第二章2 第五階層へ
ナディスさんにいろいろ教えてもらった後、俺は支配者の家に帰る前に薬屋によっていた。
理由はもちろんナディスさんの言葉である。
あれは、第五階層には毒を使うなんらかのモンスターがいる。
だから、解毒ポーションを買っておいたほうがいいという、ヒントだろう。
とりあえず、それを素直に聞こう。
というよりは、あの優しさに今すぐ答えたいと思ったのである。
後、少し現実的に値段が気になったというのがある。
そんな理由で今俺は薬屋にいるのだが、
「た、高い。」
やばい、買えないかも。
そこにある解毒ポーションはどうやら一本500エンカもするようである。
と、とりあえず今すぐ買うことはできなそうだ。
けど、これがないとなんか第五階層きつそうだしなー。
情報教えてもらっておいて、それ無視して第五階層いったら、死んじゃいましたー、なんて結果になってしまったらナディスさんにとにかく申し訳ない。
どうにかして買えないかな〜。
あ!あれを使えば買える!
だけど、あれはなるべく支配者のために使いたい。
だけど、あれが一番可能性が高いんだよなあ。
うん、俺1人で決めたらいろいろまずそうだし、支配者と話し合って決めよう。
そして、時間も遅いから全力ダッシュで家に帰るのだった。
「今日は帰るのが遅かったみたいだねー。」
という、支配者の声に出迎えられて俺は帰宅した。
「あのー、ナディスさ―ギルドの人と少し話していて……」
そういうと、支配者は何かを理解したような顔をして
「もしかして透君、第四階層を突破したのかい?」
と言ったのである。
「え?なんでそのことを知っているんですか?」
「それはもちろん、第五階層は最初の分水嶺っていうふうに学院で習っていたからだよ?」
「あ、やっぱりそうなんですね。」
はい、これでほぼ確定。
俺の予想通り学院、というのは前世でいうところの学校だろう。
「学院では、第五階層が最初の分水嶺で、冒険者になる人はそこまで到達すればなんでそう言われているかわかるよー、って言われてたからね。」
なんでかはわからないがどうやらそこら辺の情報は制限されているらしい。
これはあくまで俺の予想になるが、死亡率や、命を奪う攻撃という単語を聞いて、冒険者になりたくないと思う人がいるかもしれないからだろう。
俺ももし教える側なら、なんとなく危ない程度しか教えないだろう。
多分それで、一時期冒険者が全く増えない時があったのだろう。
「実は私はね、それについて結構興味があったんだ。だから透君、できればそれについて教えてほしいな♪」
どうしよう?
最近、俺自身も冒険者という職業的に命懸けの戦いというのも増えてきて、ナディスさんの話を聞いても取り乱したり冒険者辞めたくなるとかはなかったが、支配者は大丈夫だろうか?
いや、別に支配者が混沌の核にいくわけじゃないし、別に言ってもいいかもしれない。
「わかりました!ですが、その情報をわざわざ広めるとかは辞めてください。」
「もちろん、そんなことはしないようにする。」
よし、それなら大丈夫だ。
「ええっと、どうやら第五階層は―――」
そうして、俺はナディスさんに聞かせてもらったときの情報をなるべくわかりやすく支配者に伝えたのだった。
そうして、説明が終わったのだが。
「君、ほんとに大丈夫なのかい?」
と聞かれてしまった。
「多分大丈夫だと思いますけど。」
そういう俺に支配者は疑いの目をむけて、
「ほんとに?君、今までもたまに……っていうか結構頻繁にボロボロになって帰ってきてるんだよ?」
「うっ」
否定できなかった。
実際俺はだいたい多少無理をした戦闘をしている。
主に、階層主、変異種とかのときは。
だから、その心配も理解できてしまう。
「それがより危険になるんだったら、透君ほんとに死んじゃいそうで……」
「大丈夫ですよー。」
そう、普通は大丈夫なのである。
まず、ある程度の安全策を取り続ければ余程のイレギュラーがない限り大丈夫なのである。
まあ、いっつもそれをとっているつもりなのだが。
「信じてるからね。」
そういう、支配者はまだ言葉から心配が見える。
あとなんだろうか?呆れたような雰囲気も感じるような?
だけど、俺の「大丈夫」をしっかり証明できるように頑張ろう。
「はい!最大限安全策を取って、しっかり、無事に帰ってこれるように頑張ります!」
俺の言葉を聞いて、少しは安心したのか、こう続けた。
「その言葉を信じるよ。それに………」
答えれるように頑張ろ………ん?
なんか急に支配者の雰囲気が変わったような?
具体的には心配とかそういうのから、好奇心とかに変わったような………
「どうしたんですか?支配者?」
恐る恐る聞いてみると
「確かに!危険なのはほんとに心配さ。だけどね、それと同じくらいにね興味のある素材があるんだ。」
あ、そういうことか。
オーケーオーケー、防具関連の話でした。
「ちなみにそれってどんなものなんですか?」
「うーん、素材そのものはまだ私も見たことがないから、形とかの特徴はわからないけど、名前はわかるよ、気になる?」
それがヒントになるかもしれないから聞いておこう。
「はい、教えてください!」
「名前はね、砂結晶石っていうらしいよ。」
「ちなみにそれって、マジックドロップアイテムの類いじゃないですよね?」
「うん、砂結晶石は、白鉱石と同じ種類の普通のドロップアイテムだよー。」
「そうなんですか!だったら……」
「そうだね、新しい防具が作れる。」
よっしゃあー!
まあ、今の白ライトアーマーシリーズver.2もいいんだけど、ナディスさんの話通りならモンスターの攻撃も致命傷級の威力になっていくようだし俺自身防御力のステータスがかなり低いから、防具は新しくしたかったから丁度いい。
「是非!」
「言われなくてもそうするよ♪」
何度も思うが、ほんとにこの環境って恵まれてるよな。
と、また思った。
そんな感じの話をしていたのだが……。
ん?そういえば俺、なんか支配者と話そうとしてなかったっけ?
えーと、なんだっけ。
ナディスさん関連だと思うんだけど………。
あ、思い出した。
解毒ポーションの値段が高いから、スノードロップ売ってお金稼いでいいですか?
って聞こうとしてたんだ!
よし、すぐにきこう。
「あの、支配者……」
「どうしたんだい?」
「さっき、ナディスさ――ギルドの人の話をしてた時に解毒ポーションってあったじゃないですか。」
「うん、してたね。」
「ちょっとそのポーションが高くて、支配者が許してくれるなら、スノードロップを売ってもいいですか?」
「………。」
その問いに支配者は、少し目をつぶって考えて、
「ん、いいよー。」
と答えた。
「え!?いいんですか?」
結構驚きである。
そういうのはかなりこだわる人だと思っていた。
「まあ、悔しいんだけどね。私にはそれをまだ使えないんだ。だから、それとっておいても無用の長物にしかならないからねー。」
確かに。
と思ってしまった。
事実、今の支配者にスノードロップ、いやマジックドロップアイテムは防具にできない。
だから、ほんとに無用の長物なのだが。
それが支配者の口から出てくるとは思わなかった。
「え、えっと……」
「気にすることはないさ。私がそれを使えるようになった時に、たくさん取ってきてもらうだけだからね♪」
その言葉は、俺に罪悪感を感じさせないようなものだった。
優しすぎる、それは。
「はい!がんばります!」
「うん、死なないようにねー。」
さらっと不吉なことを言わないでほしい、フラグになりそうだから。
そんな、支配者の少し危なそうな言葉に、俺は苦笑いをしながらコクコク頷くだけであった。
明日売りに行っても遅いので、今のうちに売りに行ってこよう。
ということで、今俺は素材とかを売買する店にいる。
とりあえず、一番デカそうなところにきた。
店内には、たくさんの人で賑わっていた。
服装とかを見たところ、この店に来ているのはやっぱり冒険者の人が多いみたいだ。
何やら、防具などに鷹?の刺繍のようなものが施されている団体もいた。
他にも、おそらくパーティの人たちがみんなで話したりしながら、換金をする列で並んでいた。
見ているだけでわかる、あの人たちはすごい。
防具や武器とかもすごいが、それ以上になんだろう?気配が全然違う。
今まで俺は、レグやニースさん、ラギさんなど多少は冒険者たちとあってきていた。
だが、その人たちとは、気配の質が違う?みたいな。
なんだろう?うまく言葉にできない。
とにかく、すごいことだけがわかった。
――それは、今の幾星 透の理解できる強さの秤を遥かに超えていた。―――
ま、今の俺にはまだ関係はあるまい。
とにかく、そのバカみたいな量の凄そうな素材早く売って欲しい。
待つのが飽きてきたというのもそうだが、劣等感がすごい。
スノードロップだけであんなに喜んでいた俺が馬鹿らしくなる。
そうして、劣等感とかそういうものを心の中で思考しているうちに、
「次の方どうぞー!」
と、待ち時間は終わった。
そして、俺はそのカウンターに行き、
「これ、どれくらいの値段になりますか?」
と言って一個のスノードロップをお店の人に差し出した。
「そうですねー、スノードロップでしたら、一個50エンカ程度ですかねー。」
ご、50エンカ!?
高いのは予想していたが、まさかそこまでとは思わなかった。
これなら、20個売り払えば1000エンカを手に入れてポーションを2個買える。
20個は結構多いが、毎日コツコツ取っていけば案外すぐ集まるであろう。
「それじゃあこれ、お願いします。」
「スノードロップ20個ですね。わかりました。」
そして、店員さんはレジ?のようなものをいじって、
「はい、1000エンカです。」
「ありがとうございます!」
そして、俺は1000エンカを握りしめて支配者の家に帰るのだった。
そうして、家に帰った俺はすぐに部屋に行った。
ていうか、一つでこれくらい稼げるのであればそろそろあの片手剣《宵闇の明星》にも手が届き始めるかもしれない。
今現在は、俺の持つ両手剣で攻撃力はたりているからいいが、次攻撃力が足りなくなったら《宵闇の明星》を買おう。
なんとなくそう決めて、俺は寝た。
朝
支配者に多少「安全第一だからね」みたいなことをいわれた。
まあ、最大限頑張ろうと思う。
だけど、きつそうなのは事実である。
昨日は少し強がっていたが、実際のところ無事に帰ってくるというのはかなり厳しいと思う。
だけど、最大限の準備はしたはずである。
それだけを、信じて。
そして、支配者の家を出るまでできているかもわからない拙い強がりを続け、ギルドに行くのだった。
そして、薬屋に行った俺は、ナディスさんに言われた通り解毒ポーションを購入した。
そして、俺は混沌の核に行くのだった。
階段を、降りていく。
そして、第四階層を超えていく。
その先には、予想通り
砂漠があった。
天井には太陽のような光があり、俺を――いや、階層全域をあまねく照らしていた。
一つ上の階層、第四階層の酷寒とは違い、酷暑の第五階層。
そして、俺は進む。
階層を。
こちらにくるまでに購入しておいた地図を見て進む。
と言っても自由気ままに歩いているだけなのだが。
あたりは一面が砂である。
その中にたまに、サボテンのようなものがあるだけである。
本当に、数は少ないのだが。
ていうか、砂結晶石ってどこにあるんだろうか?
地図を見た限り、洞窟のようなものは階層主部屋しかない。
だから、あり得るのは。
モンスターのドロップアイテム。
または、
「この地面の下、とかな。」
そして、俺は跳躍し、地面に向けて。
刺突をした。
のだが………。
うん、何もなかった。
地面に剣を突き刺した結果は、無駄に派手な砂埃でした。
となると、モンスターのドロップアイテムか。
だとすると、楽に集めることはできなさそうだな。
そうして、進んでいくのだが。
うーん、今のところモンスターに遭遇しないな。
一つ気になるのは、あのサボテンくらいか。
ちょっと近づいてみよう。
結構近くまで来たが、サボテンはなんの反応も示さない。
「やっぱり違うなかなー。」
まあ、今までの回想にもあった木と同じ感じなんだろうなあー。
待てよ、それなら切ったやつの残骸素材になったり、売れたりするんじゃないか!?
よし、切ろう。
今すぐ切ろう。
そして、俺は両手剣を振りかぶりサボテンを伐採しようとしたのだが。
「――――――――――痛ッ!」
その瞬間、サボテンが自身が生やしている棘をとてつもない速度で全方向に射出してきたのである。
もちろん正面にいた俺はグサグサと棘が刺さっているのだが。
「なんだよ、お前、モンスターなのかよ。」




