笑う幼馴染
話的には、第2章の幕開け、そのプロローグになります。
「せっちゃ〜ん」
名前を呼ばれた。
誰だろう? と振り返る必要も無い、この呼び方は一人だけだし、彼女も行く方向はこっちだ。
そして案の定、私の名前を呼んだ彼女は隣に並んできた。
肩に届くぐらいの髪を、魚の形をした飾りのついた髪ゴムで後ろ一ヵ所だけ結んでいる。それが彼女なりのオシャレらしい。
真崎藍沙。私のクラスメイトにして、幼なじみだ。
「いっしょに帰ろ〜」
「えぇ、行きましょ」
並んで校門を出た。
「今日、部活休みなの?」
「うん。部長と顧問の先生が用事あるから〜って」
「へぇー」
帰り道、他愛もない会話をしながら歩いていく、
「そういえば、せっちゃんは部活入らないの?」
急に、藍沙が訊いてきた。
「そうねぇ。今のところ予定は無いわ、やりたい部活も特に無いし」
「へぇ〜」
「それに……私にはやらなきゃいけないことがあるからね」
「あー、大変だね〜せっちゃん」
「何言ってんのよ!」
「えぇぇ!?」
びしり! 驚く藍沙を指さす。
「私は大変だなんて思ったこと、全然ないわ!」
さした右手をぐっと握る。
「むしろよ! 例えつらい事かもしれない、でもその先に待つものの為に私は苦労は惜しまないわ!」
声高々と宣言した。
「お、おぉ〜……」
藍沙からぱちぱちとまばらな拍手が送られる。
「そういう藍沙こそ、部活大変じゃないの?」
手を開いて、興奮で動いた時に来た髪を後ろに流してから尋ねる。
「ううん。わたしは楽しんで部活してるよ♪」
言ってにっこり笑う藍沙。
そういえば、藍沙が怒ったり泣いたりしてるところ、あまり見たことないわね。
藍沙とは小学校からの付き合いだけど、その頃から怒ったところは見たこと無い。そんな表情を出すくらいなら、笑う。藍沙はそんな感じだ。
―――そして、まさかそれがあんな事件を起こすなんて……今の私達には知るよしもなかった。
今回のキ-キャラクターは、藍沙です。
これからどうなっていくのか……お楽しみ下さい。