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OVER TAKE ❦ 大隅綾音と魚住隆也 ❦ ともに行こう!  作者: 詩野忍


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77/123

第50節 麋角解―鑑定書の構成と書き方《手稿資料集:鹿角の書(Testimonium Cornuum)》

1. 表紙

2. 手稿一 「鑑定書の構造表 ― Structura Testimonii Forensis」

3. 手稿二 「記述法三原則 ― Lex Scriptoris Forensis」

4. 手稿三 「鑑定書文体三層モデル ― Triplex Vox Forensis」

5. 手稿四 「観察記録(綾音筆)」

6. 手稿五 「図解:鑑定書構成模式図 ― Diagramma Scripturae Forensis」

7. 手稿六 「法的表現指針 ― De Stylo Forensi」

8. 手稿七 「隆也注解 ― 「言葉は標本であり、責任である」」

9. 手稿八 「詩篇:鹿角の書 ― Testimonium Cornuum」

10. 結語 言葉の角を削ぐということ

 《手稿資料集:鹿角の書(Testimonium Cornuum)》


 ― 大隅綾音・魚住隆也 共著観察録 ―


 表紙


 ───────────────────────────────

 司法医学図説・実務編Ⅰ

 第50節 麋角解びかくとく

 鑑定書の構成と書き方


 綾音観察記録・隆也注釈附

 於:大学医学部 法医学研究室

 日:冬至近し・静寂・気温0.9℃


 ───────────────────────────────

 印章風題字:『Testimonium Cornuum ― 鹿角之書』

 ───────────────────────────────


 手稿一 鑑定書の構造表 ― Structura Testimonii Forensis


 図Ⅰ 鑑定書の基本構造と文体機能


 ────────────────────────────────────────────

 Ⅰ.表紙・標題    │ 件名・依頼機関・作成日

 Ⅱ.総括       │ 目的・依頼事項・法的背景

 Ⅲ.観察記録     │ 方法・条件・所見・測定値

 Ⅳ.分析・考察    │ 結果の論理的展開・解釈根拠

 Ⅴ.結論       │ 鑑定意見・法的推論

 Ⅵ.付録       │ 写真・図表・署名・参考資料

 ────────────────────────────────────────────

 註:鑑定書は“科学の観察”と“法の言語”を結ぶ骨格文書である。


 手稿二 記述法三原則 ― Lex Scriptoris Forensis


 明瞭性(Clarity) :主観を排し、観察結果を定量的に描写する

 中立性(Neutrality):断定を避け、論理を通して結論へ導く

 誠実性(Integrity) :事実の尊厳を損なわず、倫理を保つ


 註:文章とは“顕微鏡の焦点”。

 曇れば、真実の輪郭が失われる。


 手稿三 鑑定書文体三層モデル ― Triplex Vox Forensis


 図Ⅱ 鑑定文の三層構造


 ────────────────────────────────────────────

 第Ⅰ層 観察層(Observation) │ 科学的記述・定量化

 第Ⅱ層 分析層(Analysis)   │ 理論的整合・比較検証

 第Ⅲ層 結論層(Conclusion)  │ 法的叙述・判断理由

 ────────────────────────────────────────────

 註:観察は“見る”、分析は“考える”、結論は“語る”。

 三層の流れが断絶しない文章が、最も雄弁である。


 手稿四 観察記録(綾音筆)


 観察No.50-2

 試料:左頸部刺創(長径32mm・深度22mm)

 観察環境:照度900lx/温度19℃


 所見:

 ・創縁:鋭利・整形

 ・方向:上外方→下内方(34°)

 ・出血:生前反応陽性・凝固良好

 ・血液試料pH:7.28


 分析:

 単回鋭器による刺撃。

 角度と深度から右利き加害者の正面攻撃を推定。


 結論:

 致死因は急性出血性ショック。

 創形態にためらい創所見なし。

 ― 綾音(記)


 手稿五 図解:鑑定書構成模式図 ― Diagramma Scripturae Forensis


 模式構造:


 ┌────────────────────────────┐

 │Ⅰ 標題・総括                │

 │Ⅱ 観察記録(事実の記述)          │

 │Ⅲ 分析・考察(事実の思考)         │

 │Ⅳ 結論・署名(事実の責任)        │

 └────────────────────────────┘


 註:科学的事実は「構造」によって信頼され、

 法的言葉は「均衡」によって理解される。


 手稿六 法的表現指針 ― De Stylo Forensi


 語彙選択 :比喩を避け、定義語を優先する

 時制運用 :現在完了・過去完了を区別し因果を明示する

 句読構造 :一文は50字以内を原則、曖昧表現を避ける

 視点統一 :観察者一人称/考察は論理的一人称複数


 註:文体は論文ではなく“証言”。

 冷静でありながら、誠実でなければならない。


 手稿七 隆也注解 ― 「言葉は標本であり、責任である」


「綾音、鑑定書は“見たこと”じゃなく、“理解させること”が目的。

 科学は精密でも、言葉が曖昧なら、それは証拠にならない。


 言葉を使うということは、

 事実を選び取る行為なんだ。

 だからこそ、誠実でなければならない」

 ― 隆也(注解)


 手稿八 詩篇:鹿角の書 ― Testimonium Cornuum


  「鹿は角を落とす。

 それは、過去を捨てることではなく、

 真実を磨くための儀式。


 鑑定書もまた、

 言葉の角を削ぎ、

 科学の骨を露わにする。


  冬の静けさの中、

 白紙の上で真実が息をする。

 言葉は生まれ変わり、

 法の森に立ち上がる」

 ― 綾音


「言葉は骨、骨は記憶。

 その一本一本に、

 人の命が刻まれている。」

 ― 隆也


 結語 言葉の角を削ぐということ


 鑑定書を書くとは、

 科学と法のあいだで、言葉の角を削ること。


 角を落とすのは、弱さではなく、

 より強い形をつくるための知性の再生。


 鹿が新しい角を生やすように、

 司法の言葉もまた、春に向かって育つ。


 ― 大隅 綾音(記)


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 第51節 雪下出麦― 創の証拠価値を高めるポイント、です。


第51節 雪下出麦― 創の証拠価値を高めるポイント、 を

この節は、冬の大地の下から麦が芽吹く季節「雪下出麦」を象徴に、

“冷たき創に宿る証拠の生命力”を主題とします。

科学・法・倫理の三位を貫く鑑定思想――

すなわち「創を“語らせる”ために、どう扱い、どう伝えるか」。

司法医学者・大隅綾音と法曹家・魚住隆也の対話により、

**「創の証拠価値を高める技術と心」**を叙情的法学調で描きます。


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