第2節 よし芽吹いて風くすぐ 穀雨 ―やさしき雨音と取締役会の権限【続き3】
第2節 よし芽吹いて風くすぐ 穀雨 ―やさしき雨音と取締役会の権限【続き3】を比較法(日米独)を交え、二人の対話をさらに白熱へと導き、制度の限界と人間的誠実さの必要性を強調します。
ここにお載せしておりますイラストは、私の言葉の羅列により、A.I.が作成してくれました。
外はまだ雨が降り続いていた。春の雨脚は少し強まり、窓ガラスに打ちつける音が、議論の熱を後押しするように響いていた。
「ねえ隆也、取締役会の権限って万能なのかしら」
私はノートを閉じ、彼を見つめた。
「条文や判例を追うと、確かに専権性は強調されている。でも……万能の権限なんて存在するの?」
隆也は深く息を吐き、静かに口を開いた。
「君の疑問は鋭い。実は、そこを揺さぶったのがライブドア事件だ。堀江社長の強引な経営と虚偽の情報開示に対して、裁判所は“内部統制の構築義務”を怠った取締役の責任を厳しく問うた。つまり、取締役会の権限には“内部統制を整える義務”という限界があると明言されたんだ」
私は大きく頷き、胸の奥が熱くなるのを感じた。
「権限が強いからこそ、制御の仕組みを自ら整えなければならない……。大隅健一郎先生も“取締役会中心主義は、内部統制によって初めて正当化される”と書いていたわね」
隆也は視線を窓の外に向け、雨粒を追うように続けた。
「日本はまだ模索段階にあるけど、アメリカではSOX法(サーベンス=オクスリー法)が経営者に強烈な内部統制責任を課している。CEOやCFOが自ら財務報告の正確性に署名する。ドイツでは逆に監査役会に労働者代表を加え、制度的に多元的な監視を仕組み込んでいる」
私は静かに目を閉じ、雨音に耳を澄ませた。
「日米独、それぞれの制度は違うけれど、共通しているのは“誰かが必ず責任を負う”ということね。結局、制度の奥にあるのは“人の誠実さ”だわ」
隆也は少し笑い、真剣な眼差しをこちらに向けた。
「そうだね。条文や判例は道標だけど、結局は人の意思が会社を導く。……君と議論していると、そのことを強く感じるよ」
私の胸に温かいものが広がる。
「私もよ。制度の冷たさのなかに、希望の温もりを見つけられるのは……あなたと話しているときなの」
雨音がやさしく重なり合い、私たちの言葉を包み込んでいった。
穀雨――春を潤す雨は、制度と人間の交錯を映し出し、私たちの心に小さな芽を育てていた。
《次回へ》
ようこそお越し下さいました。
ありがとうございます。
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春雨に包まれた対話は、取締役会の権限を条文・判例・学説・国際比較の視点から深く掘り下げ、制度の強さと限界を浮かび上がらせました。最終的に見えてきたのは、条文だけでは支えきれない“人の誠実さ”こそが会社を動かすという真理です。
次回は、第3節 苗きらり雫を抱く立夏―風薫る中で、会社法の設立論を語る では、初夏の薫風を背景に、会社設立論をめぐる熱い応酬が展開されます。




