第一章42 氷人形2
俺はこいつに勝てるのだろうか?
硬い守り、接近を許さない銃撃。
はっきり言って、突破口がみえない。
今までの、第一階層階層主、第三階層階層主のように、倒し方にトリックがあるようには思えない。
それを肯定するかのように、胸部が光っている。
ただ、俺の全力の攻撃をその弱点に叩き込むことができれば階層主を倒せるだろう。
迷っていても仕方ない、とにかくトライアンドエラーの精神で頑張ろう。
とは言っても、階層主は接近を許す気は毛頭ないらしい。
両手にライフル銃を持って、左右に雪玉を打ち続けている。
はっきり言って、回避はほぼ不可能。
防御は論外である。
さらに、階層主は打つタイミングを右手と左手でずらしている。
だから、弾が切れてももう片方の銃を打ち続けるからさっきのように、《投剣》をする隙も今はない。
今、俺は木の後ろに隠れている。
今はここが一番安全だからである。
ていうか、あいつは一体、何に反応して俺のことを打ってくるんだ?
雪玉だってそうである。
目とかないはずなのに、正確に俺のことを狙い、反応して攻撃したりしてくる。
見えてる可能性は限りなく低い。
理由は単純でまず、目がないから。
可能性として高いのは聴覚。
あいつに、表情と呼べるようなものはなかったが、確か耳はあったはずである。
それなら、聴覚によって反応している可能性はあり得る。
雪玉は知らない。
とりあえずそこら辺にある、というか頭上にある木の枝を手でむしり取って右の方に投げてみる。
すると、階層主は――
ライフル銃の銃口をそちらに向けた。
確定!階層主は視覚じゃなくて聴覚でものを判断している。
透『よっしゃ!予想通り!』
やべ、予想が当たったのが嬉しくて叫んでしまった。
やばい、声がやまびこみたいに反響してる。
ここにいるってバラしてしまった……………ん?
階層主はそこで奇妙な動きをしていた。
まるで、迷子の子供のようにまわりをキョロキョロと見回していた。
何してるんだ?
仲間でもいるのだろうか?
だったら負け確定になってしまうのだが。
ていうか、いい加減反響静まってくれないかな!
恥ずかしいんだけど!
そして、少し経った後、反響は止んだ。
それと同時に階層主はまわりをキョロキョロとみるのをやめた。
?まさか、今の行動と叫び声の反響は関係しているのか?
そうとしか思えない、反響が止んだ瞬間、階層主の奇妙な動きも止まったのだから。
なんでだ?
叫び声は俺のいる、この木の方からなったのだからそこを狙えばいいだけなのに?
他のところから声が聞こえてきたわけでもないのに?
なんで、敵を見失うような真似をするんだ?
待てよ。
声が響いた?
反響したときの声って、そこかしこから聞こえるよな?
なら、聴覚で判断するアイスダガーアンドライフルからしたらそれって、
周りからたくさん同じやつの声が聞こえる状態、つまり俺がどこにいるのかわからない状態ってことか!
確かにこれなら俺がどこにいるのかわからないから、ライフル銃を打つ場所もわからなくなる。
これを利用すればこの階層主も倒せる!
だが、おそらく接近してしまえば流石に位置はバレてしまうだろう。
理由は単純で、流石に叫び声以上に近くの音の方に反応するからである。
じゃないと、武器同士の攻防なんてできるわけががない。
けど、これで両手にライフル銃を持って乱射されまくって接近できないなんてことはなくなるだろう。
だが、問題は接近戦。
盾と、鉄槌を駆使した防御と攻撃。
これを突破できない限り俺に勝利はない。
だけど、今の俺に一撃であの盾を破壊するほどの攻撃はない。
もう少し押し合えば、多分あの盾も破壊できるのだが。
けど、それより早く鉄槌によって攻撃は遮断され初期位置に戻る。
この流れを変えない限り、これが無限ループしてしまう。
この中で流れを変えるのとしたらやっぱり
鉄槌による攻撃だろう。
これを防ぐことができればそのまま盾を破壊して弱点に攻撃を叩き込むことができるだろうから。
だが、流石に俺の白ライトアーマーシリーズver.2でも受け止めるのは困難だろう。
だからといって最初から、鉄槌か弱点を攻撃しようとすれば盾によって攻撃モーションが中断されてしまう。
だったら、こうすればいいんじゃないか?
俺は、もう一度アイスダガーアンドライフルに接近する。
まあ、まず。
この雪玉の雨を止まそう。
俺は大きく息を吸って、
透『ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』
叫びながら走り出した。
さっきのように声が階層主のいる空間にこだまする。
そして、階層主は俺がどこにいるかもわからずあたりをキョロキョロと見回している。
だが、俺がある程度距離を詰めると流石に階層主も俺のことを補足して、狙いを定めてくる。
ここからだ。
今から降り注ぐであろう雪玉の雨をどうやってかいくぐるか――
それを警戒していたのだが。
透『あれ?』
階層主は俺に気づくなり武器を変形させた。
マジか、近距離で撃たれるのが一番避けようがないから警戒してたのに。
階層主はなぜかライフル銃を盾と鉄槌に変形させた。
まあ、拍子抜けだが一番警戒していた部分がなくなったから良かった。
そして、俺は階層主の方へ突っ込んでいく。
最初に来るのは鉄槌ではなく、盾による防御!
だから俺はそれに向かって黒金剛炎状態の両手剣を持って挑む。
さっきのようにある程度押し合えば盾は破壊できる。
そして、両手剣と盾がぶつかり合う。
そして、俺は片手を離した。
押し合いになれは上から押しているこちらの方が押し込みやすいから片手を離しても押し返されることはない。
そして、ある程度押し合っていると、アイスダガーアンドライフルは右手を引いた。
きた!鉄槌がくる!
そして、俺は自由にしていた片方の手でもう一本の剣の柄を握り。
透『会心刺突!』
今から俺の腹に来るであろう鉄槌に向けて、鉄火剣状態のシルバーメタルソードを刺突した。
トドメをさせるほどの攻撃力、貫通力がなくても攻撃を受け止めることはできる。
そして、俺のシルバーメタルソードとアイスダガーアンドライフルの鉄槌は互角の威力による鍔迫り合いとなる。
だが、徐々にこちらの威力が弱まってきて、押し返されそうになる。
だが、鉄槌も徐々にその勢いを落とす。
そして、そして、そして。
シルバーメタルソードは少し押し返され、鉄槌も押し返される結果となった。
状況は何も変わっていない。
ように見えた。
シルバーメタルソードと鉄槌が鍔迫り合いを終えるより少し早く、押し合いをしていた両手剣と盾の決着が今、着こうとしていた。
結果はもちろん、両手剣の勝利。
バキバキっと氷が割れる音がした。
そして、俺は素早く刺突の構えをとる。
まだ、アイスダガーアンドライフルの鉄槌は先ほどの鍔迫り合いによって動かずにいる。
今が千載一遇のチャンス!
透『終わりだ、第四階層階層主……。』
そして、今の盾を破壊する一撃により、《コネクトスラッシュ》の一撃目は終わった。
つまり、これは
透『会心刺突!』
全スキル総動員+《コネクトスラッシュ》二撃目。
この戦いの中で最高の威力を持つ攻撃が第四階層階層主の胸、つまり弱点に叩き込まれる。
ミシッという音が聞こえた気がした。
バキッという音が聞こえた。
そして、その剣は階層主を貫いた。
弱点を破壊された階層主は氷の灰となって消失し、光が出てきて、俺の胸に入ってきた。
終わった。
透『終わった〜〜〜!』
強かった。
今回の階層主もかなり強かった。
両手剣だけだったら多分倒せていなかった。
まず、あのとき《投剣》をしていなかったら接近もできていなかったし何より最後の攻撃のとき鉄槌を防御できていなかっただろう。
だが、第三階層階層主よりは倒しやすかった。
理由は簡単なのだが、まず俺のスキル、特に火素作成が階層主の弱点属性だったこと。
これが一番今回の勝利に貢献していた。
この魔法がなかったら、はっきり言って今の俺では今回の階層主を倒すことはできなかっただらう。
そして、もう一つ。
第三階層階層主のように討伐方法がややこしくなかったことだろう。
前回の階層主は光で照らしてさらにその光からできた影がある一体を倒すとかいうまじでめんどくさいし、初見殺しな、討伐方法だったが、今回の階層主は討伐方法が胸の弱点を破壊するというかなりシンプルなものだったからである。
強さはアイスダガーアンドライフル。
倒しにくさは第三階層階層主と言ったところだろう。
まあ何はともあれ討伐したわけだし、この後少し素材を取ってから帰ろう。
そうして、少し雪玉を倒したりしていた。
その途中、なぜか雪玉が大量発生して少しピンチになったりして危うく全身を氷漬けにされそうになった。
マジで危なかったな。
まさか6体の雪玉に包囲されるとは思っていなかった。
その前に、1体の雪玉を倒して安心していたら、急に雪玉が6体発生してきたのだから対策のしようもなかったのである。
まあ、雪玉を一体シルバーメタルソードを投げて倒して、冷気を回避できる場所を作って、回避。
というのを繰り返して生き残れた。
もちろん《アラガウモノ》の追加効果のせいで《投剣》は使えないし、火素作成も使用できないからかなり危なかったからな。
すぐにそれができてなかったら今頃死んでたかも?
まあ、生きてるしいいか。
とりあえず、階層主を倒してレベル上昇条件をクリアできたから早くステータスを測ってもらおう。
最近はレベル上昇条件を逃亡したり敗北したりしないでクリアできている。
だんだん俺もこの冒険者という職業になれてきたかも!
そろそろ俺も無双できる日が近いかも!?
ステータス見てみよ!
幾星 透
ステータス
レベル7
レベル上昇条件???
HP243→278
MP208→243
STR255→290
DEF209→244
AGI246→281
???136→171
武器スキル
《コネクトスラッシュ》
《会心刺突》
《投剣》
能力上昇スキル
《筋力増加》
《ディフェンスレートアップ》
常時発動スキル
《アラガウモノ》
追加効果
一度討伐したモンスターに対し、《アラガウモノ》を除いた全てのスキルの効果が失われる。
魔法
《火素作成》
《付与》
今回もスキル追加なしですか。
なんかなれてきたな。
ていうか、案外これが普通なのかもしれないな。
にしても、最近ステータスがかなり上がってきている。
実際今回のレベルアップとは関係ないが、今日の雪玉に囲まれたときだって、第四階層階層主との戦いの時もレベル6になる前だったら対応しきれていたかわからないからな。
本当に動きやすくなったし、力もついてきたと思う。
まあ、《アラガウモノ》が邪魔ではある。
スキルが自由に使えたらもっと楽なんだけど。
そしたらもっと早くこの混沌の核を攻略できると思うんだけどな〜。
最初はなんだっけ?なんだか盗賊団の金強何某みたいなやつに瞬殺されてたのにな。
今なら多少はまともに戦えるかもな。
だからといって進んで戦いたいわけではないが。
ま、帰るか。
そうして、俺は支配者の家の方へ行くのだった。
???
とある冒険者『はあ…………はあ…………どうして、こんなことに…………。』
とある冒険者の連れ『ごめんな、弱いのに俺が……気を抜いちまったせいで……お前に迷惑かけちまって………。』
とある冒険者『気にするな………とにかく今は黙って休んでいろ………。』
彼は負傷している仲間を背負ってその場所から逃げようとしている。
いや、正確には背丈が足りず少し足を引きずっている。
その歩みはいくら仲間を背負っているとはゆっくりとしすぎている。
それもそのはず。
彼らは今、砂漠にいるのだから。
砂漠にある砂に足を取られてしまっているのである。
さらに、天候も悪く彼らは視界を塞がれてしまっている。
そのせいで彼らは地図を見ることもできずにいた。
とある冒険者の連れ『もういいんだ………もう俺を置いていってくれ………。もう、手足もこん………なふうになっちまってるからな…………。』
とある冒険者『そんな………こ……というんじゃねーよ。』
実際、彼の連れの冒険者の手足は酷い有様である。
手は、異常なほど血管が浮き出て、見るだけで不健康とわかるようにドクドクと脈打っている。
足はもっと酷い。
手のような症状はないが、足が異常なほど膨れ上がっており、今にも爆発しそうである。
そんな彼をとある冒険者は救おうとしていた。
とある冒険者『おい………、見えるかそろそろ帰れるぞ。』
確かに、そこには出口があった。
だが、
少し遅かった。
とある冒険者『おい、返事をしろよ……。』
帰ってくる反応はない。
とある冒険者『おい、。』
それどころか彼の息の音すらない。
そして彼は気づく。
背中の重みが消えていることに。
そして、あたりを見回して気づいてしまった。
そこにさっきまで背負っていた冒険者が泡を吹いて倒れ、
その虚な瞳でこちらを見ていることに。
とある冒険者『あ、ああ、あああ。』
そして、彼は気づいた。
先程まで生きていた冒険者はもう、
死んでしまったことに。
とある冒険者『ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――――――――――ぁぇ?』
彼の慟哭は長く続くことはなかった。
彼もまた同じ運命を辿ってしまった。
その胸を一本の毒針で貫かれて。
ある、2人の冒険者は、砂漠で、
いや。
混沌の核、第五階層で、
砂嵐と共に砂に埋れていった。
透君は音で物事を判断していると考えていましたが、実際にはアイスダガーアンドライフルさんは振動で物事を判断しています。
反動でキョロキョロしてしまったのは、空気の振動などでそこに透君がいるはずなのに、別方向からも音がしてそこにいるのにそこにいないという一種のバグのようなものが起きたからです。




