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城攻め

1年後、あたしは長老の屋敷で忍者の待機ポーズをとった。

「よくぞ厳しい修行に耐えたの。あずきよ、最後の試練じゃ、こやつを殺せ」

長老の合図でサスケが縄で縛った男を連れてくる。

「うちの里を偵察してやがった。生かして返すわけには行かねえ。いままでも全員殺してる。里の平和のためだ」

猿ぐつわが外される。

「許してくれえ!死にたくねぇよ!」

男は必死の形相で命乞いする。あたしの額から甘い汗が流れる。

「どうした?そなたの忍術なら瞬殺であろう」

「・・・」

あたしは目を閉じて歯を食いしばった。

「殺せません。あたしには人を殺す勇気がない」

あたしの言葉を聞いたサスケは男を斬る。真横で断末魔の声が聞こえた。安らかに眠ることを祈る。サスケは男の死体を引きずって行った。

長老はあたしの肩に手を置く。

「ええんじゃ。そなたは優しい子じゃ。人を殺すのは勇気とは言わん。非情じゃ。それはわしらのような本物の忍びに任せておけば良い」

「ですが、あたしはどうしてもムシバに一泡吹かせたいのです」

長老は革袋に入れた薬草を手渡してくれる

「これは里に伝わる薬草じゃ。眠りなそうという。食べたものはみな眠ってしまう。そなたは人形なので効果はない。しかし、これを食べたそなたを食べた者はみな眠るであろう」

さらに懐から巻物を取り出す。

「秘伝の奥義が書かれた巻物じゃ。役立ちそうなものをマスターしてから行くが良い」

「かたじけない」

あたしは1時間ですべての奥義をマスターして巻物を返した。旅立ちの時、みんなが見送ってくれた。送迎会は断った。再び帰ってくるのでその時に歓迎会を開いてくれとお願いした。あたしは深く頭を下げて里を後にした。サスケは港まで同行してくれる。

「ぜったいに勝てよ!」

「もちろんだよ!」

あたしは力強く微笑み返した。侍の格好で船に乗りおかしの国に帰郷した。街の人々は寒そうにしているが、おかしドールのあたしには最適だ。雪がちらついている。あたしは宿をとり忍者装束に着替えて夜を待った。

ベッドの上であぐらをかき印を結ぶポーズで精神統一する。やがて夜の帳が降りた。あたしは宿の二階の窓から身を踊らせる。屋根に上がり屋根から屋根に飛び移りマフラーをなびかせて忍者走りで走る。

忍者の里で修行したのあたしは身体能力がいちじるしく向上していた。

魔力を体のすみずみまで行き渡らせることでパワー、スピード、タフネスをあげるすべを身につけたのだ。

外は雪が積もっていた。雪国で修行したので雪には慣れている。あたしはあっという間に城門にたどり着いた。城壁は高すぎてジャンプではとても越えられない。くないをさして登ってる途中に弓で撃たれる心配もあるし、やはり正面突破だ。

あたしは門番2人に名乗る。

「あたしはおかし忍者あずき!悪の大魔導士ムシバを倒しに来た!道を開けろ!」

門番たちは槍を構えた。

「クセモノめ!串刺しにしてくれる!」

やはりそうくるか。あたしは手を横にしてパンっと叩いた。

「クッキー手裏剣!」

「!?」

手もとに出現した星型のクッキーと正方形の市松模様のクッキーを交差して投げる。しゅるるる!っとクッキーは門番の口の中に入った。

「なんじゃコリャ?」

「うめえな」

門番たちはガリガリとクッキーを噛み砕いて表情を緩める。トロンとした目になるとその場に倒れ伏した。

「ちょろい」

城壁の上からピーッという笛の音が聞こえた。あたしは城門を突破して場内に駆け込んだ。これがおかし忍法だ。あたしは魔力と肉体を構成するおかし成分を混ぜ合わせた特殊忍術が使える。しかも眠り草をたっぷり食べてきたのであたしを一口でも食べると睡魔に襲われておねんねしてしまうのだ。

場内入ると大広間に大量の兵士たちがたむろしていた。

城兵の集合が早すぎる。城壁の上にいた見回り兵のしわざだ。先ほど城門の兵士たちが倒されるのを見て笛で合図を送っていた。

「来たぞ!であえであえ!」

300人ぐらいの兵士たちに取り囲まれた。

「ひんむいて女体盛りにしてやろーぜ!」

「女だからって容赦はしねぇ。血祭りにあげてやんよ!

さすがムシバの選んだ兵士たちだ。獰猛で口が悪い。あたしはパンっと手を合わせて左ひざをつきながら床に両手をついた。

「チョコ沼っ!」

「なにーーっ!」

兵士たちの足元にチョコレートの沼が出現する。大勢の兵士たちがドプンと肩まで浸かる。

「ん?なんじゃこりゃ!チョコレートだ!飲め飲め!飲み干しちまえ!」

沼の正体に気づいた兵士たちは爆笑して沼をすくって飲み始める。ダイブして泳ぎ出すものまで出る始末だ。ひゃっほー!と浮かれていたが、彼らはみな眠り姫のようにいともたやすく眠りに落ちた。城兵はまだまだいる。剣を振りかざしてくる兵士の攻撃をカエル飛びジャンプしてかわしながら左手の人差し指を立て、その指を右手で握った。

「クリームゴーストっ!」

ハロウィンで見かける風貌のお化けが10匹ほど兵士たちに襲いかかる。兵士たちは大慌てで逃げ惑う者や槍や剣でお化けを斬ったり突く者が現れた。ゴーストなので物理攻撃は全部無駄だ。

「ちょこざいな!幻妖な術を使いおって!」

お化けたちは兵士たちに抱きついてべちゃりと顔を覆う。

「ん?これはクリームだ!ははははは!食べれば良いだけではないか!」

ゴーストを食べ始めた兵士たちもみな眠りにつく。

兵士たちは雨後の筍のように湧いて出る。一列に並んだ槍部隊が突進してきたのであたしは素早く手で正方形を作るった。

「キャラメルゴーレムっ!」

キャラメルの魔人が現れて槍部隊を通せんぼする。

「なんだこいつは!突け突け突けーーー!」

キャラメルは硬いので槍が通らない。ゴーレムは兵士の1人を手で握りしめて持ち上げた。兵士はゴーレムの指に噛み付く。

「甘い!?何度でも噛みたくなる味だ!」

兵士が美味しそうにゴーレムの指を食いちぎっているのを見て他の兵士たちもゴーレムに噛み付く。そしてコテンと眠りに落ちていく。

風切り音がしたのであたしは横転した。飛んできた矢が床に突き刺さる。2階に散らばった弓兵部隊があたしを狙っていた。落ち着いて左手を握り、右手でおおう。

「わたがし巨人っ!」

もくもくもくっと白い雲がたちのぼり巨大な巨人を作り上げる。巨人は可愛らしいとぼけた顔をしている。弓兵部隊はあたしの姿を見失った。

「ええい!雲が邪魔で見えん!」

わたがし巨人に矢を打つがまるで無駄だ。1人の弓兵が巨人の伸ばした腕に恐る恐る触れてみる。

「おやっ?こいつはつかめるぞ!」

弓兵はちぎって丸めた白いわたを口に放り込んだ。速攻で寝落ちした。

兵士たちはまだまだ津波のように押し寄せてくる。ひとし指と薬指を立てた右手を同じ形の左手で握り込む。

「どっすんプリンっ!」

巨大なプリンが天井から現れて兵士たちを押しつぶす。下敷きになった兵士たちは食べて穴をあけて脱出を試みるがすぐ寝てしまった。兵士たちはさらに押し寄せてくる。おかわりが多すぎ。手で三角形を作る。

「スライムゼリーっ!」

ゼリーで作られたスライム5匹が兵士たちの顔をふさぐ。兵士たちはゼリーを食べて全員寝てしまった。まだまだ兵士たちはわんさかいる。

「チョコてっぽう!」

これは印が必要ない忍術だ。指先からチョコを丸めた銃弾を敵の口に放り込む。ダダダダダッ!っと連射すればすべて敵兵の口に命中して眠りの世界へと誘った。

あたしは指先をふっと吹いてみせる。

全員倒したなって思ったら追加で兵士たちがいっぱい現れた。援軍だ。あたしは両手を組む印を結んだ。

「あめあられっ!」

天井からあられが降ってくる。あられは、もち米を原料とした小ぶりでパリッとした食感の伝統的な米菓だ。サクサクしてとてもおいしい。兵士たちは降ってきたあられを不思議そうに手に取って食べる。食べたものから順に眠りに落ちていった。

落ちているあられをつい拾って食べて眠る者もいる。

「食べてはいかん!眠ってしまうぞ!」

今さらながら隊長が全員に注意をうながすが、それは無理な注文だった。あたしはバニライスをこの1ヶ月間大量に食べている。バニラの香りは、甘く、温かく、優しく、上品で芳醇な香りが特徴だ。クッキーやココアやチョコレートの匂いに加えてバニラの香りまで足されたらもうおしまいである。

香りの誘惑に耐えられる者はいない。耐える訓練をした者もいない。みんな無意識に口を開けている。香りが脳を刺激して口をあけさせるのだ。

「なぜだ!だめだと思っても食べてしまう!」

隊長は拾ったあられをパクパク食べている。

「足りね〜」

「もっと食いてえ〜」

「しあわせだ〜」

部下たちもパクパク食べて夢の世界に旅立っていく。大勢の敵兵を眠らせたが、それでもまだまだ敵兵は残っている。敵兵に囲まれて追い詰められたあたしは手でキツネの形を作りキスさせた。

「おかしの家っ!」

大広間の中央におかしでできた家が登場すると兵士たちはゾンビのようにおかしの家に群がる。ビスケット製のドアと屋根、柱はチョコレート入りのサクサクロールクッキー、マーブルチョコで外壁に模様をつけて接着はクリームだ。

内装はグミのクッション、金平糖の椅子と机、カラーラムネの床である。

あたしは家の中で座って休む。家がすべて食い尽くされた時、その場に起きている兵士は1人もいなかった。

「全員眠ったわね」

かなり魔力を消費したけどまだまだ余裕がある。あたしの魔力は海のように広いのだ。玉座の間は2階だ。あたしは大階段を駆け上がった。





印は伊賀ポータルさんの第5回「九字法」の巻

野人流忍術さんの「野忍」の忍者修行体験レポート – 九字の印と手裏剣を体得!

を参考にしています。

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