第1話 追放の聖剣使い
『聖剣を扱えなかった俺は、魔剣を握って世界を滅ぼす』
第1話 追放の聖剣使い
俺の名はリオン・アークライト。かつて国王から選ばれた魔王討伐隊の勇者パーティに所属していた、元・聖剣使いだ。
――いや、正確には“元”でさえないのかもしれない。なにせ、聖剣を一度もまともに扱えたことがないのだから。
聖女アリアは冷たい瞳で俺を見下ろしていた。
「リオン、あなたにはもう用はないわ。聖剣に選ばれない者がこのパーティにいる理由はないでしょう?」
隣の勇者アレンは、無言で頷いた。
俺が必死に鍛錬を重ねても、聖剣は一度も光を放たなかった。
それでも仲間だと信じていた。だが、仲間の視線はいつの間にか「足手まといを見る目」に変わっていた。
「……そうか。わかったよ」
俺は無理に笑って、腰の聖剣を抜く。
だがその刃は、いつも通り鈍く、光の一筋も宿らない。
アレンは深くため息をつき、失望したまなざしを向け
「もううんざりだ、お前のわがままには付き合っていられない。
これを持って俺のパーティからとっとと出ていけ。」と言った。
その後、わずかな装備と聖剣とともに、俺はパーティから放り出された。
◆◇◆
三日後。
持っていた所持金も底をつき、誰もいない路地裏で俺は横たわっていた。
手の中には、勇者たちが置き去りにしていった聖剣。
俺を拒み続けた、あの忌々しい剣。
「……なんでだよ。なんで、俺じゃダメなんだよ……!」
拳で地面を殴る。血がにじむ。
その血が、剣の刃にぽたりと落ちた瞬間――。
――ギギ……ギギギギ……。
耳の奥で、不快な金属音が響いた。
剣身が黒く、どす黒く、染まり始める。
『……願いヲ、聞カセロ……』
脳内に直接響く、歪んだ声。
俺は驚きながらも、ゆっくりと顔を上げた。
黒い靄が剣を包み、かつての神々しい輝きは、完全に闇に飲まれていた。
「お前……聖剣、なのか……?」
『否。今ヤ、我ハ――魔剣トナッタ。
主ノ憎悪ニ呼応シ、再誕ス。復讐ヲ望ムカ?』
……復讐。
その言葉が、胸の奥で静かに燃え上がる。
勇者アレン。聖女アリア。あの偽善者ども。
「望むさ。全部、焼き払ってやる。俺を見下した連中も、神の光も……すべてな」
『……契約、成立。
サァ、我ト共ニ、地ニ堕チロ』
黒い光が爆ぜた。
痛みと歓喜が同時に全身を駆け抜ける。
俺の瞳が、紅く輝いた。
――その瞬間、世界が終わりの音を立てて軋み始めた。




