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彼女との会話

 いざこざがあった土曜、日曜と過ぎ、月曜日がやってきた。朝が得意な桃華(とうか)はいつも通りに支度をし、いつもより早めに家を出た。いたずら心とはいえ、あんなことをしてしまい二人の仲を引き裂いてしまったことをもう一度ちゃんと彼女に謝りたいと思ったのだ。彼女がいつ登校するのか、もしかしたらショックで学校に来ないかもわからない。けれど行かなければ何も始まらない。千草(ちぐさ)との仲を取り戻すことは難しい。結構酷い別れを切り出したから。正直、どうしたら良いのかはわからない。謝って、何をしたらいい?千草の過去のことを話す?いや勝手に話すのはよくない。まず話し合いは二人でするのがいい。しかし、二人は二度と関わらないかもしれない。原因を作った私は何をすればいい?・・・私は、二人がどうなって欲しいのだろう?二人の最善はあれだったのかもしれない。余計なお節介かもしれない。学校が近づくにつれて桃華は段々不安になってきていた。最初はただ謝りたかっただけだった。しかし登校中、色々考えていたら、その謝罪すら彼女には余計なものかもしれないと、私がそもそもノイズかもしれないと思うようになった。

 そんなことを考えていると学校の門が見えてきて、頭が色々なことでいっぱいな桃華はとりあえず教室へ向かった。早く来過ぎたのか、教室には誰もいなかった。静かな一室が桃華の不安を煽った。ぽつんと一人。一応彼女が来ないか窓から門を見た。すると一人、門へ入ってくる女性がいた。見覚えがある。桃華はさっきまでの不安はどこかへ置いて行き、彼女が来るであろう下駄箱へと向かった。はあ、はあ、と息を切らし下駄箱へ着き、昇降口を見るとちょうど彼女が靴を履き替えているところだった。


「あ、あのっ」

「あー、どうも、、、」


声をかけると彼女はこちらを見て気まずそうにそう答えた。


「お時間ありますか。少しお話ししたくて」


先程、不安を置いてきた桃華は問いかけた。その問いに彼女は、いいですよ、と一言言い二人は場所を移した。

旧校舎一階、誰も来ることのない教室。気まずい空気と朝のすっきりとした空気が混ざり、変な感じだ。


「あ、えっと私千草の妹の美神(みかみ)桃華、二年です。先日はいたずら心とはいえあんなことをしてしまい本当にごめんなさい。許されないとわかっていても、ちゃんと謝りたくて」

「いえいえ、私が最初に勘違いしてしまったので謝らなくていいですよ。私、三年の花乃(かの)りずるっていいます」


あの時は取り乱していたからか、今は落ち着いていて、穏やかな雰囲気だ。軽く自己紹介をし、お互い綺麗な名前だ、かわいい声だと褒め合い始めた。少し話がずれたが本題に入った。


「本当はこういう話は兄とした方がいいのはわかっているんですが、それよりも傷つけてしまったことを早く謝りたくて」

「そうだったんですね、でも本当に大丈夫ですよ。千草とはあれから連絡は取ってないので多分、このまま終わりかなって」


寂しそうな声でそういう彼女の瞳は少し潤んでいる。それだけ好きだったのだろうか。そんな相手を振った兄を恨みつつ、彼女にどうしたいのかと尋ねた。


「正直やり直したいです。兄弟愛が強いのも驚きはしましたが、それでも、泣いちゃうくらいには好きなので」


泣いたんだ。彼のことを思いながら。どうにかしてあげたい。千草は多分、自分からは連絡を取ることはない。今までそうだったから。けれど相手から連絡が来たら返しはする。優しい人だから。


「まずは連絡をしてみましょう。ブロックはされてないはずです。そういう性格なので。りずるさんが押し続ければちぐ(にい)も答えてくれると思います」

「答えてくれますかね」

「きっといけますよ、私が保証します」

「分かりました」


そう言って彼女はスマホを取り出した。そんな時にチャイムが鳴ってしまい、二人は各々の教室へと戻らなければいけなくなってしまった。


「また話に来てもいいですか。兄のことは結構詳しいので」

「ぜひ。千草のこと、色々教えてください。もちろん本人が言っても良いと言ったことだけでいいので」


さっきまで生徒は桃華とりずるの二人だけだったが、気づいたら多くの生徒の話し声で騒がしくなっていた。ひとまず授業は真面目に受け、昼休みにまたここで集まろうと約束を交わした。

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