6話目 お節介なおっさん6
職場には無理をいって早退させてもらい、急いで帰ると自宅の前におっさんがいた。
「ねえババア、ずっと家にいるんだからさ、ご飯くらい美味しいもの作ってよ?何のために家にいるの!。」
「…ごめんなさい。」
玄関を開けた瞬間、聞きなれた声で罵声が聞こえてきた、それは娘ゆかの声だった。それに対し今にも消え入りそうな声で妻のみゆきがなんとか返事を返す。私はこのあり得ない事態に意を決して中へと入っていった。
「ゆか!お前…なにしてるんだよ!」
急に入ってきた私に2人は驚きを隠せないでいた。しかし娘はすぐに平静を装い話し始める。
「あれ?お父さんこんな時間にどうしたの!?私達ちょっと喧嘩しちゃって、ねっ?お母さん。」
「え…ええ…。」
娘の言い方に圧を感じる、妻はその言葉に頷きながらも浮かない表情だった。
「ちょっとってゆかお前、声が玄関まで聞こえてたんだぞ?しかもお母さんにババアってなんだ!」
そう言って娘に詰め寄る。
「ごめんごめん、それは言いすぎたかも。」
謝るも少しヘラヘラした態度に私の熱があがる。
「何を笑ってるんだ!ちゃんと私じゃなくてお母さんに謝りなさい!!」
私がそう言うと娘の態度が一変した。
「何でよ!何で私だけが謝らないといけない訳!?悪いのはそこにいるなんの役にも立たないババアでしょ!」
これが本当に私の娘なのか?豹変した娘に戸惑う、しかし娘は更に捲し立てる。
「だってそうじゃん!私もお父さんも働いてるんだよ!?何で家事だけしかしてないババアが偉そうにしてるの!それしか出来ないならもっと頑張れよ!!」
「ごめんなさい…ごめんなさい!」
妻はその言葉を聞いて座り込み泣きながら謝り続ける。
パンッ
気付いたときには私は娘に平手打ちをしていた。一瞬その場の時間が止まる。だがそれも束の間。
「…はあ?何で?何でよ!?ああ、そっか。そうだよねいつもそう、他人に興味ないもんね?だから…だからお父さんは私の事なんてどうでもいいんだよ!ウウ…アアア゛ア゛!!悪くない!私は悪くない!!」
娘は叫び狂いテーブル上にある全てを床に叩きつける、私は止めようとしたが。
「こんな時だけ父親面するな!家のことも私の事もずっとほったらかし、もういい…いたくない、もうこんな所いたくない!」
そう言うと娘は自室に戻り、少しすると荷物を手に玄関へと向かう。泣き崩れる妻、そして呆然と立ち尽くしたままの私はそれをとめることが出来なかった。
そして娘のゆかは家を出ていった。