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オモイノトリセツ  作者: 風紙文
第一章
5/18

上手く行かぬ現実

発明を手に向かった説子。

しかし、そううまく行くものでは無かった。

なぜなら、それはマッドサイエンティストが作った発明品だから……

そして、私はあの場所へと来た。

蛍奈に貰った発明を右手、その説明書を左手に握って私が欲した物が置いてある場所へ、たどり着いた。

店の中に入り、真っ直ぐにソレへと向かう。

ソレはちゃんとそこにあった。

「……」

私は糸車を見た。


瞬間、発明は名が表す能力を発揮した。


糸車から何本、いや何十本もの糸が伸びた。

その糸はどこかへ曲がるでも止まるでもなく、一直線にソレへと向かい、先を結び付けた。

「凄い……」

糸、と呼べる細さではなく、さながら包帯やセロテープ並の太さに集まった糸がソレに結び付けられていた。

それがどの程度のレベルかは分からないが、ここまで欲していることは目に見えて明らかだった。

これはもう、買うしかない!

私は財布を取り出して中身見る……

「あ」

微妙に足りなかった。

仕方ない、一度帰って取って来ようと思い、店を出ようと出口に向かった。


その時、何かに引っ張られる感覚を覚えた。


「え……?」

原因は直ぐに分かった。一番感覚を覚えた右手を見ると、糸がまだついている。先にはアレがあり……

「っ……!」

右手を引っ張る。しかし、全く動けない。

まるで重しと私に糸を結ばれて移動を制限されているようなこの状況……

「どういうこと……って、言うまでもないわ」

私は左手に持った説明書を開いた。

さっき読んだ説明書きの、更に下に文章があった。

決して、さっき読みのがした訳では無い。

発明が発明なように、蛍奈が作った物の説明書も、ひねくれているんだ。

具体的には、その能力が発揮した時に新たな文章が浮かび上がってくるようになっていて、そこには、なお、で始まる。だいたいはデメリットが書かれているのがお決まりだ。

……今回も、そうだった。



なお、糸はそれを手に入れる、あるいは欲さなくなるまで現れ

一定距離以上離れることが出来なくなる事もある



「……」

蛍奈はこのことをもちろん知っている。それをアイツはわざと隠し、後で気づいた私が慌てる様を見て……


「蛍奈ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




あ、実際には叫んでません。

一応店の中なので。








「せっちゃんおはよ〜」

朝、教室に入ってきた私に藍沙が挨拶した。

「おはよ、藍沙」

私も返して、自分の席についた。

「およ? せっちゃん、どうしたの、コレ?」

着いてきた藍沙が、私の鞄に昨日まで無かった物に気付いた。

「あぁ、コレ?」

ソレは昨日、私が欲していた物。


――――――――あの後結局、悩んだ末、何故この方法が直ぐに思いつかなかったのかと思いながら……糸車をその場に置いて一度帰り、代金を持って戻ってきた。

ソレを買うと、糸は消え、発明は動かなくなった。

壊れた訳では無い。帰り道でも、所々で糸は伸びた。

ただその糸は一本や、多くても数本、力を入れて引くと切れてしまうようなものだった。

……コレの時は全く切れなかった。それだけ、コレを私は欲していたという事だ。

蛍奈の奴、それを教える為に発明を――――――


―――――――な訳は絶対無い。

あの蛍奈だ。あえてデメリットを言わない、後書き、後現しの蛍奈だ。

「……はぁ」

……まぁ、手に入った訳だから。とやかくは言わないでおく。

だが、決して感謝はしないぞ、自称狂った科学者マッドサイエンティスト

「おはよう取説、どうやらうまくいったようね」

噂をすればなんとやら。蛍奈が現れた。

「お陰様でね」

嫌みを混ぜて返す。

「ふふふ、ワタシの発明も悪くは無いでしょう?」

「えぇそうね」

「見直したかしら?」

「さぁね」

「つれないわね、何かアクシデントでもあったのかしら?」

「別に、なんにも無かったわよ、どうもありがとうございましたー」

言って発明を鞄から取り出して返した。

「どう致しまして」

受け取った蛍奈は自分の鞄に発明を……

「あれ? はーちゃん。それって……」

「えぇ、合うかしら?」

鞄をこちらに向けて見せつけた。

そこには、青く色付けされた、羽を模ったシルバーアクセサリー。先のほうには、別の何かと繋げられるように穴が開いていて……

「なんでアンタがそれを持ってるのよ!」

思わず指をさして大声で訊いていた。

「なんでって、昨日行った雑貨店で見つけて、良いなと思ったからよ」

「あれ? でもそれって……」

藍沙が私の鞄を見る。

――――そう、私が昨日買ったもの、それは赤く色付けされた、羽を模ったシルバーアクセサリー。先のほうには別の何かと繋げられるように尖っていて……ちょうど蛍奈の持つ青い羽と繋がるような物で。

「アンタだったのね……」

これは一対の羽型アクセサリー。もちろん一対で買う予定だった私は、足りない代金分を取りに行って帰って来ると。何故か、片方が無くなっていた。

店員に聞くと、少し前に買っていった人がいるとかで、私はその場で青を注文。とりあえず赤だけを買って帰ったのだ。

「なんで一対のアクセを片方だけ買ったりしたのよ!?」

「片方分のお金しか持ってなかったからよ。今日もう片方も買いに行く予定だったの。まさか取説が買ってたなんてね」

「……」

せっかく……共通のものが持てると思ったのに……よりによってコイツと被るなんて……

「今日もう片方を取りに行く予定なんでしょ? なんならワタシと一緒に行く?」

「わたしも行っていいかな?」

「良いんじゃない? いいわよね?」

「……」

「せっちゃん?」

「……蛍奈」

「何かしら? 取説?」

「……アンタって」










アンタって奴はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!










何か欲しいものがある時

貴方はどうしますか?

それを手に入れる為に努力をしますか?

それとも、諦めますか?




もしも、その欲しいものが、ただ、欲しい、と心に強く念じるだけで手に入るとしたら

けどしかし、それが別の誰かにとられてしまう可能性があったとしたら




貴方は……どうしますか?




オモイノトリセツ。いわゆる第一章がこれで終わりました。

しかし、話はまだまだ続きます

これからも説子と蛍奈の発明物語をお楽しみください。


今は、一応の区切りですので

感想及び評価、お待ちしています。

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