第一章29 返礼死闘
俺は《アラガウモノ》の追加効果によってかなり弱体化してしまい、ショボい素材しか取れなかった。これでは支配者に顔向けできないので、混沌の核にもう一度入るのだった。
俺は第二階層に来ていた。
第一階層の素材自体はもう集まっている。
だから他の階層の素材を集めなければならない。
確かに厳しい戦いになるだろうが、勝てる可能性自体はある。
そして俺の目の前にツノシシが現れた。
とりあえずコイツは直線的な動きしかできない。
だから変に攻撃を受けるよりも、避けた方がリスクは少ない。
それに今の俺にも、戦った時の経験自体は残っている。
避けた後、ツノシシを木にぶつけるときのコツだって、まだ覚えている。
だからあの時と同じようにして、怯ませたツノシシを一方的に攻撃できればまだまだ勝てる。
そして、ツノシシはこちらに突進して来た。
とりあえず避ける。
スキルが使えない今の俺のステータス的に、コイツの突進を受け止められる自信はない。
だから必然的に木にぶつける作戦が一番いいという結論になるのである。
そうして俺はツノシシの突進を軽く避ける。
この動作にはスキルは一つも関係ないから、いつも通りに動く。
いや、訂正。
ステータスが上がっているから軽く避けれるようになっている。
まあ、木に当てることには失敗したわけなのだが。
まあ、けど軽く避けれることがわかったからなんなら木の前に立って、当たる少し前に避けるくらいの方がいいのかもしれない。
再度、ツノシシが突進してくる。
俺は木の目の前に立ってドンと待ち構える。
そして横に跳躍!
直後、ドオオオオオオオンという爆音。
それはツノシシが木にぶつかったことを意味していた。
そして俺はツノシシに攻撃したのだが。
硬い。
切れはするけれど硬い。
これは何度か怯ませないと倒すことはできないだろう。
にしても、スキルによる威力上昇補正ってかなりすごいんだな。
やっぱり俺が第三階層までこれたのはスキルがあってこそのものだったんだと自覚した。
そして俺は最初に攻撃していた場所付近を集中して攻撃した。
理由は単純で、同じ場所にダメージを与え続ければ、そこが弱点となり、ダメージが増える可能性があるからだ。
だから今回はそこだけを集中して攻撃する。
そうするのが勝利への一番の近道になるだろう。
そして何度か突進を避け、怯ませて、攻撃、という流れを繰り返したのち、俺はやっとツノシシを一体討伐することに成功したのだった。
たった一匹。
たった一匹でこんなに時間がかかるなんて。
もし複数でかかってこられたら勝てるかどうかもわからない。
だけど、倒せることはできるようだ。
なら、ここで引き返す選択肢はない。
そうして無謀な冒険を彼は続けていった。
何度も、何度も同じ動きをしていたら流石に疲れて来た。
だけど、だんだんこの倒し方のコツも掴めて来た。
頸、とにかく頸を集中して攻撃すればいい。
ツノシシの中で一番薄い(それでもやっぱり全然太いのだが)部位、それが頸なのである。
数を倒していく時に俺は集中攻撃する部位を変えて見つけた弱点がここだったのである。
だけど、やっぱり数を倒したと言ってもまだ7匹程度なんだけどね。
透『また、来たか……』
その目は、目の前にいる8匹目のツノシシを見据えていた。
まだ、ツノシシの毛皮は1枚も取れていない。
透『君からは取れるのかな?』
言葉が通じるはずがないのに透は疑問を口にする?
返答かはわからないが、ツノシシがフガフガ?グルルルル!という鳴き声を発した。
そうして木の近くまで来て、
透『来い!』
と叫んだ。
特に意味はない。
ただ早く来て欲しいのと、気合いを入れるために叫んでいるだけである。
そしてそれに呼応したのかツノシシはこちらに突進。
そして俺と相手の距離が一定のところまで来たときに。
サイドステップ!
直後、爆音。
そして怯んでいるツノシシに対して、頸に集中攻撃!
ツノシシが起き上がる時は少し前兆のようなものがある。
何かはわからないが、それが俺に一度退くときのサインとなっている。
来た!サイン!
すぐさま俺は後ろに下がった。
しかし、すぐに衝撃。
そして今度は俺が木にぶつけられてしまった。
そんな!なんで後ろから衝撃が来るんだ?
最初俺が見ていた敵は本当に一体だった。
だけど、後方から急にツノシシが突進して来た。
つまり、2体目。
また、来たのだ、ツノシシが。
くそ!勝てるのか?今の俺が2体のツノシシ相手に?
とりあえずやってみよう。
もしかするとツノシシの突進で、片方のツノシシを倒せる可能性があるからである。
故に勝算はある。
そして俺は一体の時と同じように木のすぐ前に立つ。
今回は叫ばなかった。
緊張でもしてるのだろうか?
まあいい。
すると、片方のツノシシだけ、突進してきた。
そしてもう片方のツノシシはこちらをじっと見つめて待機していた。
は?なんで、モンスターって本能的に俺たちを襲う怪物じゃないのかよ!
そうしていると、片方のツノシシが眼前に来た。
ああ、クソ!
受け止めるにしても、今の俺じゃ無理。
なら避けるしかない。
即サイドステップ。
再度、爆音。
いや、待て。
今攻撃して片方倒せれば結局1V1でイコール。
なら、どうやらもう片方はじっと見ているだけのようだし……。
それに今怯んでいるモンスターはさっきまで、攻撃していた方だから少し倒しやすいはず!
そして俺は大きく、振りかぶり……
即攻げ――
激痛。
さっき、ツノシシに突進されたのと同じような痛み。
訂正 同じだった。
まじか。
いや、当たり前と言えば当たり前だ。
確かに攻撃をするとき、俺はチャンスだ!と思い攻撃だけに集中していた。
そここそがツノシシからしたら絶好のチャンスになるのは当然だ。
だけど、そのような知性がコイツらにあるのか?
いや、ありえる。
コイツらにはありえないと思っていたのだが、ある意味コイツらは前世で言う野生動物。
前世の野生動物なら生存のために団体、集団行動をしている奴もいる。
言い方は悪いかもしれないが、ある意味人間だってそうだ。
と言うより、団体、集団行動をしている生き物の最たる例、それが人間なのだろう。
まあその話は一旦おいておくとして。
つまり、コイツらも(生存のためなのかは定かではないが)冒険者を狩るためにここに集団行動、ひいては連携をとってきても不思議ではない。
ていうか、目先の獲物に集中して反撃を喰らうなんて、こっちの方がまるで野生動物みたいじゃないか。
ならこちらも多少は頭を使ってみようか。
まあ、今ので大体思いついたんだけどね。
よし、実行に移そうか。
そして俺はさっきと同じような感じで木の前に立つ。
ちなみに、さっき怯ませたツノシシはもう起き上がっている。
まあ、こんだけ時間たっているんだから当然だよね。
よしよし、また来たよ。
また同じようにサイドステップ!
そして怯んだツノシシ相手に、
攻撃……
するフリ。
そして、待っていた片方はやはり、こちらに突進してきた。
そしてもちろんそれを予測していた俺はすぐに突進を避ける。
そして、俺の後ろには
ツノシシ『フガフガッ!?』
怯ませていたツノシシがいる。
車は急に止まれない。(急にピタッと止まらない。)
つまり、ツノシシも急には止まれない。
なら、ツノシシは慣性の法則に従い。
怯んでいるツノシシをブッ飛ばす。
もちろん、ツノシシの突進は今の俺の剣に比べれば全然威力が高い。
つまり、怯んでいたツノシシはあまりのダメージに耐えられず、倒される。
頭を使っていても結局は、できるのは単純な行動だけ、それを逆手にとってやったぜ。
そしてその後、残ったツノシシを今まで通りの倒し方にて、倒したのだった。
そう言えば俺の体、2回くらいツノシシの突進直撃してた気がするんだけど。
なんかそこめっちゃ熱いんですけど。
そうしてそこを見ようとして――
倒れた。
当然である。
無理して戦い続け、傷の回復もおろそかにしているのだから。
血は垂れ流しっぱなしで、血が足りなくなるのも無理はない。
透『う〜………』
まずい。
ここはモンスターも普通に湧くから今意識を失うと、やばい。
とにかくやばい。
とりあえず起き上がらないと、まずい。
ていうか第二階層で倒れるの2回目だった気がする―
透『あ――』
意識も失った。
夢を見ていた。
俺の知らない家に俺がいる。
そして、なんだ?
犬を抱いている?
知らない犬をなんで俺が抱いているんだ?
いや、名前がわかる。
コイツの名前はモロ。
それだけはわかった。
なんでかはわからない、夢だからかな。
にしても、なんだかすごく懐かしい感覚だ。
昔を思い出す。
昔?
ムカシってなんだ?
俺は転生するまで、どんな家庭でどういうふうな人がだったんだ?
いや、何考えてるんだ、俺。
今の俺が、俺なんだから考えるだけ無駄だろ。
今は考えるのをやめて、モロと遊んでいよう。
そのままモロと遊んでいると、ドアが開いて――
夢は終わりを告げた。
鳴き声が聞こえる。
フガフガっという鳴き声が。
そこで俺は意識を完全に取り戻す。
透『う、うわああああああ!』
俺はすぐにその場から移動するために地面を転がった。
なぜなら今まさにツノシシが俺に向かって突進をしようとしているのが見えたからだ。
俺はどうにかスレスレで、突進を避けれた。
うわあああ、あぶねええええええ!
まじで、ツノシシの突進は当たると痛い。
多分さっき当たっても大丈夫だったのはアドレナリンかなんかが出てたんだろう。
とりあえず、コイツは殺す。
寝ているとこを襲うなんてありえねえ。
自分でも理不尽なこと言っているのはわかっている。
だけど、殺ると決めたら殺る。
透『おらああああああ!』
多少ゴリ押しを混ぜながら倒すことに成功した。
うーんどれくらいツノシシの毛皮を集めようかな?
まあだいたい10枚くらい集めようかな。
というより、それぐらいが今の俺に集まることがギリギリ可能な数だろう。
よし、頑張ろう!
何時間、たっただろうか?
全然集まらない。
今集まったのはたったの5枚、半分だけである。
まあそれもこれも全部コイツらのせいなんだけど。
コイツら、それは目の前にいる5匹のツノシシである。
なぜこうなった。
数時間前
よーし!
順調に毛皮も集まってきたな!
もう半分も集まった。
おお!ちょうどなんか広い場所がある!
もしかしてツノシシいるんじゃね。
まあ開けた場所だとツノシシを倒しにくいんだけど。
ま、いたらいたで木がある方に誘導していつも通りの方法で倒せば大丈夫でしょ。
このときの俺は順調すぎた。
故にどこから湧いてきたのかもわからない自信、そして油断があった。
だから俺はその開けた場所。
いや、もう少し正確にいうなら。
地図に記されていない、イレギュラースポットに足を踏み入れてしまったのだろう。
そこには5匹、いや5匹以上のツノシシがそこにいた。
もしかしたらそこはツノシシたちの家?のような存在だったのかもしれない。
そこに足を踏みれた、それも獲物が。
そしたら当然即撃退。
結果、今の状況が生まれたのである。
この状況はとにかくやばい。
さっき2体の時点で、そこそこやばかったんだ。
それの2倍以上。
どれくらいやばいのかがわかるだろう。
じゃあ、逃げればいいじゃん。
無理です。
5匹ぐらいいるせいで、途中で何体か木にぶつかっても、他の個体が俺のことを追ってくるし。
その間に木にぶつかったやつも復活して、なんかの探知能力か、テレパシーでもあるのかこちらに向かってくる。
この永久機関で、俺はもうずっと走り続けた。
流石に疲れた。
それに物音が大きすぎて、5匹以外のツノシシも惹きつけてしまう。
だから、もう止まって迎え打とう。
すると、俺を追っていていたツノシシは全てズザザザザと止まった。
そして、俺はツノシシの総数を確認する。
だいたい15匹くらいだった。
なんなんだこれは、クソゲーじゃないか。
倒せるわけねえだろ。
どうやってこの状況を切り抜ければいいんだ。
とりあえずコイツらの動向を探ろう。
すると、ある4匹を除いて残りの11匹がだんだんと突進準備を始めていた。
やばいやばいやばい。
今は最大限木に衝突させれるように頑張ろう。
そして、突進の連鎖が始まった………。
透『うわああ―! うわああ―! うわああ―!………。』
やばいやばすぎる。
だけど避けれないほどではない。
透『なん………とか………避け切れた。』
しかしこれでわかったことがある。
こちらを追ってくるというより、さっきまでいたところを狙ってくる。
あれだ。
前世で耳にしたことのある、シューティングゲーム?の 自機狙い というやつだろう。
なら避けること自体は簡単だろう。
それにこれなら一応倒しようがあるかも
しれない………。




