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異世界転生したのに無双できない  作者: 星野 夜月
第二章 あの華が咲く、秋に
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第二章3 棘(サボテン)

体には、数えるのがめんどくさくなるほどの棘が刺さっている。

だが、あれだけ至近距離から放たれたにも関わらず、俺の体に穴は空いていない、つまり、貫通するほどではないということだろう。

だが、それを抜いてしまったら血が流れ出ていってしまう。

だから、それを抜くことはない。

この棘は奇しくも俺の出血を止めるものになっていた。

だから、格好は悪いが棘が刺さったまま戦うことになる。

幸い相手は動くができなそうだから、逃げようと思えば簡単なのだが、それをしてしまうと《アラガウモノ》の効果に引っかかってしまう。

となると、こいつを倒す上での最適解は。

「距離をとって、《投剣》を使用。そうすれば遠距離からだから棘が打ち出されたところでリスクはそこまでないだろう。」

俺は第四階層階層主戦後、どちらか片方の武器だけでは対応しきれなくなる可能性があることに気づき、なるべく両方の武器を持っていくようにした。

今回もそれが使えそうである。

そして俺はすぐに両手剣を置き、シルバーメタルソードを手にして、

投げた。

そして、その剣は確かにサボテンを捉えていた。

だが、サボテンが変化を見せた。

その剣が辿り着くであろう場所が何かを溜めるように膨れ上がり、そしてその膨らみはボンッと音を立てて弾けた。

そこからは先ほど全方位に発射されていた棘が点で集約されていた。

それゆえに、棘は同じだが威力、スピードその全てが強化されていた。

その剣は、その棘によって行手を阻まれてしまった。

投げられていた剣はカランと地に落ちた。

そして、剣を止めたあとその威力を保ったままこちらに飛んできた。

「うおおおお!?」

幸い、その棘は点で集約されていたから、すぐ横に跳べば避けれた。

それは俺の横でヒュン!と音を立てて過ぎ去った。

もし、今の棘が透に刺さっていれば、透は全身を貫かれ死んでいただろう。

それは、透自身の本能が理解していた。

やばい、やばいやばいやばいやばいやばいやばい。

遠距離攻撃は撃ち落とされる、それどころかさらに強力な一撃を誘発することになってしまう。

だからといって近距離で攻撃してしまえば少しずつ防具も壊れ始めて致命傷になってしまう。

そもそもサボテンは俺の攻撃で一撃で仕留めれるのか?

そんな疑念が心の中で渦巻いていた。

今までの倒しようなある強さではなく、限りなく倒しようのない、そういう恐怖を感じていた。

これが最初の分水嶺(ファーストライン)

確かにナディスさんのいうように攻撃一つ一つの殺意が高すぎる!

どうする、両手剣を投げたら倒せるかもしれないが、もしそれで失敗したら俺はもう攻撃手段を無くしてしまう。

落ちている棘を投げても同じ棘を持っているサボテンに対してまともなダメージを与えられるとは思えない!

そうして思考しているうちに、サボテンはまたふくらみ始めた。

「――――え?」

なんで?

自分に脅威が迫ってきたらそうなるんじゃないのか?

もしかして、ある程度距離が離れたら一点集中の攻撃をするっていうことか?

とにかく避けないとやばい。

ボンッという音が聞こえると共に俺は横に走り出した。

また何かが音を立てて横を過ぎていく音が聞こえた。

今回もその棘が俺の体を貫くことはなかった。

スキルを使っても勝てる気がしない。

俺の魔法も使いようがない気が―――

いや、ある。


俺の魔法の一つ、付与(エンチャント)の効果は確か、

自分の手に持つものに魔法で作った何かをなんらかの形でつけることができるという効果だったはず。

今までは自分の持っている防具、武器にしか使ってこなかった。

というよりはそれしか使えないという謎の先入観があった。

でも今になって考えると自分が持っていればなんでもその効果は適用できていたはず。

だから

火素作成(ファイアワークス)付与(エンチャント)

その火を宿したものを俺は投げた。

その火の軌跡の数は3。

今までの戦闘で、おそらくサボテンはこの行動パターンの中で動いている。

近距離=全方位攻撃、遠距離=一点集中攻撃。

というものだろう。

全方位攻撃にははっきりいって、今の俺には防御手段がないといっても過言ではない。

近づいて攻撃しようとしたところで棘を発射されてそれで攻撃どころではなくなるからである。

仮に俺が打ち出される棘を全て剣で弾き返せるのなら話は別だが。

そんな芸当はもちろん今の俺には不可能なのでノー。

だが、一点集中攻撃ならさっきのように回避はできる。

それ以前に今まではサボテン側は狙うものが俺、または投げられた剣だったりと一つだけである。

だからこそ、撃ち落とされたと信じて今回の同時3攻撃である。

頼むからその3点を器用に撃ち落とせるとかいう、鬼畜要素はなくあってくれ。

そして、その火の軌跡は――

全て撃ち落とされた。

だが、それは3点を器用に撃ち抜かれたのではなく、全方位攻撃によるものであった。

ってことは、こいつの行動パターンは

近距離=全方位攻撃、遠距離=一点集中攻撃

じゃなくて

近距離または迎撃対象が複数=全方位攻撃

遠距離=一点集中攻撃

ってことか。

つまり、あの威力の高い攻撃は棘とかを投げまくれば発動されない!

これなら、まだ俺でも近距離に行ける!

それに、全方位攻撃も発動するまでは流石にノータイムじゃない。

雪玉の吹雪よりは早いけど、何も接近できないクラスではない。

そして、今の全方位攻撃は俺のいる場所までは全然届いていなかった。

俺がこいつを倒すとしたらこのわずかな攻撃の間を狙うしかない。

さっきから放たれていた棘は今も地面に残っている。

それを使えばサボテンを倒せるかもしれない。


俺は、棘を持ちmpの消費は激しいが全てに火素作成(ファイアワークス)付与(エンチャント)した。

もちろん、この棘には武器スキル《投剣》は適用されていないためどこに投げるか、当たるかは透自身の技量次第である。

だが、棘がどこに行こうとさほど意味はない。

なぜなら、サボテンが反応し全方位攻撃を打つと判断したらいいのだから。

透は、一度一点集中攻撃を避けたあと少し間を開けてすぐに右手に3本左手に3本計6本の棘をサボテンに投げつけた。

それはサボテンに危機感を与えるには十分であった。

サボテンは全方位攻撃を持って、その6本の火の棘を相殺することに成功した。

だが、それは透の予想通りであり、それを見た透は即座にサボテンに対して接近をする。

だが、先ほど棘を打ち切ったサボテンは弾切れならぬ棘切れを起こしており、その接近する脅威に対抗する手段を持たない。

ゆえに、彼の接近を許してしまう。

いける!

全部狙い通りだ、あとは両手剣で一刀両断すれば勝てる。

もちろん、できることは全部している。

今から放つのは俺の全身全霊の攻撃。

はっきりいって、これで倒せなかったら俺はこいつに対しての対抗手段はない。

だから、これで倒せると信じている。

俺はその一撃をサボテンに叩き込んだ。

両手剣を突き刺されたサボテンは、グシャと音を立てて崩れた。

よっしゃー!

まじで勝てて良かった。

こんな最初のモンスターから《アラガウモノ》の効果に引っかかってたらこの先やってられないからな。

ん?ていうか発射された棘ってどうなってるんだ?

さっき俺はその発射された棘を投げてたけど。

灰になって消えるとかしないんだな。

ってことは………

「この棘ってドロップアイテムってこと!?」

よっしゃ来たー!

こんだけドロップアイテムがあるんだ。

これで一攫千金だぜ!

そうと決まれば今すぐにでも棘を集めて……。

あれ?棘が見当たらない。

いやいや、発射された棘を俺は投げていたんだ。

それに、バカみたいな数の棘があったはずだ。

それが一気になくなるだなんてありえな……くないか。

普通に考えれば、棘もモンスターの一部。

モンスターが倒されればそれらの棘も灰となって消えるのも道理………か。

はあ、残念。

めっちゃ稼げると思ってたのに。

それに、なんとなくだがサボテンからは砂水晶石(サンドクリスタル)は取れる気がしない。

確かにドロップアイテムはまだ確認していないが、ドロップアイテムだって何もモンスターとほぼ関係ない素材を落とすことはないだろう。

だからこそ。

「この階層にはおそらく、サボテン以外にもモンスターがいるんだろうな。」

地図を見ても、今戦っていたサボテンからも砂水晶石(サンドクリスタル)なんてものがあるようには思えない。

なら、サボテンの他にもモンスターがいると考えるのが妥当だろう。

それと、

「もう、無理にサボテンと戦う必要はないな。」

とも思った。

はっきりいって、サボテンに対して無理に戦う必要はない。

理由は単純であり、無数の棘、素材も使えそうなものはでなさそう。

それなのに、わざわざ倒しにいく必要はないのである。

まあ、接敵してしまった場合はその限りではないが。

となると、俺の目標は

サボテン以外のモンスターの捜索だな。

そして、探索しようとしたのだが。

「なんだこれ?風?」

なぜか風が吹いていた。

今までの階層では風なんてものはほぼなかった、いやなかったと言って過言ではないだろう。

なのに今風を感じる。

ってことはまさか………。

「砂嵐の予兆?」

風なんてものは今までの階層ではない、だがナディスさんの情報によればこの階層では()()がある。

それと考えればなんら不思議なことではない。

となると、ここにいるのはまずい。

すぐにでもこの階層から出るべきであろう。

砂嵐の中で生き残っていた存在はいないはずである。

もちろん、俺が生き残れるはずがない。

確か、できることならこの階層からでるのがいいはずである。

そう思った俺はすぐにこの場を立ち去ろうする。

確かに、今まで意識してこなかっただけで、今までも風は吹く時は吹いていたかもしれない。

これはただの杞憂に終わるかもしれない。

でもそれならそれでいいと思う。

もし、それが杞憂じゃなかったときに死ぬ可能性がある。

それだけでこの場から逃げる理由は十分なのである。

そして、階層の入り口の方に走っていると、他の冒険者もこちらに走ってきているのが見えた。

どうやら、俺の心配は杞憂ではなかったようだ。

とりあえず階層の入り口まで来た。

そして俺はその中に入り、様子を見ることにした。

階層の階段はだいたい安全地帯のはずだから、そこからなら砂嵐を見れるはずである。

あれほど危険だと言われてるものがどのようなものなのか、実際に見て確かめてみたい。

そうして階段付近にいると、こちらに来た冒険者が話しかけてきた。

「なんだい?あんた。砂嵐が気になるのかい?」

「まあ、気になるよねー。私も初めて第五階層に来た時は君と同じような感じだったしね。」

「はは!そういえばお前も砂嵐を見ようとして、この階層間階段から身を乗り出して危うく砂嵐に巻き込まれそうになってたよなー!」

「もう!昔のこと言うのやめてよー!」

今はまだ砂嵐は発生していない。

だが、もう大体の冒険者はすでに退避を終えたようだ。

そこで、俺をみた冒険者が過去(過去って言うほど前のことではないだろうが)を思い出して笑いながら話している。

そうして今、退避をしようとしている最後の冒険者は、階層間階段内に入り、砂嵐を避けることに成功した。

そして、それから少したったあと徐々に徐々に風は勢いを増して、渦巻き始める。

そしてそれは次第に地面にある砂を巻き込み始めて、それはやがて砂嵐と化した。

「うお………これはすごいな。」

それはまさに砂嵐、いや前世で見ていたものなんかよりもはるかに強大なものであった。

それは俺からしてみれば死の嵐と言って差し支えないものであった。

階層間階段内にいても、その風の強さは伝わってくる。

あの中に入ったら確実に死ぬと本能が叫んでいる。

これはマジで早めに退避しておいて正解だった。

もし俺があのまま階層内にいたらと思うと、背筋が凍る。

と言うか、これっていつまで続くんだ?

そうだ!折角ここにはいろいろ知っていそうな冒険者がいたんだ。

あの人たちに聞いてみよう。

「すみません!この砂嵐っていつまで続くんですか?できれば教えてほしいです!」

すると、冒険者たちは、一度困惑したような表情を浮かべたあと笑顔で

「ああ!いいぜ!」

と言ってくれた。

「この砂嵐はそうだなーざっと1時間くらいは最低でも続くかなー。」

「この前はだいたい3時間くらいは続いたよねー。」

なっっっっっっっっっが!

結構長いのかよ。

「教えて頂きありがとうございます!」

「いいっていいって!冒険者同士助け合いだからよ!

んじゃ、俺らは一度ギルドに帰るから頑張れよ!少年!」

そう言って、あの冒険者たちは去っていった。

その様子を俺は笑いながら見ていた。





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