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おかしドール

あたしの名前はあずき。見た目は12才、生まれて15年のおかしドールだ。

黒い髪、黒い瞳、忍者装束に長いマフラーを装備している。

人間だった頃の名前はミア。亜麻色の髪の赤い瞳をした美少女だった。おかしドールとなったいまの体は飴細工あめざいく、血はチョコレート、髪は綿菓子、舌はチューインガム、心臓はビスケット、胸は大福で内臓はソフトクリーム、脳にはあんこが詰まっている。

もともとは人間だったけど、悪い魔導士の手によって殺されてしまい魂をお菓子ドールに入れられてしまったのだ。魔導士の名前はムシバ。銀髪眼鏡の青いマントを羽織った青年である。美形だがお菓子好きの変態だ。お菓子好きが興じてお菓子ドールを作り美少女の魂を入れるという禁忌を犯した。

これは暗黒の大魔導士をやっつけるおかし忍者あずきの復讐の物語である。


3年前。

あたしは小さな村に住む羊飼いの娘ミア。毎日、羊と楽しく遊んでいる。村のみんな友達で幸せな日々を送っていた。幼なじみのピータはあたしのことが好きみたいだけど、あたしはそんなに好きじゃない。優しくていいやつではあるけどイケメンじゃないもの。イタズラ好きだし気品があるともいえない。

あたしは白馬に乗った王子様が好き。

早く迎えに来てくれないかなぁ。あたしは美少女だから風のウワサが王国まで飛んでいって王子様の耳にも入り気になって観に来てくれることを夢見てた。

牧場で羊に取り囲まれて体育座りする。青い空には羊雲が流れていてとっても平和でのどかだ。そういえば最近、いろんな街や村で美少女がさらわれて帰って来ないと聞く。神隠しにあった数は30人。あたしも美少女だからぜったい危ない。王子様が会いに来てくれるのはいいけど、盗賊に襲われるのはごめんだ。

たぶんあたしのために村も警備を固めてくれてる。朝昼晩とあたしんちをパトロールしてくれてるのだ。遠くからあたしの姿を見守っていてくれたりもする。

ピータも仕事がない時はいつもあたしのそばにいてくれる。あたしは大事にされてるのだ。美少女は国の宝だからね。王族や貴族に献上すればお金もいっぱいもらえるし親戚になるから困った時に助けてくれる。

空を見つめて王子様とのラブロマンスを妄想していると背後に気配を感じた。

振り返ると銀髪メガネのマントをまとった青年が立っている。

「ほう。ウワサにたがわぬ美少女だ。気に入った」

青年は微笑みメガネのブリッジを軽く持ち上げた。青い瞳は熱を帯びている。あたしは警戒心を強めた。

「あなたはだれ?見ない顔ね」

「これは失礼ミア。我が名はムシバ。宮廷魔導士だ」

いきなり呼び捨てか。なれなれしい。ムシバはボウアンドスクレープでお辞儀する。これは貴族社会で男性が行っていた伝統的なお辞儀の作法で、相手への敬意を示すために、右足を後ろに引き、右手を体に沿え、軽く体を傾けながら左手を横に水平に差し出すような動作だ。

「あたしに何か御用ですか?」

「ボクのお嫁さんになって欲しい。望むものはなんでも与えるよ。何ひとつ不自由のない生活を約束しよう」

ムシバはニコリと笑う。

「いやです。あなたはタイプじゃありません」

あたしは速攻で断った。

「仕方ない。眠ってもらおう」

ムシバは手を伸ばす。あたしは飛び退しりぞいてムシバと対峙した。

「おーい、ミアー!」

異変を察知したのか遠くにいたはずのピータが駆け寄ってきた。手にはフォーク型の農具を持っている。あたしの前に立ち農具を構えてムシバから守ってくれる。

「おめえだれだ?ミアはオラのもんだ!手を出すんじゃねぇぞ!」

「うす汚い小僧め。死ね!ファイヤ!」

ムシバの手から巨大な炎が発生したピータは炎に包まれる。

「ぐぁああああああ!」

「ピータっ!」

ピータは黒焦げになりその場に倒れふす。死んだ!幼なじみのピータがこんなにあっさり。あたしはショックで腰が抜けた。ピータと遊んだ思い出が脳裏に蘇る。無限に涙があふれた。

「きみがいうことを聞かなければ村のみんなが死ぬ。よく覚えておけ」

ムシバは酷薄な笑みを浮かべる。

「きみの涙と鼻水で服が汚れてはかなわん。ふきたまえ」

ムシバはハンカチを投げよこす。茫然自失のあたしは動けない。

「はやくしないか。今度は親兄弟を殺すぞ」

あたしは涙と鼻水を拭く。

「よし。では眠らせてやろう。スイマ!」

あたしは意識を失う。目が覚めた時はどこか薄暗くて寒い部屋の台の上に寝かされていた。

「ここはどこ?」

「王都の宮廷だよ。この部屋はボクに与えられた私室だ」

「どうやってここまであたしを運んだの?」

「お姫様抱っこで空中散歩さ」

ムシバは肩をすくめる。

杖やほうきなしで空中浮遊の魔法まで使えるなんてさすが宮廷魔導士だ。杖とほうきは呪具と呼ばれ魔力を増幅させて魔力のコントロールを手助けしてくれる。腕利の魔女でも杖やほうきを使って魔力を増幅させたり魔力が暴走しないように心がけていた。

この男は完璧に魔力コントロールができるし魔力を増幅しなくてもいいぐらい魔力を持ってるという自信があるのだ。1人で大国の軍勢を相手にできるという評判は伊達じゃないらしい。

あたしは起きあがろうとするけど起き上がれなかった。

「マヒの呪文をかけてある。悪いけど、きみにはこれから死んでもらう。痛みなく殺してあげるよ」

椅子に腰かけていたムシバは立ち上がり横たわるあたしに手をかざす。

「ヘビ!」

「!?」

体が透明な蛇にギューと縛られる。首も締められる。あたしの意識は遠のいていく。

「た・・・たすけ・・・て」

冷徹な魔導士は表情ひとつ変えていない。まるで実験動物を見るように経過を観察している。命乞いなど毛頭聞き入れるつもりはないのだ。なんて残酷な男だ。血ではなく水が流れてるんだわ。意識は深い暗闇に沈む。

横から甘い香りが漂っていた。




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