第一章31 国談
俺は混沌の核から帰ってきた。
そして今、支配者に謝っていた。
透『帰るのが遅くなってすみませんでしたー!』
と謝った。
すると、ドアがガチャリと開いて
支配者『本当に君は何をしているんだい?』
と疑問の言葉を最初にかけられた。
透『え、えーと、なんていうか素材を取るために混沌の核にいました………。』
出てからもう一度入ったというのは言わないでおこう。
支配者『そ、そうなのかい。でも今までこんなに遅くなることはなかったじゃないか。』
その通り。
言い返す言葉もございません。
透『え、えと。自分のスキル――』
《アラガウモノ》の効果について支配者に説明しようとしたのだが、食い気味に
支配者『全部言わなくてもいいよ。』
と言ったのだった。
その表情には多少悲しげな感情があるようにも感じたが、それ以上に何かに対する呆れのようなものを感じさせた。
透『え、あのどういうことですか?支配者?』
わからない。
どうして何も聞こうとしないのか。
俺だったらそういうふうに自分の仲間が変なことをしたら、最大限原因、行動理由について聞くのだが。
支配者がなぜそのような判断をしたのかがわからないが故に俺は支配者にその意味、意思を問うた。
支配者『君のスキルに何かあったのは気になる。だけどね、君が素材を集めるため、と言ってくれたからだいたい君の意思がわかったんだ。だから、君のスキルについてはこれ以上何も聞かない。それに今回のことも別に怒りはしない。』
そ、そうなのか。
にしてもこの人、最初は不思議で、理解し難い人だと思っていたが、やはりその認識は間違っていた。
この人はとても、とても優しい人なんだ。
そうでなければ今回の件はこのように終わらせてはくれなかっただろう。
それに俺はある程度の罰は覚悟していたのでその点においてもかなり意外な反応だった。
支配者『だ・け・ど!君のそのボロボロさには物申させてもらおう。』
やっぱりこのまま終わるわけがなかった。
支配者『何度も何度もいうけどね、生きてないと意味がないんだよ、、君が私のために頑張ってくれたのはなんとなくわかる。だけど、何も私は君に傷ついて欲しいわけじゃないんだ。私はね、君の無理のない範囲で頑張って欲しいんだ。その点を忘れずにこれからは頑張って欲しいと私は思うのだけど、わかってくれるかな透君?』
すごい怒っていた。
だけど、俺のことを思って怒っているのだろうから俺は何とも言えないし、納得するしかない。
透『わかりました………。』
支配者『本当に頼むよ透君。』
本当にそうしよう。
もし俺が支配者の立場ならそのような無理は絶対にさせないし、してもらっても複雑な気持ちになるだけだろう。
だからなおさらそのことを胸に刻んでいこう。
透『はい、絶対に守ります。』
支配者『それじゃ君のそのボロボロになってしまった防具を修理するから早く外して渡してくれないかな?』
透『?はい!わかりました!』
そうして俺の異世界転生生活は日常に戻っていくのだった。
とあるギルドの最上階。
ここは、謁見の間、王室など様々な呼ばれ方をしているが、簡単に言えば、王の個室である。
つまり、この国パラフルズは王国であることがわかる。
その王室の驚くほど呆れるほどにもはやある意味無駄とも思えるような椅子に腰掛ける人物は言うまでもなく、
王 だった。
???『そうか、そろそろアレのときであったか。』
???『はい、そうですね。なのでそろそろ彼らも準備を始め、終わり次第出発するそうです。』
そう王に言葉を返すのは、もはやその制服を着てもらうため、いや、制服というのはこの人のために存在するのではないかと思ってしまうような容姿。
そして、整えられた三つ編みの髪。
この人は恐らく、秘書か幹部クラスであることは確定している。
そしてその言葉を聞いた王は
???『うむ、では我らも準備をするとしようか、国談 の。』
???『はい、そうしましょうか。』
その王の言葉を皮切りに彼らは謁見の間から出て、ギルド最上階にある別の部屋、会議室に行くのだった。
数日後
王たちは、国談の日を迎える。
そして、しかしその前にこの王、という人間の立ち位置について説明しておこう。
王――彼は
人類最高権力者 全人類代表最高皇帝たる。
クリスト・パラフル・ニュールソナー・ヴァーミリオン
その人である。
彼はとても勇気のある行動をしたり、またどんな人に対しても変わらぬ態度を取り、変わらぬ優しさを持つ男である。
そのため民衆からは異常なほどの信頼を得ている。
また、彼は武力は格闘技の技。
また、剣技の基本を知っている程度であり、特殊体質のためステータスの上がりが異常なほど悪い。
だが、それでも彼は武力がないことに対して特に何も感じさせないほどの圧倒的知力を持ち合わせている。
だが、その力を全く悪行や裏で行われる俗にいう汚れ仕事などには一切使わない。
それどころか逆に裏組織が判明した瞬間その組織をその知力を持って全力で潰しにかかるというほどの、圧倒的なまでの正義感の持ち主である。
それこそが彼が王たる所以だろう。
だが、それ故に予算、などを考えずその知力により、想像、考えられた策を全て実行するためストッパーがいなければ恐らくこの国の予算、いや、金などの資源という資源が全て消し飛ぶことになるだろう。
また、その後ろに姿勢をしっかりと正しく保ったまま、静かに立っている二人の人物がいる。
一人は制服姿の似合うあの人
その地位は
人類最高権力者補佐 副皇帝
リヴェア・クロアダ・ロイーナ
である。
彼女は先ほどのクリスト・パラフル・ニュールソナー・ヴァーミリオンの行動をある程度制限する、ストッパーである。
彼女の役割は簡単に表現するのであれば全人類代表最高皇帝の思考した策を現実的に可能かどうか?それは予算的に大丈夫なのか?など言うなれば机上の空論を現実に落とし込む役割である。
この説明を聞くだけでわかると思うが彼女はとても苦労人である。
そして、もう一人制服を着ている。
そして背に盾と長大な両手剣を背負っている男がいた。
その男は
全人類代表最高皇帝守護者と呼ばれる。
レオン・ノヴァ・ルースリッドである。
また、彼は全人類代表最高皇帝守護者という二つ名の他にもう一つ冒険者により付けられた二つ名がある。
それこそが
最強の黄金騎士
である。
その名の由来はとてもシンプルである。
まず、黄金騎士。
今は全人類代表最高皇帝守護者となっているが、その前までは数えきれないほどいる冒険者の一人だった。
そのとき、黄金の鎧、盾を身にまとっていた鎧から黄金そして戦いの様、その手に持つ両手剣から騎士。
そして、彼、レオン・ノヴァ・ルースリッドは現在このニュールソナー、いやパラフルズの中でのもっとも強い人間、故に最強と呼ばれている。
そんな人間が全人類代表最高皇帝の護衛となるのはある意味当然とも言えるだろう。
この三人がいまこの場にて、他の大臣を待っている。
その雰囲気は荘厳そのものであり、ただの平民がこの場にひとたび入ってしまえば、何の命令がなくとも勝手に平伏したくなるような圧巻と言えるほどの圧力に包まれていた。
そしてその部屋の扉がガチャリと開いた。
入ってきた人物はすぐに喋り出した。
???『これはこれは、お元気そうで何よりです。全人類代表最高皇帝、クリスト様。』
クリスト『うむ、貴殿も健勝そうで何よりだ、農業大臣マーファ・デンスイ殿。いま、この国は冬。故に貴殿の部署では特にできることはなくなっているだろうが、来年度の収穫は期待しているぞ。』
そう、彼は農業を司る人である。
この場に集まる人物は、全人類代表最高皇帝、副皇帝、そしてその守護者、そして各部署の大臣だけである。
マーファ『はい、クリスト様のご期待にそえるように精進してまいります。おや、もしかして私が一番にきてしまったのですか。』
クリスト『ああ、そうなるな。だが、緊張することもなくリラックスして椅子に腰掛けてくれ。』
と、クリストが子供のように笑って、マーファに座って待っていろ、という意味を込めて言った。
数分後
彼らの待つ部屋に、また来客が来る。
???『クリスト様、その顔を見るだけで私は幸せです。クリスト様も元気そうです何よりです。』
この発言を見るだけでわかるだろう。
こいつは生粋の全人類代表最高皇帝信者なのである。
しかし、クリストはそれを軽く流して、
クリスト『うむ、貴殿の仕事に対する真面目さはとても良い。これからも頑張るのだぞ。』
その言葉に感無量、胸がいっぱいだとでもいうかのように、いや、もはや隠す気もないだろう。
それを身体全体で表現している。
その男の名は
クリスト『では貴殿も彼――マーファ殿の隣に座るといい、水産大臣シース・ウーハジオ殿。』
彼は水産業関連を司っている。
彼は今の発言だけ見るとかなりイカれているように感じるが仕事に対してはとても、とても真面目に働いているのである。
そしてこのように挨拶をして入ってきて、座る。
この動作を6度繰り返した後、席が埋まると、
副皇帝リヴェア・クロアダ・ロイーナが
リヴェア『それではみなさんお揃いのようなので
国談開始です。』
と会議の始まりを告げるのだった。
リヴェア『では、まずは農業大臣のマーファ・デンスイ殿。政策などここでいうべきと判断することがあれば発言をよろしくお願いします。』
そう言われるとマーファはその口を開く。
マーファ『わかりました。では一つだけ宜しいでしょうか。』
リヴェア『ええ、どうぞ。』
マーファ『どうかうちの予算を3割ほど他の部署に渡してもらえないでしょうか?』
会場内にどよめきが走る。
なぜなら予算は取れるだけとっておいた方がいいというのがこの議会の中の常識だからである。
リヴェア『その発言の真意は?』
マーファ『はい、今は冬。故に我ら農業系つまり、農家は一部冬眠のような状況にあり、いま、動くことのできない私たちのような部署に予算を出すよりも、より使うべき部署にお金を回すべきだと思ったゆえ。』
その発言は心からの発言である。
それは彼の瞳を見ればわかることである。
そして、次に口を開いたのはリヴェアではなく
クリスト『よかろう、ならばもし予算を増やすべきと我が判断した部署があればそこに予算を出そう。だがなければそのままマーファ、貴殿に渡そう。』
というように会議は順調に進んでいく。
水産大臣である、シース・ウーハジオが、今はこの魚が旬なのである程度値下げをしてほしい、あの魚は値段を少し上げてほしいという要望を口にする。
災害対策大臣である、紫色の髪の女性、カミーテ・ナンザニアが、
今は冬だからうちの部署の人間に雪などを退けるための魔法の使用許可をしてほしい。
ということを口にする。
商業大臣である、小太りした男、
ドエバブ・ジンバブが現在の収入の増減についての報告、そして冬になり流通の周りが悪くなるゆえ、先程のカミーテ災害対策大臣と被っていますが、その雪をどうにかしてほしいと愚考しております。
と言った。
そしてクリストはそれについて、思考していた。
だが、この場で結論が出ることはない。
なぜならクリストだけでなくリヴェアと相談の上皆に発表するという流れになっているからだ。
そして、次は犯罪取締大臣である。
ゴリタ・ゴリゴリドッグはいつも通りにしっかりと犯罪者を見つけ次第とっ捕まえているゴン!
というふうに最近の仕事の状況をわかりやすくクリストに伝えたのである。
語尾については国談に参加するものは全員スルーする方針なので、誰も反応することはない。
そしてこの話振りからわかると思うがゴリゴリドッグは頭が少しぶっ飛んでいる。
次にかなり目のクマがすごくて、疲れた顔をしている裁判所兼法律大臣のジャント・メンクマは。
あ、あの。ゴリゴリドッグさんは捕まえ………てくれる分には………とても嬉しいんですけど……………もっと問題によっては注意に収める………とか自分達である程度………はんだんしてもらいたいんです………。
そして、ゴリゴリドッグを除いた全員が思う。
ああ、自分はああはなりたくない。
と。
一応ゴリゴリドッグが
ゴリゴリドッグ『む、そうであったゴンか?わかったゴン。最大限自己判断してみるゴン!』
と言っていたがこの場にいる全員。
特にジャントは期待をしていなそうだ。
そして、労働監視大臣である、ファロック・ナイクは特に何もなかったということだけを報告した。
そして最後に対怪物大臣である、アリア・ヌエコンシスコは神妙な顔つきで言った。
アリア『……………来るわ。』
クリスト『アリア殿、何が来るというのだ?』
アリア『混沌怪物軍団侵攻が、
来るわ………。』
その瞬間場が静まって………




