第一章39 凍息
俺は第四階層に進出し、モンスターと絶賛交戦中!
透『第四階層初めてのモンスターさんってわけか。』
そいつは、俺の半身ほどの大きさの
雪玉だった。
デカっ!
雪玉って聞いてたから、本当に手のひらサイズくらいなのかな、て思ってだけど全然違う。
まあ、防御力は低そうな見た目をしているが。
すると、雪玉が少し光ったような気がした。
透『ぇ?』
直後、俺は凍らせる冷気が俺の真正面から吹いていた。
そして、幾星 透は氷漬けにされる。
はずだった。
確かに、彼は全身を氷漬けにされ、動くことなど微塵もできなかった。
だが、何故か少しづつ氷が溶け始め、少し経つと、完全に氷が溶けていた。
透『危なかった〜。防具炎の壁状態にしておいて良かった〜!』
ほんとに危なかった。
俺は、先ほどから降り続けているこの、触れた場所を凍らせる雪。
これが、うざくて邪魔だったので、一度衣服に火素作成を付与をすることでそれらを炎の壁状態にしてみたのである。
防具を炎の壁状態にすると、敵の攻撃をその状態にした防具で受けると、少し焼くことができるようになる。
また、この階層に来てから気づいたのが、防具自体がカイロのように暖かくなるのである。
それに気づいた俺は邪魔な雪をどうにかするために防具をその状態にした。
すると、効果は抜群で、その防具に触れた箇所から、みるみる氷が溶けていくのである。
まあ、流石にそれ以外の部位は火素作成を使って地道に溶かしていくしかない。
仕方ないよね。
と、思っていたのだが。
その防具から少し熱気というほど熱くはないが、確かに周りの空気も暖かくなっていたのである。
結果、防具に触れた場所以外も、つまり全身の氷を溶かせるようになったというわけである。
まあ、正直なところこの雪玉から吹かれる冷気に全身を一撃で凍らせるほどの力があったのはほんとに予想外だった。
それに、それで凍らせられた身体を炎の壁で溶かし切れるかも、かなり賭けだったのである。
よし、早くこいつをどうやって倒せるか考えよう。
まず、厄介なのはあの冷気。
おそらく、雪玉が光ったほぼ直後に冷気が吹き荒れる可能性が高い。
距離を取って戦えることができれば、その冷気も余裕で回避できる場所から攻撃したいのだが。
あいにく今の俺にそんな飛び道具はない。
魔法もどちらかというと近接戦闘をサポートする魔法だからな。
だから接近戦を俺は強いられる。
というより、そうしないと攻撃できないだけなのだが。
だが、接近すればするほどあの冷気の回避の難易度は跳ね上がっていく。
いくら《ディフェンスレートアップ》を使っているとは言え、空気などは流石に剣では受け止められない。
まあ、結界みたいなスキルがあれば、その限りではないだろうが。
とにかく、今の俺に防御という選択肢は存在しない。
回避一択。
クヨクヨしていても仕方がないな。
もうやるだけやってみよう。
そして、俺は雪玉の方へ走り出した。
俺が今走り出せたのには理由が2つある。
1つは、このまま悩んでいても状況が好転することはないから、なんでもいいから行動してみようと思ったから。
実際考えている時も、雪玉が光った瞬間左右どちらかに全力ダッシュで回避していた。
このままだとジリ貧だった。
そして、2つ目は、この雪玉の攻撃はこの冷気しかないのではないか?と思ったからである。
理由はシンプルで、先ほど俺を冷気で凍らせた時、確かに俺は氷を溶かし始めていたが。
なにも一瞬で氷を全て溶かしたわけではない。
もし俺が雪玉だったら、狙いどり、氷漬けにできた!トドメを刺そう!
と思うはずである。
まあ、氷を溶かしてくるのが予想外だった可能性もある。
だが、俺はそれはないと判断した。
つまるところ、凍らされてもすぐ溶かせるから凍らされても大丈夫と思ったのである。
そして、雪玉に向かって接近していると。
ピカッ!
と雪玉が光った。
瞬間俺は右に跳んでそれを回避した。
危ないが、攻撃の前兆があるから、ギリ回避はできる。
そして、そして、そして。
俺が攻撃できる距離まで近づいた。
そして、俺が両手剣を振り下ろし、
雪玉を倒すことに成功した。
感触は思っていたよりもかなり軽かった。
予想通りである。
その感触は、現実世界の雪のようだった。
少なくとも、防御力という点で考えると、スキルを使わずとも倒せそうなほどである。
それに、回避自体も筋力増加の効力も多少はあるだろうが、そこまで難しくはない。
だからスキルなしでも戦えるだろう。
だが、1つ問題点がある。
もう、この雪玉を1匹倒してしまった。
もう、スキルを使わずとも倒せそうではあるものの魔法が使えなくなるというのはかなり痛い。
まあ、雪玉と戦っている時以外は全然使えるが、一番使いたい戦闘中に使用できないのは辛い。
だが、そんなことを考えても仕方ない。
俺は、ギルドで買った地図をみながら、階層主の方には行かないように気をつけながら冒険を続けるのだった。
率直な疑問なのだが。
なんで、攻略本と地図でこれほど値段が違うのだろうか?
確かに、モンスターに対して、実際に戦ってみた感想は本当に価値が高いのはわかる。
だが、それよりも階層の隅々まで見て、それをマッピングする方が、大変だと思うのだが。
なんでだろう?
まあ、あれかな。
そういうスキルか魔法を使える人がいるのかもしれない。
というか、そうじゃないと納得できない。
そうして、自分の中で答えを出して、俺は冒険を続けた。
木の枝とかも採取しようと思ったが、やめておいた。
第三階層のように、なんらかの毒を含んでいる可能性があるからである。
うーん。
またこの階層にも鉱石とかはなさそうなんだよな。
今の所、第一階層の白鉱石以来、鉱石系の素材が一向に見つからないのである。
この階層にはあると思ってたんだけどなあー。
ないものはない。
そして、階層を進んでいると。
また、あの雪玉に出会った。
そして、あちらも俺を認識したのかピカッと光り、冷気をぶつけてきた。
普通に危ないからやめてほしい。
そうして、俺はさっきのときと同じように、接近しようとした。
だが、効果が切れてしまって凍りついてしまった俺の体はいうことを聞かなかった。
そして、俺はそのまま前に倒れた。
雪が俺の顔にまとわりつく。
透(火素作成)
声になったのか、わからない声で氷の中から叫んだ。
どうか火が灯りますように。
と。
願いが届いたのか、はたまた普通に発声できたのか。
手に火が灯る。
そして、その手を動かしてどうにか凍ってしまった部位を溶かしていく。
そして、かろうじて身体が動くとき。
もう一度雪玉が光る。
今の俺に、それを避けれる余裕はない。
また、俺はそれの攻撃を食らうはずだった。
だが、ギリギリのところで、手に持つ両手剣を地面に突き刺して、風を凌ぐ壁にした。
よって、全身を守ることは叶わなかったが、それでも全身を凍らせるよりも、左腕だけで済んだだけマシである。
そして、すぐに俺は
透『火素作成』
を使用して、左腕の氷を溶かす。
だが、どうやって接近しよう。
今は、接近していないから両手剣によって冷気をある程度凌ぐことができた。
だが、近づいたらどうなるかはわからない。
それに、さっきは火素作成をギリ発動することができたから良かった。
次もできるとは限らない。
確かに、雪玉が冷気以外の攻撃手段を持っていなかったとしても、完全凍結されてしまったら氷像にされて、死んでしまう。
だから、せめて顔だけは凍結されないように気をつけなければならない。
最悪口さえ動けば魔法を使い、その状況から脱することができるからな。
だが、このまま止まっていてもどうにもならない。
ましてや《逃亡》なんてありえない。
ただのモンスター、それも討伐可能そうなモンスターにレベル上昇条件を上げられるのはないな。
そういうのも含めてこいつと戦おう。
だが、こうして考えているとわかることがある。
この冷気はモンスターのランダムで起きているわけではない。
冷気が吹くタイミングは、規則的だ。
リズムは一定。
だから、そのタイミングが来るより早く両手剣で、冷気を防ぐ壁を作ればいい。
だるまさんがころんだと、同じ感じでいけば良さそうだな。
次の冷気がきたら始めよう。
また、雪玉が光る。
そして、今度は両手剣に完璧に隠れていたからどこも………いやまあ、服の端は少し凍ったかもだけど、動きに支障がない程度には、凍らされていない。
そして、俺は雪玉に向かって走り出す。
そろそろ来る!
地面に両手剣を突き刺して冷気を防ぐ壁を作る。
そして、隠れる瞬間に雪玉が光、隠れたら冷気が吹き荒れた。
そして、また前進。
停止。
前進。
停止。
これを繰り返し、俺は着実に雪玉との距離を近づけて行った。
そして、
透『やっと、ここまできたぜ!雪玉野郎!』
攻撃射程圏内。
流石にここまできたら大丈夫!
剣を振りかぶり、振り下ろ――
視界を閃光が埋め尽くす。
そして、俺の剣が雪玉に触れようとしたとき。
雪玉は俺に向けて冷気をぶつけてきた。
だが、その時には雪玉の半分まで刃は届いていた。
だが、その冷気はそこで剣を止めさせる。
まずい、この位置で止まるのは非常にまずい。
この位置で止まってしまうと、俺が雪玉に攻撃していることになってしまう。
俺の両手は両手剣と一緒に氷漬けになってしまっているので、片手を離すとかそんなこともできない。
だが、それと同時に雪玉と、両手剣も凍らされて合体してしまって、互いに離せなくなってしまった。
モンスター相手に考えることではないと思うのだが、気まずい。
心なしか雪玉君から、あ、あの。どうしましょう?
という戸惑いの感情を感じる。
だが、ここで無理に足を使って互いに距離を離そうとすると俺の身体と両腕がさよーならしてしまう。
そしたらポーションでも流石に治せないだろう。
だけど、本当にどうしよう。
今も俺の体に降ってくる雪によって身体の凍結が進んでいる。
焦りが募る。
あ!
思いついた!
そこで、俺は第三階層階層主戦を思い出した。
そうだ、あのときはたしか蜥蜴人の両腕を欠損させたときだったはず。
両腕を失った蜥蜴人は、足を使って攻撃してきたはずである。
今までのモンスター相手ならそれをしたところで大したダメージを与えられずに終わっていたかもしれない。
だが、この雪玉君相手なら!
あの豆腐防御なら!
今、剣が止まっているのは冷気のタイミングが良かっただけ!
つまり、今度は!
と思った矢先、雪玉君が光った。
なんなんだよ!
どうしよどうしよ〜!
足が凍ったら本当に詰んじゃう〜!
両腕は塞がれている。
だから、上半身は動かせない。
けど、下半身は動かせる。
不幸中の幸いなのか、冷気は全て両腕と両手剣が受け止めているので下半身自体は動くのである。
そこで、俺の頭に一筋の光が閃いた。
そして、それを実行した。
はたから見たら頭がおかしい光景だろう。
なぜなら、モンスターと戦っている人間が、海老反りしているのだから。
これが俺の答えである。
守っても仕方のない上半身を犠牲に下半身を守る方法。
これしか思い浮かばなかった。
そして、防御に成功した俺は冷気の攻撃が終わると同時に雪玉を蹴ったのであった。
しかし、さすがはモンスター、流石に一撃では沈まなかった。
そして、俺は雪玉が倒れるまで雪玉を蹴り続けた。
そして、雪玉を倒すことに成功した。
透『やって、しまった………。』
謎の罪悪感があった。
一度、感情?などを通わせたモンスターを倒すのには謎の罪悪感があった。
まあ、仕方ないのである。
弱肉強食、弱肉強食。
そして、もう少し、冒険をしていると。
何体目かは忘れたが。
ドロップアイテムが出てきた。
それは、前世でいうところの、《雪の結晶》のようなものであった。
まあ、ドロップアイテムも出てきたわけだし。
もう今日の冒険は充分だろう。
満足した俺は、ギルドに帰っていったのだった。
ギルドに帰ってきた俺はステータスを更新したのだが。
透『ステータスは、いつも通りかもなく不可もなくという上がり具合。スキルは変化なしかー。』
そろそろ新スキルが欲しい。
《グッドセンス》統合しない方が良かったかもしれない。
ちなみに、レベル上昇条件も更新されていた。
今の所
スノードロップを25個集めろ。1/25
らしい。
スノードロップ………、さっき集めた《雪の結晶》のことだろうか?
何体目に出てきたか、わからないがかなりの数倒さないと出てこなそうだな。
ていうか、1/25って、もしかして。
レベル上昇条件には、1日で、とかそういう制限に関する言葉は見当たらない。
つまり、合計で25個。
何日かかってもいいのかもしれない。
今までに比べたら本当に優しい。
レベル6になったら新スキルが発現することを信じて頑張ろう!
俺は支配者の家の方へ走って行った。




