第一章32 不穏な気配
国のいろいろなお偉いさんたちが集まって話しているぜ!
そしてアリアは少し間を開けて告げる。
アリア『混沌怪物軍団侵攻が、
来るわ………。』
その言葉を聞き、場が一瞬静まり返った後。
クリスト『ほう、来るのか奴らが。』
リヴェア『ええ、そうなるわね。』
レオン『まあ、どうにかなるでしょう。いえ、どうにかして見せましょう。』
と、三人は落ち着いた様子で話したが。
他の大臣は違った。
マーファ『う、嘘だろ!最近、というかここ100年間、なんの音沙汰もなかったのに!?』
シース『そ、そんな。そろそろあの魚も取れて民たちが活気に溢れる時期だったのに……。嗚呼!それ以前になぜ今なんだ!』
カミーテ『そ、そんな。雪なんてものについて考えている暇ではないじゃない。自然の災害と同等、いいえ、それ以上のものが来てしまうなんて。そんなのあんまりじゃないの…………。』
ドエバブ『嘘だ………これでは流通が滞るどころではないようだ。』
ゴリゴリドッグ『我が部署の人間も混沌怪物軍団侵攻には無力ゴリ………。悔しいけど冒険者頼りになってしまうゴリ。』
ジャント『あ、ああ、あああ。これで民たちが気を動転させて問題を起こして、そこのゴリラが問題を起こしたやつを連れてきて…
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
また!また増えるウウウウウウウ。
仕事仕事仕事仕事オオオオオオオオオオオオオ!』
ファロック『O h…………やばそうですね。この先もっとしっかり監視しなければいけなそうだわ。』
と、各々が各々の反応をする。
しかし、この狂気乱舞を
クリスト『皆のもの。静まるがいい。』
ただそれだけで落ち着かせて見せた。
クリスト(ここは頭ごなしに説明して落ち着かせるよりも、このように単純な言葉の方が効果的だろう。)
という考えのもとの発言だった。
この一言であの騒ぎようを落ち着かせて見せるところを見てもこのクリストという男がどれだけの人物なのかが理解できるというものである。
アリア『確かに、皆様の驚きようも理解できますが、驚きすぎです。ですが、クリスト全人類代表最高皇帝。どのようにして、混沌怪物軍団侵攻を凌ぐおつもりでしょうか?』
そう、いくらここで皆を落ち着かせたとしても結局のところは混沌怪物軍団侵攻をどうにかしなければ意味がないのである。
クリスト『うむ。だがやはりその前に混沌怪物軍団侵攻について、皆に一度説明してほしい。』
アリア『はい、クリスト全人類代表最高皇帝。では説明いたします。
混沌怪物軍団侵攻とは
簡単に説明するのであれば
モンスター達が軍をなして、我々の生活領域、つまりパラフルズの領土に侵攻してくる現象のことです。
その脅威は冒険者のレベルという数値で表すのであれば最低レベルでもレベル10は欲しいです。そして、モンスター達を押し除ける、つまり討伐し切るには最悪でも一人はレベル100クラスの冒険者が必要です。ですが、現在この国でそのレベル100クラスに到達している冒険者、人物はそこにいらっしゃるレオン・ノヴァ・ルースリッド様ただ一人です。』
そこで国談が始まってから初めて彼の口から言葉が紡がれる。
レオン『へえー、そうなんだ。その情報ってどれくらい正確なの?』
アリア『我が部署、対怪物担当者は日々更新されていく冒険者のステータスを全て記録しております。故に現状そのレベルに到達している人がいればすぐに報告するように命令しております。』
レオン『ふうん、そうなんだ。あんたのところの人たちはすごく真面目だからね。確かに信頼に値するよ。疑って悪かったね、アリアちゃん。』
この男、存外チャラい。
これは初めてレオンという男にあった人物は、ほぼ確実にこれを思う。
だが、冒険者のレオンに会ったものは口を揃えて――――。
国談に似合わないその口調も彼だからこそ許されている。
なぜなら彼の手によって数多の――。
だから、彼にはだいたいの人物は何も言えない。
アリア『ですが、これは由々しき事態です。彼―――レオン様は全人類代表最高皇帝たるクリスト様を守らなければならない。ので、他にもレベル100クラスに到達する冒険者が必要なのです。』
レオン『まあ、そうなるよねー。だけどできることなら僕もその場に行って助けたいところなのだけれど。』
そんなことを彼が言うと
この場にいるすべての大臣『駄目だ!』
と口を揃えて言った。
そして
リヴェア『他の方々の言うとおりです、レオン。この国においてクリスト様の存在は何よりも大切なものとなっていることはあなたもわかるでしょう?だからあなたはクリスト様を死守しなさい。』
と言った。
その言葉はあまり正論で、そしてあまりに現実主義だった。
だが、皆の知る彼はそれを好しとしない。
クリスト『ふむ、リヴェアよ、確かにそれも大事なのかもしれぬ。だが、それよりも俺は民の方が大事だ。』
だが、他の大臣も、リヴェアも彼がそう言うことはわかっていた。
だからどうしようかと頭を悩ませていたのですが。
レオン『まあまあ、一旦話を変えようか。』
このままこの話を続けても八方塞がりである。
そこで、レオンは違うやり方で解決しようとした。
そのためにはまず話題を変え、皆に冷静になってもらうのが大切だと判断したのである。
レオン『アリアちゃん、その……混沌怪物軍団侵攻ってのはどうしたら終わるのかな?』
そこが肝心なのである。
そこらへんの情報は整理しなければならない。
アリア『わかったわ、レオン様。どういう厄災なのかもっと詳しくついでに説明するわ。』
レオン『ありがと♪』
皆は静まり返り、彼女の言葉を待つ。
そして彼女は語る。
混沌怪物軍団侵攻を。
アリア『では、まずこれはどういうものなのか。それを詳しく説明するわね。
これは外国の奴らにより送り込まれるモンスター達の大群です。海から陸に上がり、ありとあらゆるものに暴虐の限りを尽くすことです。やはり、全人類代表最高皇帝よ、他の国に攻め入る許可をッ!』
この問いかけは何度も何度も繰り返されているので彼もすぐに答える。
クリスト『それをしてしまえば、我々も外国とやっていることが変わらなくなってしまうだろう?それに俺もその外国からというのには違和感を感じているんだ、だからまだ駄目だ。いや、言い方が悪かったな。まだ、ではない。駄目だ。後、今は混沌怪物軍団侵攻について話くれるかなアリア。』
その言葉を受けたアリアは少しの間押し黙り、すぐに
アリア『すいませんクリスト全人類代表最高皇帝、ではもう一度説明に戻ります。
襲い来るモンスターはレベル10クラスが最低レベルです。そしてそれ以上のモンスターが不特定多数存在します。だから現状の冒険者達の実力ではあまりに頼りない。だからまずは冒険者達の実力の底上げが必要だと考えます。
また、この災厄の終わらせ方。
それはこの軍団侵攻の中心にいる、レベル100を軽く超えてくる将軍を討伐することです。将軍を倒せば、すべてのモンスターは灰に帰し混沌怪物軍団侵攻は終演となります。』
そうして、この厄災の内容、そして終わらせ方が説明された。
アリア『この終わらせ方の根拠はあの史実に基づいた英雄譚《二英雄の旅路》で記されています。そして彼ら二英雄である、《剣聖》と《神の盾》が混沌怪物軍団侵攻の被害に対して、たった二人で立ち向かい、ただひとりの死者も犠牲も被害も出さずに全てを終わらせた、その時に彼らに話を聞いた民はこう言っていたと記されています。
《剣聖》『なんか、ひときわやばそうなやつをぶっ倒したら全て終わってた(*´∀`*)』
と。
彼らのおかげで今までがあるので、この情報を全面的に信用する形にしました。ひときわやばそうなやつという特徴から私たちはそれを将軍と呼ぶことにしました。そして今回もそれを倒せば全て終わるでしょう。
そして、今私たちがすべきことは冒険者の早急なる強化です。それについて、今ちょうど全人類代表最高皇帝、副皇帝、全人類代表最高皇帝守護者、各大臣がいる今話し合うべきだと思います。』
それは至極真っ当な意見だった。
クリスト『うむ、ではこれからはそれについて話していくとしよう。』
その言葉に皆は頷いた。
レオンだけは思い通り♪みたいな感じで笑っていた。
ファロック『ですが、どのようにして冒険者を強化していくのですか?』
その言葉に皆は悩む。
だけどレオンは
レオン『身に付ける武器、防具を新しく、強くすればいい。そうすれば本質的には何も強くならなくても、実質数レベル上の力を手に入れられるよ♪』
ゴリゴリドッグ『確かにそうゴン!レオン!だが、低級冒険者は資金も乏しいゴン………。どうするゴン?レオン?』
クリスト『例えば、冒険者関連の物品を半額にしてみるとかはどうかな?』
その言葉にこの場の全員がバッと顔を上げる。
ドエバブ『それはいくらなんでもやりすぎじゃないんですかね?』
と、商業大臣である、ドエバブは言う。
ドエバブ『食料などの生活必需品に近いレベルの収入をもたらす、冒険者関連の物品。それを半額にしてしまえば……。』
クリスト『ふむ、では貴殿はこの政策はすべきではないと。』
ドエバブ『クリスト全人類代表最高皇帝の言うことは十分に理解できるのです。ですが―――』
すると、食い気味に彼は言う。
レオン『なら、あんたはどうやってこの混沌怪物軍団侵攻から、民をそして何より、自分を守るおつもりで?』
ドエバブ『それは――』
言葉が止まる。
レオン『今、国が滅んでしまうか。それとも国を守り少しずつ、経済力を戻していく。どちらがいいかなんて明確だろ?』
彼は少し、ドエバブを睨みつける。
レオン『それに、冒険者に強い装備を与えれば本来進めなかったはずの階層、本来倒せなかったはずのモンスターを倒せるようになり、彼らのレベルだって上がり、あなた方の護衛も増えるかもしれない。レベル100クラスに到達するやつも、自分以外に出てくるかもしれない。あなたがもし他の解決案も持たず、自分の利益だけを求めて言っているって言うなら、それはこの国を滅ぼす発言だぜ、ドエバブさん?』
その言葉にドエバブは躊躇う。
そして、彼は
ドエバブ『確かにそうだな、レオン殿。貴殿の方が確かに正しい。私も資金が枯渇しないように私も尽力しよう。』
そう、言わなければならなかった。
なぜなら、それに反対することは国を滅ぼすと言っていることと同義だからである。
レオン『そう、そう言ってくれればいいんだ。』
多少、ドエバブの顔に苛立ちが募る。
レオン『だ・け・ど。』
その言葉にまた皆が疑問の顔を浮かべる。
レオン『流石にこの世界にある物資をポンポン破壊されちゃ困る。だから、値段を下げるのは混沌の核産の素材でできたものの値段を下げようじゃないか。実質混沌の核の物質は無限だしな。』
そう、それがドエバブが懸念していた点である。
この世界のものは数に限りがある。
それ故に冒険者のためだけに浪費すると、他のことに使う分まで全て使い果たされてしまう。
それが不安でドエバブはその案を否定しようとしていたのである。
リヴェア『そうですね、確かにそれなら国の資金、資源的にもまだどうにかなりそうですね。クリスト様、どうお思いになられますか?』
リヴェアは許可した。
あとはクリストの判断に委ねられる。
この空間に、沈黙が訪れる。
彼―――クリストは目をつぶり、思案する。
その選択を行った結果、その先に国の破滅につながる何かが、それに関係する何かを起こしてしまわないか。
それを頭の中でイメージする。
そして―――
クリスト『うむ、それで良い。混沌の核産の素材でできた武器、防具を半額にしようではないか。そして彼ら――冒険者諸君がどれくらい成長するかは不明だ。それに彼らもただ強い防具、武器を渡されても慢心するだけ。だから、彼らにも伝えるべきだと思うのだ。混沌怪物軍団侵攻について言わなければならないだろう。彼らも心の準備をしてもらわねばならない。そして最大限強くなってもらうためには少し、いやこれはこれでかなりかもしれんが、発破をかけなければないないだろう。
身の回りのものが強化されたとしても、覚悟なき強化に意味など塵一つも存在しないからな。』
アリア『そうですね、急に混沌怪物軍団侵攻がきてしまったら、冒険者もどうしようもないですし。それに商人達も、事情を説明しなければ反乱を起こしてしまうかもしれませんので情報を公開しましょう。』
そして、それに納得をしたクリストは、首を縦に振った。
クリスト『では民に情報を開示しよう。異議のあるものはいるか?』
他の大臣達『異議なし!』
即答だった。
それが最善策だと全員が理解していたからである。
そして、王が問う。
クリスト『アリアよ、混沌怪物軍団侵攻が始まるまであとどれくらいなのだ?』
アリア『恐らく、早くて一ヶ月、遅くて三ヶ月以内に、きます。』
クリスト『ふむ、では我らもできることを最大限しようではないか!』
他の大臣たち『はい!』
全員の顔は希望に満ちていた。
だが、それは冒険者に対する盲目的な信用、期待からくるものなのだが。
リヴェア『では、皆様他に何かをいう方はありますか?もしある方は挙手をお願いします。』
手を挙げ、話を再開しようとするものはいなかった。
リヴェア『では、これにて国談を終わります。
ですが、ここからは忙しくなると思います。
大臣の皆様には御負担をかけてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。』
その言葉を皮切りに彼らは動き始めた。




