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オモイノトリセツ  作者: 風紙文
第一章
4/18

発明作る理由

「……で? 今度はなにを作ったわけ?」

昼休みに来た教室、そこに私と蛍奈はいた。

ちなみに、ここは普段倉庫として扱われている部屋だが、蛍奈が先生に頼んで作った同好会の部屋として使っている。

「何を言っているの? 取説が頼んだものに決まってるじゃない」

聞いてから、あぁ、と思い出した。そういえば言った気がする。確か……

「欲しいものを手に入れるための発明その名も…」

蛍奈は机に置かれた発明を手で持って目線の高さに上げ、

「『あれが欲し糸車』よ」

発明の名前を言った。

「……今さらだけど、そのダジャレみたいな名前はどうにかならないの?」

蛍奈の発明は毎回そうだ。最後の文字から、その発明の形状になった物の名前につながる。

「ワタシのせいじゃないわ、発明の構造の生みの親に言いなさい」

「それって、蛍奈のお祖父さんお祖母さんでしょうが」

蛍奈の祖父母は、『発明の種』と呼ばれる特別な種を作り、ブームとなった。

だが、それから幾年も過ぎた今の時代、それを持つ者は全くいない。誰かが回収したという噂があるが、万を越える数が出回った『発明の種』を、誰が回収しようなどと考えるか。

とにかく、『発明の種』は世から姿を消した。

だが、発明を作る力は今の時代にも、この水野葉家の末裔が持っていたりする。

「ご託はいいわ、取説がこの発明を使えば悩みを解決出来る。それでいいじゃない」

そして、それを人を助ける為に使っている……のかは定かじゃないわね。何せ助けられた人より、困ってる人(八割ぐらいは私)の方が多い気がするし。

「ま、いいわ、これで叶えば儲けものだし」

「そうよ、正直が身を助けるのよ」

発明を渡される。

見た目は糸車そのもの、確か、糸を引いたりより合わせたりする道具のことよね? それでどうやって欲しい物が手に入るっての?

「どうやら使い方が分からないようね?」

心を読まれたように蛍奈が訊いてくる。

いや、毎回そうか。

「なら、言う言葉は分かってるでしょ?」

コイツは毎回毎回……はぁ、仕方ないわね。

「……取説はあるの?」

「ふふふ……」

この言葉を聞く度、蛍奈は笑う。喜びのようなそれだが、とてつもなく妖しげな笑みでもある。

蛍奈が発明を作る理由、それは人を助ける為か。人を困らせる為か。

あるいは、取説とあだ名をつけた私に、取説と言わせる為か……

「ふふふ……取説が取説を欲しているわ」

最後のかもしれない。私は常々そう思っている。

一頻り笑った蛍奈は、糸車の取せ……取り扱い説明書を渡した。

目を通すと――――


あれが欲し糸車

欲しいと思った物が見える範囲にあると、その物に糸が伸びる

その糸は、欲する気持ちに応じて、量を増す

複数欲する物がある場合は、最も糸の多い物が一番心から欲している物である


「なるほどね」

説明書を閉じる。

この発明は、人にそれをどれだけ欲しているかを教えるものなのね……て、ちょっと待って。

「これって、結局最後は自分次第よね?」

欲しくても、手を出せないものは絶対手に入らない、コレにはそれをどうにかする術は無い。

「そうよ?」

蛍奈も肯定した。

「でも分かってるでしょ取説? アナタが欲する物は、決して手を出せない物ではないとね」

「あ……」

それはそうだ。私が欲しい物は、普通に手を出せる場所、値段で売っているのだから。

後は、この糸車を使って、それをどれだけ欲しているかを確かめれば、決心出来る。

そうか、蛍奈はそれを分かってこの発明を……

「……」

「どうしたの? こんなところでふけるよりも、さっさと発明を試しに行った方が良いんじゃないかしら?」

「え、あ、そうね」

私は席を立った。扉を開けて、

「……感謝するわ」

「その言葉はまだ早いわよ」

「……」

蛍奈の顔を見ずに教室を出た。









「そう、その言葉は早いのよ、何故ならワタシはマッドサイエンティストだから……ふふふ」


蛍奈の祖父母が発明の最初の開発者、つまり、蛍奈の両親とは……


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