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OVER TAKE ❦ 大隅綾音と魚住隆也 ❦ ともに行こう!  作者: 詩野忍


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83/123

第53節 水泉動―鑑定人の倫理と責任《手稿資料集:水泉の声(Testimonium Fontis)》

1. 表紙

2. 手稿一 「倫理四層構造 ― Structura Ethica Forensis」

3. 手稿二 「観察記録(綾音筆)」

4. 手稿三 「倫理判断の流れ ― Flumen Ethicae」

5. 手稿四 「倫理判断の四原則 ― Quattuor Fontes Responsabilitatis」

6. 手稿五 「隆也注解 ― 「迷う勇気こそ倫理」」

7. 手稿六 「倫理事例考察 ― Case Reflectio」

8. 手稿七 「詩篇:水泉の声 ― Testimonium Fontis」

9. 手稿八 「図解:倫理構造相関図 ― Nexus Conscientiae」

10. 結語 見えぬところを流れるもの

 《手稿資料集:水泉の声(Testimonium Fontis)》


 大隅綾音・魚住隆也 共著観察録


 表紙


 ───────────────────────────────

 司法医学図説・実務編Ⅰ

 第53節 水泉動すいせんうごく

 鑑定人の倫理と責任


 綾音観察記録・隆也注釈附

 於:大学医学部 法医学倫理研究室

 日:凍土下、泉の音微かに聞こゆ


 ───────────────────────────────

 印章風題字:『Testimonium Fontis ― 水泉之聲』

 ───────────────────────────────


 手稿一 倫理四層構造 ― Structura Ethica Forensis


 図Ⅰ 鑑定人の倫理的四層構造


 ────────────────────────────────────────────

 Ⅰ 科学的誠実(Veritas Scientiae) │ 観察・測定・記録の正確性

 Ⅱ 法的責任(Officium Juris)   │ 証言の中立性・論理的一貫性

 Ⅲ 人間的尊厳(Dignitas Humana) │ 被害者・遺族への共感と節度

 Ⅳ 沈黙の倫理(Ethica Silentii) │ 語らぬ勇気・情報節度・配慮

 ────────────────────────────────────────────

 註:倫理とは、“科学の中に流れる水脈”であり、

 見えぬが確かに生命を潤す。


 手稿二 観察記録(綾音筆)


 Case No. 53-C

 主題:死亡時期鑑定における倫理的考察


 状況:

 依頼側と被告側で死後経過時間に相違。

 検体:肝組織・筋肉線維・眼球硝子体


 所見:

 ・硝子体K値:10.8

 ・筋肉酵素活性:中度低下(死後約8時間)

 ・皮膚乾燥:開始期


 判断:

 死後8〜10時間と推定。

 ただし搬送経路・気温差により変動要因あり。


 結語:

 確定断定を避け、「範囲」で語ることが倫理的誠実である。

 科学の精密よりも、誠実の温度を選ぶ。

 ― 綾音(記)


手稿三 倫理判断の流れ ― Flumen Ethicae


 模式構造:


 観察(Observation)

 ↓

 自問(Reflection)

 ↓

 判断(Judicium)

 ↓

 表現(Expression)


 註:倫理とは、他者に示すものではなく、自身の中で問う過程。

 水の流れのように、見えぬままに動き続ける。


手稿四 倫理判断の四原則 ― Quattuor Fontes Responsabilitatis


 Ⅰ.誠実(Sinceritas) :誤りを恐れず、疑いを明示する

 Ⅱ.節度(Modestia)  :語る量を制御し、沈黙をも表現とする

 Ⅲ.中立(Equitas)   :誰の側にも立たず、事実の側に立つ

 Ⅳ.思慮(Prudentia) :判断前に“迷う時間”を持つ勇気


 註:迷うことは罪ではなく、倫理の証である。


手稿五 隆也注解 ― 「迷う勇気こそ倫理」


 > 「綾音、倫理は、

 “正しさ”を選ぶことてはなく、

 “迷いながらも止まらない”こと。


水のように、

 岩を避けながら、それでも流れる。

 それが、倫理の本当の姿」

 ― 隆也(注解)


手稿六 倫理事例考察 ― Case Reflectio


 事例Ⅰ:依頼者との距離

 → 感情的依頼に引かれず、法的目的を優先する。


 事例Ⅱ:データの欠落

 → 曖昧を認める勇気が信頼を生む。修正を恐れず報告。


 事例Ⅲ:報道機関からの照会

 → 科学者の発言は社会的影響を伴う。

 沈黙もまた、発言の一形態として選択する。


手稿七 詩篇:水泉の声 ― Testimonium Fontis


 「氷の下で、

 水は音もなく動いている。


誰も知らないところで、

 良心の泉が流れを変えている。


科学が冷たくても、

 言葉が乾いていても、

 その底にある流れだけは、

 決して止まらない。


それが、倫理の水音だ。」

 ― 綾音


「科学が真実を示すなら、

 倫理はその温度を決める。」

 ― 隆也


手稿八 図解:倫理構造相関図 ― Nexus Conscientiae


 模式図:


 科学的誠実(Veritas Scientiae)

 ↑

 法的責任(Officium Juris)

 ↓

 人間的尊厳(Dignitas Humana)

 ↑

 沈黙の倫理(Ethica Silentii)


 中心概念:Conscientia(良心)


 註:良心とは、科学・法・人間・沈黙の交わる泉である。


結語 見えぬところを流れるもの


 倫理は、法の裏に隠れた“もう一つの水脈”。

 そこを流れるのは、科学者の心の声である。


 正確であるよりも、誠実であること。

 沈黙の裏に、信頼が宿ること。


 水泉動――

 見えぬ流れを感じ取る者だけが、

 真実の源に触れる。


 ― 大隅 綾音(記)


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第54節 雉始雊― 傷は時を語る 、この節は、創の時間推定と治癒過程鑑定』の、「炎症反応」「血液乾燥」「組織修復」という生体の“時間の記憶”を軸に、「創がどのように時を記録するか」――すなわち、

**司法医学的時間鑑定(Chronologia Forensis)**の核心を描きます。

節題「雉始雊」は、冬が明けて雄の雉が初めて鳴く節気。

静寂の中で初めて発せられる声――それは、

創が“時間を語り始める瞬間”の象徴です。


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