パーティーナイト その九
『神生ゲーム』。今話題のすごろくゲーム。今宵、美神家の四人兄弟である千草、桃華、紬希、兎作、そして母の冬柚が挑戦し、幼神期フェーズ、青年期フェーズが終わり現在このゲーム難所と言われる成神期フェーズへと舞台は移った。桃華と兎作が脱落した一ターン目、何事もなく終えた二ターン目、そして現在千草と紬希が脱落した三ターン目と舞台は移り、三ターン目最後のプレイヤーである冬柚のターンとなった。
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死者を司る神の元に一つの魂が迷い込んだ。体は保っておらず、もやもやとした形をしている。その魂は何かがぶつぶつと呟いていることに気づいたあなたは耳を傾ける。『—す…。——してやる。絶対許さない。痛い…痛いよ…。もうやだ…』始めは殺気めいていたが徐々に鼻を啜る音が聞こえ涙を流していることに気づく。さて、あなたの次の行動は?
『 回答を入力しろ 』
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なるほど、と冬柚は一拍置き考え込む。しかし他四名は状況が掴めず、呆然としている。どういうこと?、何がなるほどなの?、と冬柚を質問攻めにする。待って、と四人を落ち着かせ頭の中で整理がついたのか説明し始める。だが少し歯切れが悪そうに冬柚は、えっと、や、あのね、などモゴモゴしている。それに対し疑問が募る四人は心配そうに、純粋な眼で冬柚を見つめ、ようやく覚悟を決めたのか口を開ける。
「なるほど、って言ったことに対してはごめんだけど、まだ四人には話せない。でも、いつかは話すから待ってて欲しいな」
冬柚が何に対し納得行ったのか、それについてはまだ話せないらしい。何故、話せないのか。何時、話してくれるのか。わからないことだらけだけれど、四人は冬柚を母としても人としても信頼しているため、わかった、と一言頷いた。その応えに冬柚は安堵し、この問題の解説を始める。
「まずこの子は魂がふわふわ浮遊している状態だから、危険はないね。『絶対許さない』って言っている辺り、誰かに対して恨みがあるんだろうね。」
「でも泣いてるね」
解説というより状況説明をしている冬柚に兎作はそう声をかける。恨みはあるが涙を流している。一見、泣いていることを察す前に『痛い』と言っているため、痛みに対し泣いているのかと思えるが冬柚にはそうは見えないらしい。
「痛い、って言っているけど魂には痛みがないと思うから、それで泣いているとは思えないんだよね。痛みを思い出して泣いているって言われたらそれまでなんだけど」
半笑いしながらそう考察する冬柚は悲しそうな顔をしている。その感情は魂に対しての感情なのだろうか。
「この問題に関しては魂に聞いてみなきゃわからないね」
情報が少なすぎる、と言い回答スペースに文字を打ち始める。
『 魂を撫でる 』
四人に驚きと疑問が浮かぶ。話を聞くと言っていたはずなのに何故、そんな行動をするのか。答えは簡単。
「まずは落ち着かせないとね」
魂と言えど、元は人間。感情が荒ぶっている中、話を聞こうとすることは難しいだろう。なので体を持っている人間も落ち着く、撫でる、という行動に出たのだ。
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始めは『痛い』や『苦しい』など唸っていたが、撫でるうちに正気を取り戻していきポツリポツリと魂は話し始めた。
『優しい…。あなたは私の味方をしてくれるの?嬉しいな。あの人とは大違い。こんな風に撫でてくれたのなんて久しぶり。…痛いの。あの人の撫で方はとっても痛いの。だから私も撫で返したの。そしたらもう撫でてくれなくなったの。痛いの解放、って思ったのに…ずっと、ずぅーっと、痛いの…。』
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冬柚の思惑通り、魂は正気を取り戻し全員が聞きたいことを聞き出せた。結果、暴力を振るわれていた魂は相手に同じことをし、暴力から解放されたが古傷が痛んでいる、と推測できる。
「可哀想…辛かったんだね」
泣きそうな声で桃華がそう言うが、他の三人は不審点を持つ。
「でも、多分この魂は相手のこと殺しちゃったんだよね…?」
「明記されてはないけど、そうだと思う。撫でられなくなったって書いてあるし」
不穏な空気が場を包む。その空気を壊すように冬柚が口を開く。
「ゲームだからそんな気を落とさないで。とりあえず、この魂の願いを聞き出してみよう」
そう言い新たにでは入力画面に文字を入れ始める。
『 君はこれからどうしたい? 』
感情が落ち着いている今だから率直に聞ける。この魂は一体何を願い、何の為に死者を司る神の元へ来たのか。




