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異世界転生したのに無双できない  作者: 星野 夜月
第二章 あの華が咲く、秋に
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第二章4背後から迫る

案外あんなふうにお人好しの冒険者もいるみたいだ。

と、今までが今までだから思った。

そして、

「あの時が特殊だったのかなー」

と結論づけた。

というより、それは願望であった。

昔のラギ、ニースのような人間が珍しいのだろう。


透自身、なるべく同業者………というよりはなるべくたくさんの人達とはいい関係を築きたいと思っているのである。

だが、今までの経験からそれがあまりできなくなってしまっている。

それゆえにだろうか、同じ同郷者である星華ともあまり深く関わろうとしなかった。

裏切られるのが怖いからである。

だがその潜在意識を透自身は自覚していない。

知らない人との話し方がよそよそしすぎるのもそれが原因である。


とにもかくにも、はやく砂嵐が止んでくれないかなー?

今も第五階層では砂嵐が勢いを失うことなく、吹き荒れている。

だんだんイラついてきて、もういっそのこと砂嵐の中に入ってしまいたいくらいである。

今のところ、俺の冒険の成果はサボテンによって棘の刺さった跡を体に刻みつけただけなのである。

流石にこのまま帰るのは支配者(マスター)に申し訳ないので、モンスターだろうがなんだろうが少なくとも一つは砂水晶石(サンドクリスタル)を持ち帰りたいのである。

少なくとも一つとはいったものの大いにこしたことはないので時間はあるだけいいのである。

なのに、この砂嵐はこちらの気持ちも知らずに悠々と(そう表現するには風の勢いが強すぎるが)吹き続けている。

いまだに止む気配がないその自然現象に多少イラついてしまうのはどうしようもないのではないだろうか?

そうこうしていても砂嵐は収まらない。

だが、少しずつ勢いがおさまってきたような気がしなくもない。

あと少しだろうか?


そう思ってからだいたい1時間程度経っただろうか?

ついに、砂嵐が止んだ。

先程まで砂嵐が吹いていた第五階層は砂嵐が吹いたと思わせるような影響をチリひとつ残さず消していて、冒険者を歓迎していた。

そしてもちろん俺はすぐに第五階層内に再度入る。

そして速攻でサボテン以外のモンスターを探す。

道中サボテンがあったが戦闘するのが面倒なので避けて通る。

そうしていてもいまだにサボテン以外のモンスターは見つかる気配がない。

普通に体力切れを起こしてきたので一度休憩を取ることにした。

「はあ………俺の予想が間違ってたのかな?」

そう溢してしまうほどに、全くと言っていいほどモンスターが見つからなかった。

そもそも砂水晶石(サンドクリスタル)自体本当にこの階層にあるのだろか。

鉱石系のものを今のところ見ないのだが。

どうしたものだろうか?

実際、透はこの階層をくまなく探していた。

流石にまだ階層主がいる付近にはいっていない。

階層主が俺の望む鉱石を落とすとは思えない。

階層主がドロップアイテムを落としたことが今のところないからである。

もし、今回の階層主が落としていたとしても支配者(マスター)がかなり出回っているよと言っていた。

もし階層主のドロップアイテムなら、あまり流通しないだろうし。

考えられる可能性は、何か特殊な条件を満たすことくらいだと思うのだが。

それもおそらく今の俺では考えれないようなものなんだろうなー。

そう思いながら俺のここで休憩し続けていた。

すると、何やらモソモソと砂が動いていた。

「なんだ?」

と言いつつ俺は警戒体制に入る。

混沌の核内で何か異常なことが起きる時はいつも確実に俺のことを命の危機に晒す。

ゆえに、危機感を覚えるのは当たり前なのである。

そして、その動く砂は少しずつ盛り上がっていって、徐々に姿をあらわしていた。

まず一番最初に出てきたのはなんだろうか?

甲殻?のようなものだろうか。

なんとなく今から出てくるやつが何かを察すことができた気がする。

だが、最後までしっかりみよう。

次に出てきたのは針。

だがそれは止まっているのではなく、動いていた。

となると、生き物。

そして、それは姿をあらわした。

カサカサと動く6本の足。

毒を持っていそうな一つの尾のような針。

そして、何より特徴的なのはその砂粒のような小さな破片。

それは水晶のような輝きを纏っていた。

破片というよは体内にある一つの塊が、身体の中から隠しきれず溢れ出たような光り方だった。

その特徴をまとめるのであれば、ちょっと光っているサソリであった。

そして、その輝きを見て透は確信する。

「こいつだァァァァァァァァ!」


きたー!

こいつのこの水晶のような輝き、これはおそらく砂水晶石(サンドクリスタル)

というかこれが違ったらもう意味がわからない。

出現理由がまったくといっていいほどわからないが。

出てきてくれたのなら好都合である。

もちろんこいつは初見なのでスキルは使える。

サボテンがサボテンだったからこいつもおそらくかなり強い。

さらに、今までサソリはあまり見ないのでおそらくどちらかというとレアなのだろう。

こういうふうにレアなモンスターはだいたい強いと相場で決まっている。

とにかく警戒しなければいけないのはあの尾のような針。

あれは毒を持っているだろうからマジで危ない。

逆にサソリの体を見ているとそれ以外に危険なところは見つからない。

ちなみに、サソリはかなり大きい。

なんなら俺より少し大きいだろうか。

おかげで良くも悪くも棘を防ぎやすいだろう。

そして、サソリと俺の間に緊張が走る。

そして、それが限界まで張り詰めた瞬間サソリの足が動いた。

はっや!

結構早い。

その結構大きめな6本の足がバカみたいな速度でカサカサ動き、距離を詰めてきた。

はっきり言って俺の想定を大きく超えた速度である。

だってあんなにでかいのに今までの中で第二階層階層主を除けば最速だろう。

そしてサソリはその尾の針をこちらに突き刺しにきた。

もちろんそれを甘んじて受け入れるわけもない。

「ハッ!」

もちろん、サソリと遭遇した時点でスキルは全て使っている。

だが、火素作成(ファイアワークス)を剣に付与(エンチャント)はまだ発動していない。

理由は単純でmpの消費がデカすぎるからである。

もちろん俺は手に持つ両手剣でその針を受け止める。

威力は今までのモンスターの中でもかなり強い方だが、今の俺なら受け止めることができた。

お互いの力は拮抗しておりお互い引くことはなかった。

だが、サソリが少し勢いを弱めた。

俺自身このままだと千日手になってしまい俺自身状況の膠着は望むところではない。

ゆえに俺もサソリと同調するように少しずつ剣に込める力を弱めて互いに数歩後ろに下がり距離を取る。

この流れが5度ほど続いただろうか。

すると、サソリの針の部分が少し変容したような気がした。

そして、その針から()()が放出された。

俺は反射でそれを避けようとするが、それは一点に放出されたものではなく広範囲に放出されていたため全てを回避することはできなかった。

放出されたそれは俺の右半身、正確に言えば右腕にダイレクトにかかっていた。

そして―――――

「ァァァァァァウァァァぇァァァァァァァァァあ!」

そこからほとばしる言い表せることのできないような、そんな激痛よりも痛い痛みが俺の脳内で駆け巡っていた。

痛い、いたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛いいたい痛い。

いやだいやだいやだ!

これなら、もうしんだほうがましだ。

このいたみからすくわれるならもうそれでいい。

もう、彼の思考はまともではない。

目は異常なほど充血しており、目玉が飛び出てしまいそうなほど見開かれていた。

今、彼の思考を支配しているのは激痛とそれから逃げ延びるための甘い()

それと―――。


とにかく、このいたみがじごくがおわってくれ。

どうすればいい?

どうしたらいい?

どう、すれば、これ、おわる?

ます、たー、せいかさ、ん、れぐ、ぶき、やのおっさん。

な………で………ぃ………す………さ………ん。

なでぃすさん?

そうだ!

そうだった!

あれがあれば、このいたみからも救われる!

ああ、ナディスさん。

ほんとうにありがとう。

透はまだ毒を浴びていない左腕で剣を握り、痛みにほうけていた透に針を突き刺そうと接近していたサソリの攻撃をどうにかして受け止める。

はっきり言わなくても透のメンタルはすでに限界である。

視界だってまだはっきりとしていない。

ぼんやりと自分に迫ってくるその針を知覚していた。

とにかく、今は時間が必要だ。

そして、俺は

「うおおおおおお!」

と、気合いで激痛に耐えつつも剣を振る。

わからない、正直なところほんとに感覚で剣を振っている。

透はそのボヤけた視界を信じて剣を振った。

普通ならば、その剣が針に触れるわけもなく俺に突き刺さるはずであった。

だが俺にはスキルがあった。

《ディフェンスレートアップ》が。

その確率が、防御ができる確率があったからこそ。

俺の持つ剣は、その針に触れてそれを弾くに至った。

そして、サソリと俺との間にはいくらあの足の速さがあっても一瞬では距離を詰めれないほどの距離があった。

そして、俺は爆速で解毒ポーションを取り、飲んだ。

その結果俺の脳内で溢れていた痛みは少しずつ引いていった。

思考がクリアになっていた。

だが、視界だけはまだはっきりとしない。

だが少しずつ見えるようになってきた。

まず、俺は自分の右腕を確認する。

どうやらポーションの効果なのかなんなのか、いつも通りなんの変哲もない普通の右腕だった。

だが、右腕にあるはずである防具も服も散っていた。

そしておそらくその残骸は()()だろう。

そう言って俺は目の前にある何かが無理矢理溶かされたようなそんなものが、防具や服の成れの果てのようなものがそこにはあった。

その残骸には何か赤くドス黒いものがあった。

まさか、まさかまさかまさか。

「俺の………血?」

流石にドン引きである。

とにかくあの毒は多分次喰らったら死ぬ。

間違いなく。

それは先ほどの思い出したかもないあの痛みが証明していた。

だが恐れているばかりではどうやってもこいつを倒すことはできない。

どうする、どうするどうする。

そして、もう一度サソリの針に異変が起きた。

その瞬間俺は走り出していた。

もうあれを喰らうわけにはいかない。

だが多分、このままだとまた一部、あの毒に触れてしまう。

そうなればしんでしまう。

どうす―――ることもできる。

賭けだ。

失敗すればしんでしまうかもしれない。

でも、それをしなかったら確実に死ぬ。

だが、それをしたら死なないかもしれない。

それだけで充分実行する理由には足りる。

俺は気合いで両手剣を片手で持つ。

そして、あの針から毒が射出されたような気がした。

その瞬間俺は横に飛びながらその剣を前に前に突き出した(刺突した)

 

幾星 透の武器スキル《会心刺突》。

これは威力、精度を上げるのがメインの効果である。

だが、そのほかにも攻撃時衝撃波を生むという効果も持っていた。

それなら、その衝撃波で毒の液体すらも弾き返せたら?

それが彼の予測、仮定である。

その結果は―――。


そしてその瞬間、俺の眼前に迫って来ていた毒の液体は、その衝撃波によって毒は弾き返された。

あー、死ぬかと思った。

マジで。

けどこれでできる。

これなら、サボテンとか雪玉みたいに少しずつ接近できる。

多分、毒が射出されたとしてもこのスキルの効果なら弾ける。

だから、俺は走り始める。

そのサソリ()に向かって。


もう、怖さはなかった。

だから、そいつに向かって正面から突っ込めている。

サソリは迫り来る俺に脅威を感じたのかもう一度針に異変を起こし、毒を射出した。

もちろんそれは俺の予想通りであり、すぐに

「ハアッ!」

その剣から出てくる衝撃波により毒は弾き返された。

俺は無防備になったサソリに向かって

「さっきは随分とやってくれたなサソリ!」

俺は全てのスキルを総動員して、サソリを倒そうとした。

だが、さすがは第五階層のモンスター。

そう簡単には倒されてくれないようだ。

攻撃自体に手応えはあった。

だが、その後二撃目をしようとしたときなしようとした時に、サソリの尾の針が勢いよくこちらに向かってきた。

そこで俺は二撃目を中断し、その針を受け止めることに全神経を捧げて受け止めていた。

だが、受け止めきれなかった。

「グッ!」

弾き飛ばされた。

それこそ、元からいた位置までである。

それ以上に、

「こんな膂力(パワー)があったのかよ。」

状態異常系能力と超パワー両方持ちってズルいな。

だが、さっきの俺の手応えが間違いでなければ今ので5割は削った気がする。

次、攻撃を決めれれば多分倒せる。

やっと、この地獄から抜け出せる!

そして、俺はさっきと()()()()()()()サソリに向かって走った。

さっきのように!刺突で毒を弾き返せば倒せる!

モンスターはそういうのに対策とかはできないはず!

いける!倒せる!勝てる!

走って走って、サソリは迫り来る俺に脅威を感じ、針に異変を起こし、毒を俺に射出してきたようだ。

だが、それも単調な同じ攻撃の繰り返しに過ぎない。

その時の透は気づいていなかった。

射出されたその毒の量は先ほどまでの()()程度しかないということに。

今の透には、良くも悪くも希望しか、勝って生き残って地獄から解放されて帰れるというそんな希望しかなかった。

だから気づくことができなかった。

そして透は―――。


「うおおおお!」

眼前に迫るその毒に刺突の衝撃波をプレゼントしてその毒を弾き返す。

そして俺は勝利を確信した。

そして全スキルを総動員してサソリにその攻撃を叩き込――――――え?

サソリは毒をもう一度射出してきた。

は?

毒を射出するのにはクールタイムが必要なはずじゃ?

まだ透は気づかない。

その毒はさっきの攻撃の残り半分だということを。

そして幾星 透はその毒を無防備にそのまま。

浴びて、しまった。

それは片方の目の眼球に。

それは身体全体に。

それは付着した。

再度、いや先ほどとは比べものにならないような、そんな地獄に透は堕ちた。


「―――――――――――――――――――――――――――ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

それはもはや人間の口から発せられたものとは思えない。

だが、それは俺が発しているもの()()()()()

激痛に悶える、「悶える「悶える「悶える」」」。。。

いたみが「つらい「つらい「うあい」」」。。。

もうだめだ、視界が半分、()()()()

狂ってしまったように俺は地面でジタバタとか転げ回っていた。

片目は失った。

絶対に、それは間違いがない。

今まで無くなったかもしれないと思った時もあった。

だがこれは違う。

今までのそれとは違う。

違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う。

そして、ポーションも飲めない。

全身に毒を浴びたせいでもう、両手も動かない。

だが、ある。

片目のように失明したわけでもない。

そこにはあるが、今は機能しなくなっているだけである。

そして、地面を転げ回る気力もなくなって、停止した後。

その時を待っていたのか、サソリは俺の腹をその針で貫いてきた。

もう、死ぬ。

今までのものとは違う、確実な圧倒的な絶望、無力感、虚無、脱力感。

俺の身体の中の壊されてはいけないものがグシャリグシャリと壊れていく音が聞こえる。

ああ、これで俺の異世界転生した後の物語は終わるのか?

終わるのだろう。

だってもう、助かる未来が見えないのだから。

ああ、ただこう思うことだけは許してほしい。

もう一度、チャンスがあれば。

そして、そして、そして。

幾星 透は―――――

死――――――。


今後リアルの方で定期試験が現着してしまいそうなので、1ヶ月ほど投稿ペースがかなり落ちます。

それが終わった後、全力で投稿しまくるので容赦してください。

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