表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

大魔導士

玉座の間にムシバはいた。階下の大騒ぎなど眼中にないのか、おやつのドーナッツを美味しそうにモグモグ食べている。

「侵入者が現れたというから、誰かと思ったらきみだったのかミア」

「いまはおかし忍者あずきよ。あんたを討ち取りに来た。いざ尋常に勝負っ!」

あたしはファイティングポーズをとる。ムシバは肘掛けに肘を乗せて深く腰掛けたままだ。

「きみは絶対にボクのもとに帰ってくると思っていたよ。ボクの愛が恋しくなったんだね」

「そんなわけないでしょ。あんたなんて反吐が出るくらい嫌いよ!そういえばユウキ王子はどうしたの?」

「あいつなら殺したよ。三族にわたって誅殺した」

「あいかわらず残忍な男ね。鬼!悪魔!ど変態!」

あたしは猛烈にムシバの人間性を批判する。おかしと美少女いがいにはおそろしく冷たい。

「少し口が悪くなったね。美少女は美しい言葉を使うべきだ」

ムシバはまったく意に介していない。

「きみ以外のおかしドールを作ろうと思ったんだけど、各国の魔女っ子に警戒されてしまい作れなかったんだ。パーティでうっかり魔力が動力だと口を滑らせちゃったからなぁ。ちょうどいいところに帰ってきてくれた」

「あたしはもう2度と、あんたの支配は受けないわ!」

「今度は脱走しないように足を切断して飼ってやろう」

ムシバはクククっと笑う。あたしは印を結んだ。

「おかし忍法チョコ分身の術!」

ボンッ!ボンッ!ボンッ!とチョコで作った分身が現れる。チョコとはいえカラフルシュガーで色付けもされていてあたしと見分けがつかない。

「チョコレーとうっ!」

あたしと分身は叫ぶ。手にチョコ製の刀が出現した。

「ほう。おもしろい魔法だ」

ムシバは興味深そうに呟いた。

「えいっ!」

「やあっ!」

「とうっ!」

「たあっ!」

あたしたちはいっせいに斬りかかる。

「ファイヤーボール!」

ムシバが正面に手をかざすと5つの火の玉があたしたちに襲いくる。あたしは避けたけど、残りの3体は直撃を喰らい溶けた。おそろしく高性能な魔法だ。スピードも威力もあるから、オリジナルのあたし以外は対応できなかった。

「風船ガムっ!」

あたしは巨大な風船ガムをプクーッと膨らませる。ムシバは風船ガムに包み込まれた。油断したなバカめ!ガムに触れると弾けてムシバを包み込む。そうなれば嫌でも口に含まざるを得ない。一口でも食べたら寝る。詰みだ。あたしの勝ち確だった。

「バーニングっ!」

「ッ!?」

風船ガムは炎の柱に燃やされてしまった。

ムシバはついに玉座から立ち上がる。ようやく戦う気になったようだ。あたしはごくりと息を呑む。

「おかし忍法か。とてもユニークな魔法だね」

言いながら鼻をクンクンさせる。

「バニラの甘い香りがするな。きみを食べたすぎて頭がくらくらするよ。でも食べないほうが良さそうだ。危険な香りが混じってる。ラベンダーやカモミールだ。リラックス効果や鎮静作用のある薬草を服用しているんじゃないか?一口でも食べると眠ってしまいそうだね」

眼鏡の奥の瞳が細まり弧を描く。なんて鼻のいいやつだ。危険察知してやがる。

「来たれ魔導の導き」

ムシバのそばに魔導書が浮かんで現れた。全力全開だ。

熾天使してんしの眠る神殿より解き放たれし偉大なる双蛇!イグニードっ!」

「!?」

あたしは咄嗟に両手をパン!っと叩いてしゃがみながら地面に両手をついた。

「チョコブロック!」

地面からせりあがってきたチョコレートのぶ厚い壁が凄まじい火炎を防いでくれる。荒れ狂う龍のような炎はチョコブロックをすべて溶かし尽くした。

「冥王の逆鱗に触れし亡者の怨恨!ボルケーノっ!」

ムシバの両手から滝のような火炎が放出される。

火の魔法ばかり使ってくる。こっちの弱点を突いてくるのは当たり前か。あたしの肉体を溶かしてむき出しの魂を確保するつもりだ。おかしドールはすでに作ってあるのかも。あたしは手早く複数の印を結んでみせる。忍術の威力を底上げするルーティンだ。

「チョコカレーっ!」

あたしが口から吹き出したチョコレートは火炎のように広がりボルケーノを受け止めた。火炎と火炎がぶつかり拮抗する。

「あははっ!」

「ぐぬぬっ!」

ムシバは笑う余裕があるけど、あたしにはない。こいつの魔力は本当に底知れない。まさに大魔導士だ。火炎が消え去る。頭がくらくらして目がぐるぐるまわる。

「貧血だ〜」

フラフラになって右手で頭をおさえた。血液の代わりに流れてるチョコレートがもうほとんどない。

「限界のようだね。ボクに勝ちだ。降参したまえ」

「絶対ヤダ」

「強情だね。ボクは早くきみを食べたいんだ。ボディはもう用意してある。あとはきみの薬物で汚染された体を溶かして魂を抜きとって入れるだけなんだよ」

やっぱりおかしドールを用意してやがった。気持ちの悪い男だ。ダッチワイフがわりにもてあそんでいたに違いない。

あたしは指でハートマークの印を結んだあと手を鉤爪の形にして交差させる。

「それはムリよ。あんたは2度とあたしを食べられないわっ!花より団子っ!」

勢いよく交差を解いて指の間に出現したお団子をぶん投げる。

三色団子にみたらし団子、あん団子、きなこ団子だ。

「つまらん真似を・・・我が盾は永久不滅の地獄門なり!ファイヤーシールド!」

ムシバの前面に広大な範囲の炎の盾が展開される。投擲とうてきされたお団子弾は炎の盾に飲まれて燃え尽きる・・・はずだった。お団子弾のいくつかは急激に角度を変えて上方に駆け上がる。残りのお団子弾は側面を回り込む。手裏剣術をマスターしたあたしはお団子に回転をつけていたのだ。炎の盾をかいくぐってムシバに襲いかかる。

炎の壁に阻まれてるからムシバの姿は見えないが、驚愕しているはずだ。お団子が上からも左右から飛んできてびっくり仰天してあんぐり口を開けたところにお団子は飛び込む。炎の盾が消えると口いっぱいにお団子を頬張ったムシバが倒れていた。

「勝った・・・」

薄氷の勝利だった。小さくガッツポーズする。亡くなった美少女たち、ピータ、ユウキたちに捧げる勝利だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ