第3話 ギアが使えない男
4月7日
2日前から満開だった八重桜が際立つ校庭は、快く清新の春を迎えた。
今日は、私立鳳凰学園の入学式。
この高校の特徴は、高校自体の存在だ。
鳳凰学園は、突出した存在意義がある。
それは、一般の高等学校とは根本的な相違だ。
普通、高等学校とは、職業選択や大学進学、部活動の充実などを目的とし成り立っている。
しかし、10年前一斉に建造された全国の64つの高校は、部活動や勉強は第一に考えてはいない理由があった。
ただひとつ、平和のためである。
ギアという超能力まがいの才能を行使し、悪巧みをする悪人の阻止。
これを主活動とするギア使い(一定の人間のみ使用可能な力)や戦闘員(簡単に言うと警察の肉体派)、戦闘用医師(戦場に回復や手当てを務める医師)などを育成するための高校として、多くの生徒を順調に優秀なプロに仕立て上げた。
今年もギア・戦闘専門の高等学校は人気を獲得。
さらに今年は、準最上位であるAAランクのギアを持つ新入生が全国計で9人も現れる結果となった。
当の、ギア使いの名門として有名な私立仙道高校は、2人のAAランク生徒が入学ということで、勢力が大幅に拡大するだろうと予想されている。
その中、正反対の結果だったのが鳳凰学園だ。
新入生の最高ランクはA1人という乏しい補強となった。
その鳳凰学園が今日、入学式を行う。
鳳凰学園 体育館
式次第が始まって1時間を経過し、校長先生の話が始まった。
生徒たちは勿論、1時間も集中力を継続できる訳も無く、何人かは退屈との戦いをしていた。
そんな中、特に苛々していた生徒が、新1年生の4組に存在した。
====ちくしょおう!!話長いんだよ。親じゃねぇんだから。
====もっと楽しくできねえモンかよ。
身長は180超えているか位の男子生徒だ。
男の名は、反田司。
====早く終わんねーかな。
反田は短気で、自分に関係ない話を聞くのは特に嫌いである。
しかし、この性格によると、校長の話は生徒対象だから彼には関係があるんじゃないか?と疑問を抱くのが普通であろう。
だが、違うのだ。
「ギアの話なんてどーでもいいから、早く終われよ。ギア使えない奴に対しての皮肉じゃんか」
今、彼が呟いた言葉は事実に直結する。
つまり、反田司はギアが使えないのだ。
4組になったことにも関係がある。3組~6組は、『入学時点でギアが使えなかった生徒が選ばれるクラス』という、鳳凰学園独自のルールがある。
プロ野球で例えれば、育成選手扱いと考えればよい。
司が4組であることの証明。
それは「ギアが使えない」の一点にある。
しかし、このことが逆に反田司の運命を大きく変えることになる。
長くなってすみません
高校の準備でいろいろありました