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OVER TAKE ❦ 大隅綾音と魚住隆也 ❦ ともに行こう!  作者: 詩野忍


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第3節 苗きらり雫を抱く―風薫る中で、会社法の設立論を語る【続き1】

光は澄みわたり、青葉を透かしてキャンパスを包み込んでいます。柔らかな風が頬を撫で、若葉の香りが胸を満たし、私と隆也は芝生の上に腰を下ろし、会社法の設立論について語り始めました。会社はどのようにして生まれるのか――発起設立と募集設立の二つの道、登記という法的関門、そして設立直後に待ち構える数々の実務的課題。それらを議論するうちに、芽吹いたばかりの若葉のように、私たち自身の未来への想いもまた膨らんでいきます。

第3節 苗きらり雫を抱く―風薫る中で、会社法の設立論を語る 【続き1】では、 二人で深く議論を積み重ね、発起設立と募集設立の比較、登記の法的性質、実務上の問題点、判例、大隅健一郎氏の学説を織り込みます。

ここにお載せしておりますイラストは、私の言葉の羅列により、A.I.が作成してくれました。

「穀雨って、まるで新しい始まりを告げるみたいね」

「会社の設立も同じだよ、法の世界に一つの“人格”が生まれる瞬間だから」

「でも、その始まりの道は二つに分かれているわ、発起設立と募集設立」

「発起設立は、発起人がすべての株式を引き受けるシンプルな道、統制が効いて速いけれど、発起人の誠実さが問われる」

「一方の募集設立は、多くの株主を募って資本を集める道ね、時間も手続も増えるけれど、公正性と透明性が高まる」

「つまりスピードか、公正か、どちらを優先するかの選択なんだ」

「でも、その選択をどちらにせよ、最後に立ちはだかるのは登記よね」

「そう、設立登記は会社がこの世に生まれる要件であり、同時に公示でもある」

「じゃあ、登記を済ませるまでは会社は存在しない……まるで胎児のように法の外で動く存在なのね」

「その通り、だから設立前の行為は誰が負担するかが問題になる、設立後に承継させる制度はあるけれど、責任の線引きは常に厳格だ」

「登記は成立と公示の二つの顔を持つけれど、公信力は弱いわね、第三者は登記に載っていることを知らないとは言えないけれど、誤りがあれば全面的に守られるとは限らない」

「そう、ネガティブ・パブリシティとみなし知得、そのバランスで実務が動いているんだ」

「実務といえば、払込みの“見せ金”は典型的な落とし穴ね、一瞬だけ資金を入れて証明書を得るなんて、信頼を踏みにじる行為だわ」

「過大評価の現物出資も同じだよ、検査役や専門家評価を入れても、最後は“説明可能性”が審査される」

「そして設立の時間管理……許認可と登記、商号と所在地、銀行口座、どれか一つがずれれば雪崩のように遅れる」

「だから実務は並行管理と代替策を仕込むんだ、登記は一度きりの“産声”だから」

「判例も面白いわね、最高裁は設立の瑕疵が軽微なら会社不存在までは認めない、でも設立無効の訴えは期間と理由を厳格に限定する」

「つまり、取引の安全を優先して“消す”より“責任を問う”で処理するのが裁判所の姿勢なんだ」

「大隅健一郎先生は“自由・公示・責任”の三層モデルで設立を捉えていたわね」

「そう、“発起人の自由な合意”が第一層、“登記による外部公示”が第二層、“瑕疵に対する事後責任”が第三層」

「自由だけでは足りず、秩序だけでは窒息する、両方を繋げるのが責任……その構造が、会社の誕生を支えているのね」

「もし君が発起人なら、どちらを選ぶ?」

「資本を自分たちで抱えて走るなら発起設立、でも広い信頼を得たいなら募集設立を選ぶわ」

「じゃあ登記の意味は?」

「“私たちはここに在る”という宣言、その中に資本の実在性、価額の相当性、手続の誠実さ、そして責任を負う覚悟を封じ込める」

「やっぱり君は制度の奥に“誠実さ”を見ている」

「それは……あなたと議論しているからよ、制度に人の手触りが宿るの」


 風が頬を撫で、若葉の香りが二人の間に流れた。制度の冷たさを超えて、確かな温もりが芽生え始めていた。

 《次回へ》

挿絵(By みてみん)

ようこそお越し下さいました。

ありがとうございます。

いかがでした? 

風は新緑を揺らし、陽射しは強さを増していきます。

立夏の空の下、私たちの議論は制度と人の誠実さが交錯する場所へと広がってゆきました。

立夏の光と風の中で語られた設立論は、会社の誕生にとどまらず、私たち自身の未来を形づくる比喩でもありました。株主の意思と国家の承認、その調和が会社のいしずえとなるように、二人の夢もまた、対話の中で少しずつ形を持ちはじめます。

次回は、第3節 苗きらり雫を抱く―風薫る中で、会社法の設立論を語る【続き2】では、判例分析をさらに深掘りし、大隅健一郎氏の学説を引用しながら、制度の冷徹さと人の誠実さの交錯を描き、未来への希望で結びます。




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