パーティーナイト その五
『神生ゲーム』。今話題のすごろくゲーム。今宵、美神家の四人兄弟である千草、桃華、紬希、兎作、そして母の冬柚が挑戦し、幼神期フェーズ、青年期フェーズが終わり現在このゲーム難所と言われる成神期フェーズへと舞台は移り、桃華のターンとなった。
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炎を司る神の神域で火災が起きました。炎の中には何万もの人たちが取り残されている。皆、助かりたい、ここから出たい、と願いながら必死にあなたに縋っている。この火災に事件性はなく事故だとわかる。さて、あなたの次の行動は?
一、炎を全て消火する
二、炎を弱める
三、干渉しない
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「全部消してあげたいけど、きっと干渉しすぎって言われるだろうな」
桃華はあまり迷っていないのか、ぽつりと呟いた。実際、神は人に干渉しすぎてはいけないとある。しかし、何万もの人たちは生きたいと願っている。そのため桃華は、炎を弱める、という選択肢を選んだ。画面には、炎が弱まる確率七割、という文字とルーレットが表示された。
「確率…?正解すればいいわけじゃないの?確率にも成功しなきゃいけないの?」
そう絶望する桃華に、問題に正解するだけじゃ正直覚えちゃえば簡単だもんね、と紬希は言う。
「まあ、言うて七割もあるし大丈夫だよ」
「フラグにしか聞こえない…」
そんなやりとりをし、ルーレットを回す。画面には『失敗』という文字が映された。
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失敗
あなたは火加減を間違え炎を強めてしまった。
その後、炎はおさまったものの多くの死傷者が出てしまった。あなたは加減ミスにより、罪のない人間たちの命を奪いました。それ相応の罰を受けてもらいます。
罰:人間堕ち
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見事なフラグ回収でもはや笑えてさえくる。
「綺麗なフラグ回収だね」
「桃華はエンターテイナーだよ」
笑いながら桃華を宥める。がっかりする桃華はもう一度画面を見るとエンディングが流れていた。その画面には神だった自分が焼かれ、人間へと姿を変えていた。そんなエンディングだった。
「炎で命を奪ったから焼かれて堕ちたのかな」
「え、それじゃ僕が堕ちるときはどうなるの」
桃華の考察に対し、動物の守護神の兎作はそんな疑問を持った。どうだろうね、と紬希は返し画面を見ると紬希のターンと書かれていたため、問題を読み始めた。
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海を司る神の神域で子供が一人溺れているのを発見した。ジタバタと暴れどんどん体力を失っていく子供。誰か助けて、そう願っている。周りに人影は見えず、子供を見ているのは海を司る神のみ。さて、あなたの次の行動は?
一、波で子供を岸へ運ぶ
二、海の生物を子供へ近づける
三、干渉しない
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少し難しい問題に全員が頭を捻っていると、リスキーすぎる、と言う声が聞こえた。隣を見ると紬希が何かをボソボソと言っている。
「海の生物は何かが明記されていないから最悪子供に怪我を負わせる可能性が。だからって見捨てるわけにもいかない。多分、一を選択してもとか姉と一緒でルーレットで成功か失敗かが決まる。ちっ、結局運ゲーじゃん」
紬希の独り言によれば一を選んでも二を選んでも運ゲーにしかならないとのこと。だとしたら、まだルーレットってわかってる一を選ぼう、そう呟き紬希は、波で子供を岸へ運ぶを選択した。予想通り画面には、波で岸へ運ぶ確率六割、という文字とルーレットが表示された。紬希は青年期フェーズで波を作ることにてこづっていたため、確率が少し下がっていた。しかし回すしかないのでルーレットを回す。画面には『成功』と書かれていた。
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成功
子供を運ぶにちょうど良い波を作ることに成功し、無事岸まで運ぶことができた。ここにはよく人が来る。そのうち子供は保護されるだろう。
子供は不思議な体験をしたと訴えるが、大人はそこまで気には留めなかったようだ。
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「よかった。成功したのもだけど、この子が子供だったのも大事な情報だったんだ。大人なら騒がれて面倒だったろうな」
無事、ルーレットにも問題にも成功しエンディングを回避することができた紬希。次は兎作のターンとなった。