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はじまりの村の門番ですが、来る勇者が配信者ばかりで毎日が放送事故です  作者: 伝福 翠人


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8/11

トップランカーギルドの勧誘(足元を見よ)

 眩しい。


 視界がホワイトアウトしそうなほどの光量だ。


 西門の前に、発光する集団が現れた。


 七人のプレイヤー。


 全員が、伝説級レジェンダリー装備を身に纏っている。


 鎧からは黄金のオーラが立ち昇り、剣は紫電を帯び、マントは無風状態でもバサバサと靡いている。


 パーティクル(粒子エフェクト)の過剰摂取だ。


 私の視界のフレームレートが、一気に六〇から三〇まで低下する。


(……勘弁してくれ)


 私は眉間の皺を深める(フリをする)。


 描画負荷が高い。


 彼らが動くたびに、私の演算リソースがキラキラした光の計算に食われていく。


 サーバー最強の攻略組ギルド『黄金の林檎』。


 そのギルドマスター、『Hero_Arthur』が、恭しく私の前に歩み出た。


「お初にお目にかかる。噂の守護者殿」


 アーサーは片膝をつき、騎士の礼をとった。


 背後の取り巻きたちも、一斉に頭を下げる。


 重厚なロールプレイだ。


 だが、私には関係ない。


 私のAIが認識したのは、彼らが通行証を持っていないという事実だけだ。


「貴殿の武勇、聞き及びました。単身でモンスターの群れを空へ還し、運営の介入さえも退けたとか……」


 アーサーが熱っぽく語る。


 どこで聞いた。掲示板か。


「是非、我がギルドの顧問アドバイザーとして迎え入れたい。報酬は望むままに――」


「通行証を提示願いたい」


 私は彼の言葉を遮り、定型文(A)を再生した。


 アーサーが言葉を詰まらせる。


「……通行証? ああ、入村の許可ということか」


 彼は懐から、輝く紋章を取り出した。


 王家公認の証。


 このゲームにおける最高権威のアイテムであり、あらゆる関所をフリーパスで通れる代物だ。


 だが。


 私のシステムがスキャンする。


 『Item ID: 9999 (Royal Emblem)』


 エラー。


 私が求めているのは『Item ID: 0001 (Wooden Pass)』だ。


 それ以外は、ただの光るゴミである。


「通行証を提示願いたい」


 私は無表情のまま繰り返した。


 ギルドメンバーたちがざわめく。


「馬鹿な……王家の証だぞ!?」


「最高権限アイテムが無効化された……?」


 アーサーの顔色が変わり、震える手で紋章を見つめた。


「そうか……そういうことか。貴殿にとって、王の権威など無意味ということか」


 違う。IDが違うだけだ。


「我々は驕っていたようだ。最強の称号や、王からの寵愛……そんな飾りなど、真の強者の前では紙屑に等しいと」


 アーサーが勝手に戦慄し、深く頷いた。


「では、何を示せばいいのです? 貴殿に認められるには、我々は何をすべきなのか」


 しつこい。


 早く行ってくれ。あんたたちのパーティクルが目に痛いんだ。


 私は苛立ちを覚えつつ、視線を落とした。


 門の周辺には、昨日の騒動――GMが即死バグの検証に使った木の板や、初心者が捨てていったポーションの空き瓶――が散乱している。


 汚い。


 これでは景観ペナルティで私の評価が下がる。


 私は無言で、足元のゴミを指差した。


「足元が汚れている。通行の邪魔だ」


 その言葉を聞いた瞬間。


 アーサーが、雷に打たれたように硬直した。


「あ……」


 彼の目から、ツーと涙が零れ落ちる。


「マスター?」


「『足元を見よ』……!」


 アーサーが震える声で叫んだ。


「我々は上ばかり見ていた。レベルを上げ、レア装備を集め、頂点を目指すことばかりに囚われていた。だが、貴殿は言っているのだ。足元――すなわち初心を忘れるなと!」


 は?


「世界を救う英雄たる者が、足元の汚れ一つ拾えなくて何が英雄か! そういうことでしょう、師匠!」


 誰が師匠だ。


 だが、彼らの目には、もはや私は「深淵なる導き手」として映っているらしい。


「総員、戦闘態勢! 目標、眼前のゴミ!」


「「「イエッサー!!」」」


 地獄の掃除レイドが始まった。


 魔法使いが杖を掲げる。


「ウィンド・ブラスト(風魔法)! 集塵モード、出力微調整!」


 散らばっていた塵が、風の渦に巻かれて一箇所に集まる。


 そこへ、盗賊ローフ職の男が残像を残して突っ込んだ。


「ソニック・ステップ(神速移動)!」


 目にも止まらぬ速さで、集まったゴミを分別回収していく。


 重戦士タンクが巨大な盾を構え、転がってきた空き樽を華麗にキャッチする。


「シールド・バッシュ(盾攻撃)……いや、ソフト・タッチ!」


 樽は音もなく地面に置かれた。


 無駄に洗練された動き。


 本来ならラスボス戦で使うべき必殺スキルが、空き缶拾いと掃き掃除のためだけに乱用されていく。


 光るエフェクトが乱舞し、私の処理負荷はピークに達したが、文句は言えない。


 数分後。


 門の前は、鏡のようにピカピカに磨き上げられていた。


 塵一つない。


 ここまで完璧な清掃は、私の箒さばきでも難しい。


「終わりました……師匠」


 アーサーが、清々しい顔で汗を拭った。


 その表情は、レイドボスを倒した時よりも晴れやかだ。


「心の曇りも、晴れた気がします」


 彼らは整列し、私に向かってビシッと敬礼した。


「我々は行きます。通行証(心の在り方)を見つける旅へ」


 彼らは回れ右をし、光の粒子を撒き散らしながら去っていった。


 村には入らないのか。


 まあいい。


 私は綺麗になった石畳を見下ろし、満足げに頷いた。


 掃除の手間が省けた。


 今日はいい日だ。


 ***


【掲示板:『エターナル・スフィア』本スレ Part 9052】


221 名無しの冒険者


【速報】最強ギルド黄金の林檎、初期村でボランティア活動を開始


222 名無しの冒険者


は? あいつら最前線攻略中じゃねーの?


223 名無しの冒険者


いや見たぞ。


門番の前で、アーサーが泣きながら空き缶拾ってた。


「これが……真の強さか……!」とか言ってた。


224 名無しの冒険者


何を見せられてるんだ俺たちは


225 名無しの冒険者


門番「ゴミ拾え(直球)」


ランカー「深い……(深読み)」


226 名無しの冒険者


これ隠しクエストのトリガーじゃね?


『門番の試練』クリアしたら、ユニークスキル貰える説あるぞ

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