奴、俺とチームを組まないか」
「・・・・・・」
教師と生徒は沈黙し、数秒後爆笑が4組を包んだ。
「こいつ馬鹿じゃねえの」「うける!!」「あははははは!」「頭おかしいよこいつ!」「別に悔しくねえし」
みんなの反応に、立ち上がった男子生徒は赤面。そして付け加えに一言。
「俺は本気で言ってるんだ!!」
笑いは止まず、その中1人の高身長生徒が立ち上がり、赤面の男子生徒の横まで歩き首に自分の左腕を組み嘲笑混じりに話をする。
「分かった分かった。お前の渾身のギャグは分かったから!とりあえず座れよ」
そんな高身長生徒の左腕を右手で払い、教卓の前に立つ。
「そんなにバカにするならわかった。皆にみせてやるよ!俺の本気を!!」
そう言い放つと、体に気を集中させ始めた。
すると、誰もが驚愕する光景を4組の生徒たちと教師は目にした。
それを獣と遭遇したような目で見ていた高身長生徒は、愕き交じりに叫ぶ。
「なんでギア今使えるやつが4組にいんだよ!!」
彼の目先には、さっきまで爆笑を巻き起こした生徒がいた。
しかし爆笑はさっきまでの話で、今は教室全体に驚愕をもたらている。
体から0.1M先に、自分を中心とする円状の地面から上へとゆらゆら蠢く漆黒の気を発生させていた生徒の姿があった。
「これをいい機会に自己紹介するとするか。1年4組出席番号8番、久住雄平。夢はプロのギア使いだ。よろしく」
久住雄平と名乗った男子生徒は、黒い気を纏ったまま深々(ふかぶか)と頭を下げた。