どういう理由
約一月という時を経て、『オモイノトリセツ』第三章始まります。
「蕎麦屋でカレーうどんがあるのにカレーライスがメニューに無い店は、きっとご飯を置いていないから。でも丼物のメニューがあったら……どう思う?」
「…………は?」
蛍奈がいきなり訳の分からない事を言った。
「丼物とはつまり、ご飯の上におかずを乗せた料理。その時点でそのお店にはご飯がある事が確定される。しかしカレーライスというメニューは存在しない、これが何を意味しているか…」
「分かる訳無いじゃない」
言い切る前に答えた。
「つれないわね、考えもしないで答えを出さなくても良いじゃない」
「……」
まぁそうかもしれないけど、今はそんなの考えてる場合じゃないのよ。
「てか、なによ急に」
「それはコチラの台詞よ取説。何が目的なのかしら?」
そう、今私は呼ばれてもいないのに蛍奈の空き教室を訪れていた。普通の私なら近づきもしない場所にだ。
「依頼なら内容を、違うなら理由を言いなさい。もしかして、入部希望かしら?」
「え? ここ本当に部室だったの?」
「名称としては、発明同好会と学校には申請されているわ。部員はワタシ一人だけど」
そういえば同好会ではあったのよね、発明同好会って名前は初めて聞いたけど。
「5人集まれば部活として格上げ、部費が出るのよ」
「部活にしたいの?」
「別に、今の待遇で文句は一切無いわ」
「じゃあ諦めなさい、仮に私が入っても、残りは集まらないからね」
「それは別にいいのよ取説。あなた、わざと話を反らしてるでしょ?」
ちっ、バレたか。
蛍奈が疑いの目を向ける。だがそれもすぐに止め、やれやれといった感じに肩をすくめた。
「まぁ、大体は分かってるけどね」
「……」
「原因は佳子ね?」
「……………………」
「フフ、図星ね」
にやりと笑った。
蛍奈の言う通り、私がここに来てまで、隠れてまで避けている一人の生徒が居た。
その名前は…
「見つけたぜ!」
ガラガラと扉が開かれた。そこに居たのは、今ちょうど名前を出そうとしていた生徒……
「さぁ! アタシと勝負しな!」
……とりあえず、なぜこうなったのかを説明する方が先か。
それは、昨日のホームルーム前の出来事だった。