第一章28 見せかけ
第三階層階層主に敗れた俺は、どうやって勝つかを考えていたのだが……
《アラガウモノ》
追加効果
一度討伐したモンスターに対し、《アラガウモノ》を除いた全てのスキルの効果が失われる。
は?
どういうこと?
ちょっと前にこの世界はアニメのように、急にとてつもないスキルとかに目覚めて状況を打開する!
のようなことは起きない。
とか考えていた気がするのだが?
まあ確かに、状況を打開するようなスキルではないし、
それどころかかなり状況を悪化させるような効果が追加されたわけだが。
ていうかスキルが変化するなんてことあり得るの?
それもステータス測った後で。
測ったときにステータスとかスキルが変化するのは十分わかる。
だけど測った後に変化するなんて、明らかにおかしい。
だけどそんなことを言ってもギルドの人に言ったところで、信用してくれる人はいないだろう。
とりあえずこのことは今は考えないで、帰るのだった。
家にて
支配者『おかえり透君!どうだったんだい?新しい追加装備は?』
これが家に帰って来た俺に浴びせられた最初の言葉だった。
そして俺は今日の追加装備の活躍を思い出す。
やはり一番印象に残っているのは何よりその移動の心地よさだろう。
ずっと気持ち悪かった第三階層での移動がかなり快適になった。
これはとてもすごくて素晴らしいことだと思う。
透『はい、とてもいい追加装備でした!本当に助かりました!』
実際恐らく俺はこの追加装備がなければ第三階層階層主との戦いで、2体のときにすでに俺は詰んでいただろう。
そういえば支配者はこの防具に名前があるけど、それを言ったらネタバレになるとか言って教えてくれなかったな。
もうすでに使っているから今聞けば教えてくれるかも!
透『支配者!そういえば追加装備の名前ってなんていうんですか?』
支配者『ん?そういえばまだ君にはこの防具の名前を教えてなかったね。この防具の名前は泥速蜥蜴脚っていう名前なんだよ。』
リザードフッド……蜥蜴の脚。
か。
確かにその通りだな。
蜥蜴の皮膚を使って、第三階層の泥による、移動速度の鈍化を防ぐ足として利用してるわけだしな。
透『泥速蜥蜴脚……いい防具ですね!』
支配者『うんうん、そうだろう♪』
どうやら支配者はとてもご機嫌な様子だ。
そして俺は自室に戻った。
今はとりあえず《アラガウモノ》の効果追加については何も言わないでおこう。
無駄な心配をかけたくないしね。
まあ、いちおう一度倒した敵にスキルが使えなくなるというだけだしな。
第三階層階層主にはまだ使えるだろうし、とりあえず明日は第一階層のゴブリンあたりでちょっと試してみよう。
そう考えて俺は今日を終えるのだった。
朝
もう俺は支配者の家を出て、混沌の核に行っている。
ちなみにもうポーションは買っているので準備万端だ。
いつもならすぐに第三階層に行く。
だけど、昨日の《アラガウモノ》の追加効果がかなりの不安要素になっているので、とりあえずどれくらいスキルの効果を失われることがリスクなのかをたしかめるひつようがある。
だから俺はひとまず第一階層に行っている。
スライムではスキルの有無がほぼ関係ないから、この検証には不向き。
なので、俺はすぐに洞窟に行き、ゴブリンと戦うことにした。
とりあえず《筋力増加》をかけてみる。
おお、なんだ。全然スキルが発動しているじゃないか。
なら、
透『火素作成、付与、鉄火剣!』
なんだ、じゃあ昨日のあの追加効果はただの幻だったのか。
まあ、階層主戦で疲れていたししょうがないか。
あ、ゴブリンだ。
まあ、会ってしまったら仕方ない。
じゃあ、戦闘開始だ。
そして俺はいつも通り鉄火剣状態の剣で断火を使い、ゴブリンを切るか。
そして俺はゴブリンに切り掛かったのだが。
その瞬間。
あれ?急に俺の剣が失速した?
ていうか俺の剣、鉄火剣状態じゃない!?
俺の身体能力、というより、力がなくなったような?
だけど攻撃し始めてしまったものは仕方がない。
そのまま俺は攻撃したのだが。
ゴブリンは何故か俺の剣をその手に持つ手斧で受け止めた。
そして俺とゴブリンは互いに押し合う状態になる。
あれ?今の俺なら余裕でゴブリンには押し勝てるはずなんだけど?
どうやら互角くらいのようだ。
いや、わかった。
何故楽にゴブリンを押し切れないのか。
それは恐らく《アラガウモノ》の追加効果によるものだろう。
攻撃する直前のあの、脱力感。
何より、鉄火剣がシルバーメタルソードに戻っていた点から、おそらく俺のスキルとか、魔法とかが全部効果を失ったのだろう。
そうだとしたら先ほどの現象も説明できる。
ということは《アラガウモノ》の追加効果。
これはもう少しわかりやすくすると、
一度倒した敵に攻撃しようとすると、効果が失われるのだろう。
そして理解する。
なんのスキルの補助も受けない俺はただのゴブリンと同等の存在。
確かに威力上昇系スキルは
《コネクトスラッシュ》、《筋力増加》、《会心刺突》、《火素作成》
などの多くのスキルの補助があった。
今思えば、これらのスキルあっての俺だったんだ。
俺はそう自覚した。
だけど、負けるわけにはいかない。
いや、こんなところで負けるわけにはいかない。
俺のことを住ませてくれている支配者にはなるべく早く新しい素材を渡したい。
なるべく多く渡したい。
だからゴブリンに苦戦している暇じゃないんだ!
そして俺は押し合いをやめ、互いに距離をとる。
まだ俺は刺突の感覚は残っているはず。
だからあの時の感覚を思い出して、全力で!
踏み込め!
透『うおおおおおおおおおおおお!』
だが、結果は虚しく簡単に………ではないかもしれないがゴブリンに受け止められた。
そりゃ、衝撃波も出ないし、威力も精度も補正がかかっていないけどさ、受け止められると、かなりショック。
となると、最早刺突はするべきではない。
スライムの時もそうだったが、刺突系攻撃はスキルによる補正あってこそ成立する攻撃だったことを思い出した。
なので、そのような衝撃波などが必要ない、ただの斬撃こそが、今の幾星 透に許された攻撃方法なのだろう。
だけど、その斬撃だってゴブリンに受け止められてしまう。
ならどうすればいい?
いや、思い出せ。
この状況こそが、俺が越えるべき壁だろ。
スキルに助けられるだけじゃなくて、自分自身の技量、身体能力を鍛えて第三階層階層主に勝とう!というふうに考えていただろ!
なら、今が絶好のチャンスじゃないか。
そうして俺はゴブリン相手に全力で戦う。
くそ、全然攻撃が当たらない。
俺の剣を振る速度や威力補正がないからというのもわかるが、俺だってステータスが強化されたはずなんだけど。
まあ最初からステータスが基準値より低いというのは察していたけど。
ここまでとは思わないよね。
つまり俺が今勝てる方法はなんらかの方法で、技量を上げる。
これだけだろう。
ステータスは上がらないし、剣も変わらないからそれしかない、そこで成長するしかない。
まあ、《アラガウモノ》のことがあるからわからないが。
とにかく!そうしないといけない。
そう、思っていたのだが……
ゴブリンの仲間がよって来た。
ううん。
死なないと思うけど、ちょっと怖いんだよな。
今の俺には《ディフェンスレートアップ》が発動していないから、全部の攻撃を防ぎ切れるかが不安だ。
だとしても今は戦う必要がある。
そして俺は多少難易度が上がった戦闘を再開した。
キツい。
複数の手斧を捌き切るために、攻撃をすぐに弾かないと、その攻撃を防ぎ切れない。
とにかく一体でも倒せればかなり楽になるのだが。
どうすればいいのだろう?
今の俺は防御だけで手一杯、だから攻撃まで手が回らない。
だからといって逃げることもできない。
さっきみたいに自分の意思で逃げないのではなく、今はシンプルに周りを囲まれて、逃げられない。
防御できているのもほぼ奇跡のようなものである。
いつこの均衡が崩れるかわからない。
ていうか後一体でも増えた瞬間多分詰む。
いや、待てよ。
俺のDEFは117、今ならゴブリンの攻撃ならギリ受けても大丈夫なんじゃないか?
それに前とは違って、白ライトアーマーシリーズを俺は身につけている。
確かに攻撃力は上がっていなかったが、今まで数々の危機を救ってくれた白ライトアーマーシリーズなら信用できる。
あれ?じゃあシルバーメタルソードは?と思った皆さん、どうか俺に希望的観測をさせてください。
というか、これぐらいの冒険をしないで、安定作だけとっていると状況が停滞し続けてしまう。
なら、これぐらいのリスクは背負うべきだろう。
そして俺は次、というか防具で受け止められそうな攻撃が来るのを待つ。
数分後
来た!
そして俺はゴブリンによる攻撃を防具で受け止めた。
多少痛かったが、想定よりも痛くなかった。
そして俺は全力で剣を横に振り、数体のゴブリンのうち一体を潰すことに成功した。
そして俺はこの瞬間ゴブリンの攻撃ならギリ受け止められることがわかったので、それを多用し、このゴブリンとの乱戦を終わらせた。
透『はあー〜〜まじで疲れた』
本当に長かった。
まさかゴブリン相手にこんなにてこずるとは思っていなかった。
本当に想定外。
後、結構白ライトアーマーシリーズに傷がついちゃったな〜。
俺は申し訳なくなったので、いつもより多く白鉱石をとることにしよう。
第二階層に行くのはかなり危険だろう。
第一階層の時点でこれなんだ。
この状態で下に行くとか、完全に自殺行為だろう。
だから今日は第一階層でゴブリン相手に頑張ろう。
そして俺はゴブリンと結構戦った後、ギルドに戻るのだった。
戻って来た俺はすぐにステータスを測ってもらうことにした。
《アラガウモノ》の追加効果が消えていたりしないかな?
幾星 透
ステータス
レベル4
レベル上昇条件一撃で第三階層階層主を討伐せよ。
HP157→158
MP120=120
STR135→137
DEF117→125
AGI145→148
???75=75
武器スキル
《コネクトスラッシュ》
《会心刺突》
能力上昇スキル
《筋力増加》
《ディフェンスレートアップ》
常時発動スキル
《アラガウモノ》
追加効果
一度討伐したモンスターに対し、《アラガウモノ》を除いた全てのスキルの効果が失われる。
魔法
《火素作成》
《付与》
ああ………やっぱり消えないよね。
ていうかなんだこのステータスの伸びの悪さ。
確かにナディスさんが上がれば上がるほど上がりにくくなると思うよ。と言ってた気がする。
だとしてもこれは以上だと思う。
まさかこれも《アラガウモノ》のせいなのか?
いや、そうだろう。
今回の戦いで分かったのだが、俺はスキルがあるおかげである程度戦えたり、技を使えていたのだろう。
だが、今はその全てがなくなり、事実ただの素人に等しい。
故に素人が一人、我流で剣を振ってもあまり上手くならなかったり、変な癖がつくのと同じで、ステータスつまりは得られる有効な経験値が少なかったのだろう。
つまり、スキルは使えないしステータスの伸びも悪くなってしまった。
だから階層主とかに勝つのはかなり厳しいし、結構後になってしまいそうだ。
そんなことを思いながら俺は支配者の家に帰るのだった。
だが、そこで俺は思ってしまった。
いつも俺はもっとたくさんのドロップアイテム、素材を渡していた。
なのに今日は全然取れていない。
それどころか取れたものも、ゴブリンのドロップアイテムと白鉱石だけ。
こんなものでいいのだろうか?
そんなわけがない。
住ませてもらって、食べ物もわざわざ作ってくれて、防具も使わせてくれている。
そんな支配者にこの程度のドロップアイテムだけをはいどうぞと渡すなんて、最悪だ。
それにいつもより素材が少なかったら、支配者に心配をかけてしまうかもしれない。
なら、今ここで帰っていいわけがない。
もう一度。
もう一度混沌の核に舞い戻り、いつもと同じくらいの素材を手に入れないと俺は帰るわけにはいかない。
そして俺はもう一度混沌の核にいくのだった。




