表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
OVER TAKE ❦ 大隅綾音と魚住隆也 ❦ ともに行こう!  作者: 詩野忍


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/63

第1節 虹はじめて頬染む清明 ―桜舞う廊下で、株主代表訴訟をめぐる邂逅【続き2】

第1節 虹はじめて頬染む清明 ―桜舞う廊下で、株主代表訴訟をめぐる邂逅【続き2】では、具体的判例、最判平成21年、取締役責任訴訟関連や海外制度比較 を学術的に二人の議論に厚みを増します。

ここにお載せしておりますイラストは、私の言葉の羅列により、A.I.が作成してくれました。


 廊下の窓から差し込む春の光は、桜の花びらを透かし、床にやさしい影を落としていた。

 互いに抱えていた資料を拾い終えた私たちは、もう授業の教室を探すことなど忘れて、議論の渦の中に立っていた。


「株主代表訴訟は“会社のために会社を訴える”という逆説的な制度よね」

 私は少し笑みを浮かべながら語り出した。

「でも、会社内部の権限分配を超えて、株主が“最後の砦”になれる。これはまさに民主的統制の実現だわ」


 隆也は小さくうなずきつつも、真剣な口調で応じた。

「確かに理念的には美しい。けれどアメリカを見れば現実の厳しさが分かる。米国デラウェア州ではデリバティブ・スーツが氾濫し、経営者は常に訴訟リスクに晒されている。だから“ビジネス・ジャッジメント・ルール”が強調され、経営判断に広い裁量が認められるようになった」


「ええ、でもその結果、米国では株主の声が形骸化しているとも批判されているのよ」

 私は即座に言い返した。

「裁量の名のもとに経営者が守られすぎて、少数株主の権利が軽視される傾向もある。だからこそ、日本は“請求前置”や“適格株主要件”を置いてバランスをとったのよね」


 隆也は興味深そうに目を細めた。

「じゃあヨーロッパはどうだろう?ドイツやフランスでは、株主代表訴訟はあまり普及していない。ドイツは監査役会が強力に経営を監督し、労働者代表まで加わる“二層構造”をとる。つまり、代表訴訟の必要性自体が制度設計によって抑えられている」


 私は資料に目を落としながら深く頷いた。

「そうね。つまり、株主代表訴訟が重視されるかどうかは“誰が経営を監視するか”という問いの裏返し。アメリカでは株主が直接、ドイツでは監査役会が、そして日本では……株主代表訴訟と監査役制度の両方を中途半端に抱え込んでいるのかもしれないわ」

挿絵(By みてみん)

 隆也は少し笑みを浮かべて付け加えた。

「近年の日本の実務を見ても、その曖昧さが露呈している。たとえばオリンパス事件やカネボウ粉飾事件。内部監査が機能せず、結局は株主やメディアの圧力で真相が明るみに出た。制度的監視が不十分だからこそ、株主代表訴訟の意義が再び問い直されているんだ」


 私は胸の奥に熱を覚え、声を強めた。

「だから私は信じたいの。株主代表訴訟は“最後の選択肢”であると同時に、存在そのものが取締役に抑止効果を与える。……桜が散る姿が次の芽吹きを準備しているように、この制度もまた、企業統治を次の段階へと育てる種なんだわ」


 隆也はしばらく黙り、そしてやさしく笑んだ。

「君は“希望”として制度を捉えているんだな。僕はまだ現実主義に偏っている。でも……その違いこそが議論を面白くしているんだろう」


 春風が廊下を抜け、二人の間に桜の花びらを運んできた。

 清明の光に照らされた出会いは、株主代表訴訟という重いテーマを抱えながらも、互いの心に確かな予感を芽生えさせていた。

 《次回へ》

清明の光に包まれた邂逅は、株主代表訴訟という制度をめぐって、米国の裁量強化、欧州の監査役会制度、日本の曖昧な両立といった国際比較を交えた濃密な議論となりました。理想と現実、制度と人間、その交錯が二人を結びつけていく。

次回は、第2節 よし芽吹いて風くすぐ 穀雨―やさしき雨音と取締役会の権限 では、春の雨音を背景に、取締役会の権限と株主の声が織り成す新たな応酬が描かれます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ