願い聞く科学者
始まりました。「オモイノシリーズ」3作目にして連載作、オモイノトリセツ。
さまざまな想いを持つ生徒たちの物語、どうぞお楽しみください。
何か欲しいものがある時
貴方はどうしますか?
それを手に入れる為に努力をしますか?
それとも、諦めますか?
もしも、その欲しいものが、ただ、欲しい、と心に強く念じるだけで手に入るとしたら
貴方は、どうしますか?
私は――――――
―――――――辞めときます
だってそれはつまり、その欲しいと思うものを欲しいと念じるという努力が必要なこと。
そして、まさかああなるとは思わなかったものですから……
私はもう……諦めます。
平日の昼下がり、生徒達は四限が終了した今、ちょっとした解放感に浸り始めた。言わずもがな、昼休みだ。
先生が教室を出るより先に購買へと走る者、机を並べて弁当を広げる者と様々、そんな中、私、竹鳥説子は窓の外を眺めていた。
実は四限の授業が始まった頃からずっとこうしていた。当てられなくて幸いだった。
「……」
ため息をつくのはあえてやめる。あまり心配されたくない悩みだから、へたにため息でもつこうものなら友達の誰かが訪ねてくるに違いなかった。
「どうかしたの? せっちゃん」
……とは言っても、ため息をつかずとも心配してくれる友達がいた。
真崎藍沙、それが彼女の名前。中学の時からの友達で、だいたいの話は出来る間柄だけど……
「……大丈夫よ藍沙、気にしないで」
そんな藍沙にも言えない悩みなのだ。
端的に言ってしまえば、欲しい物がある。ただそれだけだ。
その物は別に何かの限定品とか、予約しなければ入手不可能なものではない。私の通学路、その途中に建つ一軒のお店に普通に並んでいる品物だ。
ただ……それを買う勇気が無いだけ、それさえあれば、容易にも程がある。
そんな物一つの為、今の私のこの状況だった。
するとその時、
「そういう悩みなら、ワタシに任せなさい」
席の前、机の影からにゅっと、一人の生徒が現れた。
腰まで届くほど長い黒髪、瞳も漆黒のように黒く、反して肌は日に当たっていないように白い。
そんなモノトーンな女子生徒。唯一他の色といえば、髪に留められた種を模したヘアピンの緑色だけだ。
「……また、アンタなの」
「ふふふ、信じてみるのも面白いわよ?」
「てか、何に悩んでるとか言ってないんだけど?」
「だいたい分かるわよ、取説の考えぐらい」
そう言って彼女は、にやりと笑った。
「……止めてよね、その呼び方」
竹鳥説子、中だけを取って取説、私をそう呼ぶのはコイツだけだ。
「考えておくわ」
このセリフも既に五回目。
「はぁ……今度は大丈夫なんでしょうね? 蛍奈」
水野葉蛍奈、下手な日本人より日本人っぽい容姿だけど、その中身は……
「私の発明を信じなさい」
自他共に認める。生粋のマッドサイエンティストだ。
オモイノトリセツ、第1話を投稿しました。
この物語は今までに自分が書いたある話を読むと、少し見方が変わってくるかもしれません。
そちらを見てから見るか、見ずに見るか、それは皆様にお任せします。
それでは、
感想及び、評価、お待ちしています。