昼休み会話
翌日の昼休み。お昼を食べようと誘ってきた藍沙と共に蛍奈に声をかけ、昨日の手紙の主、その生徒が座る席の前に行った。
「ちょっといい、出海」
「あ? なんだい竹鳥」
女子にしては珍しく、髪をショートカットにした女子生徒、出海。彼女が手紙の主だ。
「蛍奈」
会わせることはしたので、後は蛍奈にさせるため横に動いた。代わりに蛍奈が出海の前に立つ。
「こんにちは出海さん、少し良いかしら」
「おぉ、別にいいけど、飯食いながらでいいか?」
今は昼休み。教室内では昼食を取っている生徒がほとんどだ。出海も例外でなく購買で売ってるパンが机に置かれている。
……その量は、ちょっと異常だけど。
「構わないわ」
「んじゃ、遠慮なく」
机に置かれた7つのパンの袋。その1つを開けて中身にかじりついた。
「で? 何か用事か?」
「昨日、発明同好会に手紙を出したでしょう」
「あぁ、確かに出したけど……え、もしかして水野葉が?」
「えぇ、発明同好会の部長をしてるわ。つまりはワタシがあの手紙の依頼を受ける、ということなのだけど」
「水野葉かー、ならたいした勝負は出来ないな」
……やっぱり、出海は蛍奈を見れば勝負のやる気が落ちるみたいね。その勝負を断りに来たんだから、好都合だけど。
「そう思っているなら話が早いわ。ワタシ達発明同好会は、依頼を受けてはいる、けどそれは人の悩みを解決する類いのもので、勝負を受ける訳では…」
「じゃあアレだ、一対……五くらいでかかって来い」
……ん?
「ちょっと待ちなさい、ワタシ達は勝負を受ける気はないわ」
「えー、んなこと言わずに戦ってくれよ」
「そもそも勝負の内容を知らないのよ、手紙に書かれていなかった。そんな勝負を受けると思っているの?」
「あ、それはスマン。勝負の内容はな、大食いだ」
お、大食い?
「大食い?」
「そ、大食い……あーん」
既に5つ目のパンを食べている出海。
量もさることながら、この食べるスピードからも分かるように、出海は大食いだ。下手な男子より食べている気がする。
かと言って太っているわけではなく、そのカロリーは部活で消費してるとか。
「実は今色んな部活の人に挑んでてな、運動部は制覇したから次の相手を探してたんだ」
そこで発明同好会の設立を知った出海は、依頼として手紙を出したって訳ね。
「だからさー、頼むよ」
「……」
蛍奈は顎に手を当て、何かを考えてる。
いや考える必要は無いでしょ、さっさと断われば…
「分かったわ」
…………え?
「受けてくれるのか?」
「ただし、一対五よ。そうでなければ勝負にもならいわ」
「おーおーオッケオッケ、じゃあ日付決まったわ連絡するな」
「えぇ、待っているわ」
「ちょっと蛍奈、アレはどういうこと」
発明同好会の部室。メンバーが全員集まったここで、昼休みのことを蛍奈に訊いた。
「あの通りよ、引き受けたの。出海さんの大食い勝負を」
「大食い? 勝負の内容って大食いなのかよ」
あの場所に居なかった佳子が聞いているのをスルーして、蛍奈を更に問い詰める。
「昨日は断わるって言ってたじゃない」
「確かに昨日はそう言ったわ。けど、聞いたでしょう? 出海さんの言葉」
出海の言葉?
「運動部を制覇したから、次の相手を探していた。なら、相手をしてあげればいい……そして、二択を選ぶのよ」
「2択って……」
「勝ってしまうか、負けてあげるか、その二択よ」
「ちょっと待てよ、勝ってしまうって、そんな簡単に勝てるのか?」
「うーん、出海さん、結構大食いだからなー」
佳子と藍沙がそう呟くと、蛍奈は左右に座る2人を交互に見て、
「ワタシが誰か忘れてもらっては困るわ。出海さんに必ず勝つ手段を産み出すことが出来るのよ?」
ニヤリ、と笑い、
「何故ならワタシは、マッドサイエンティストだから」
いつものセリフを言った。
「えっ……と、つまり、どういうことだ?」
ただそれで意味の分からなかった佳子は、首を傾げた。まぁ、普通は分からない。
「出海に勝つ発明を造る、どうせそんなところでしょ」
「そのとおりよ取説、ワタシはこれから発明に取りかかるわ。その間に、取説達は探しておいて」
「探す? 誰をだよ」
「勝負する時に必要な、5人目をよ」




