第2話 偽られた光、闇の中の真実
黒い光が消えた後、俺はただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
あの瞬間、確かに感じた。剣の奥に眠る、何か……生き物のような悪意。
「なぜだ、俺が握っていたのは聖剣のはずだ、答えろ!」
黒く染まった剣――《ネメシス》に問いかける。
しかし魔剣は黒く輝くのみで何も答えなかった。
夜の風が頬を撫でる。あたりはひどく静かだった。
ゴーン、ゴーン、ゴーンーーー・・・
その時――街の広場の方から、女神教会の鐘の音が鳴り響いた。
「俺が信託を受け神官から聖剣を授かった時も、こんな風に鳴っていたな・・・」
初めて聖剣をもらった「信託の時」を思い返していると、路地裏の奥から紫色の炎が立ち昇った。
その炎はみるみる消え、その中から禍々しい黒衣をまとった
悪魔の姿をした女が現れた。
「初めまして、いいえ、お久しぶりかしら。魔王軍の幹部を務めているシャミアよ。」
「だれだ、お前とは顔を合わせていないはずだが?」
「あら、ごめんなさい。この姿であなたと会うのは初めてだったわね。」
そう言って女が指を鳴らすとみるみると姿が変わり、白いヴェールを頭にかぶった神官の姿になった。
「『選ばれし冒険者よ、この剣は、あなたの勇気とともに輝く光。どうかあなたの行く道に栄光が
あらん事を。』どう、なかなか様になっていたでしょ。」
「まさか・・最初から俺が与えられていたのは聖剣じゃなかったのか!」
「そう。自らを死に至らしめる聖剣の存在を知っていた魔王様は、私を教会に潜入させ、
こっそりと魔剣ネメシスと入れ替えたの。この剣の見た目は聖剣とそっくりなんだけど、
持ち主の人間の強い憎悪の念を送り込まれることで禍々しく変化するのよ。
どう、驚いたかしら。」
そういうと、いたずらっぽくシャミアは笑った。
「ハハハ・・・最初から聖剣なんて持っていなかったんだ・・・
全部、仕組まれていたことだったんだな。」
「この剣を扱うには強い憎悪を持つだけではダメなんだけどね。でも、もう時間切れみたい。
また会いましょう、元『聖剣使い』のリオンさん。」
そう言うと、シャミアは地面に転がっていた木箱に炎を放ち、笑いながら闇の中へと消えていった。
「待て、まだ話は終わっていないぞ!」
女の後を追って路地裏の外に出たが、燃え広がる炎に集った野次馬に邪魔され
完全に姿を見失ってしまった。




