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幽霊鯨へようこそ  作者: 雪国氷花
第六章 ただいま
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第三節

 幽霊鯨、町上空を飛んでいると、大砲から、大量の魚雷が発射されてくる。

 ソナーの反応的に量が多過ぎて打ち落としきれない。


「悪い、リタ、落ちる」

「え、大丈夫なの」

「もともと、本体倒してこいって言われてるんだ。倒せば、操られたゾンビは無力化できるだろ。なら、片道切符で問題ないんじゃないか。あってるか、ドクトル」

「そうだけどさ、だって」

「じゃあ、背水の陣だな。……ならべく噴気孔(鼻)の近くで落とす。そっから、脳を目指す」

「噴気孔。宮殿の近くだね」

「そうだな」


 『プリンスィピアム』の住まいである宮殿は、噴気孔を囲むように作られている。

 珊瑚でできた真っ白な城が見えてきた。宮殿だ。

 ジーノは魚雷に追われつつ、宮殿のバルコニーに向かって、潜水艦ごと突っ込んだ。

 潜水艦は扉を破り、床を擦りながら、奥へ奥へと進んでいく。

 後ろから飛んできていた魚雷は、曲がることができず、バルコニーの床に当たり爆発した。

 バルコニーが壊れ、瓦礫に埋まっていく。


 ジーノは辺りが混乱状態である内に、潜水艦から顔を出すと、周囲を素早く確かめる。

 幸いにも、潜水艦は一部壁に埋まっており前の射線を気にする必要がなかった。

 後ろは現在進行中で瓦礫が埋まっており、潜水艦の付近も、壊れた天井で埋まってきていた。

 潜水艦は完全には埋まりきらず、遮蔽にはできそうと考えていると、右廊下から、ゾンビが見えて、素早く銃を撃った。

 辛草弾が命中し、ゾンビはその場で倒れ痙攣を起こす。

 それを見た他のゾンビが銃を構えてきたため、即座に潜水艦の中へと身を隠す。

 リロードしつつ、潜水艦のモニターを弄るが、カメラが死んでるようで、外の様子が見えない。


「瓦礫が落ちきるのを待つぞ」

「うん」


 しばらくすると、瓦礫が落ちる音が収まったが、ゾンビが近くにいるにも関わらず、他の音もしなかった。

 敵地であるにも関わらず、異様すぎる静けさ。


「囲まれているか」

「そうだと思う」


 と言いながら、リタが潜水艦から出ようとするので、ジーノは急いでリタを止めた。


「馬鹿、蜂の巣にされるぞ」

「わからないけど、たぶん、されないと思うよ」

「んなわけあるか。相手は銃持ちだぞ」

「そうだけど、構えてないもん」

「は?」

「なんかわからないけど、銃持ったまま、腕下ろしてる」

「なんでわかるんだ」


 リタはソナーを指差す。そこには幽霊鯨付近の潜水艦が大量に写っている。


「ソナーの音で、私には外の人の様子もわかってるよ。あの人達は撃つ意志がないと思う」

「そんなわけないだろ」


 とは言ったものの、ドクトルがリタを止めない時点で、外に出ても問題ないと判断していた。

 つまり、リタの能天気ではなく、本当にそう見えるということだ。


「俺が先に様子を見てくる」

「いいけど」


 ジーノが潜水艦から顔を出すと、本当にゾンビ達が、銃を下ろしていた。

 腕をだらりと下げ、撃つ意志を感じられない。

 あまりにも異様な光景に、ジーノが呆然とゾンビ達を見ていると、下からリタの声が聞こえてきた。


「ね、大丈夫でしょ」

「あ、ああ」

「私も外に出たいから、早く出てよ」

「……わかった」


 潜水艦から降りると、瓦礫を掻き分けて、ゾンビ達のところまで泳いでいった。

 ゾンビ達はジーノとリタが近くに来たにもかかわらず、腕を下ろしたまま何も動かない。


「どうしたの」

「……」

「ここで、何があったの」

「……」


 リタがしきりにゾンビに話しかけるが、返事はない。ゾンビは話せないので当然ではあるのだが。


「ドクトル、なんかこの状況に心当たりあるか」

「僕もわからないって」

「……不気味だが、とりあえず進むか」


 そういって足を動かした時、こつこつと何者かが、廊下を歩いてくる音が聞こえた。

 ジーノはリタの前に立ち、銃を構える。

 リタはジーノの後ろから何者かが来る様子を伺った。

 ぼんやりとシルエットが見え始めたとき、ジーノもリタも目を大きく開いた。


「ねえ、ジーノ」

「わかってる。……そうかもしれねえ」


 廊下の窓辺から、入ってくる光に照らされ、その姿は露になる。

 まっすぐなストレートのシルバー髪に、白いドレス。

 身長はリタよりちょっと大きいくらいなのに、どこか気高さを感じる美しさは、とても小さな少女には見えなかった。

 ヒレのような耳に、コバルト色の瞳。

 プリンスィピアムだった。


「お母さん」


 リタが近寄ろうとしたが、ジーノはリタを止めた。

 その瞳は浅海が明るい光に照らされているのにも関わらず、瞳孔が開いたままだった。


「リタ、あれはプリンスィピアム様だったかもしれないが、今は違う」


 リタもその言葉を理解できたようで、悲しそうにその場にとどまった。

 プリンスィピアムは、掌を二人に向かって見せると、指輪が光った。

 光はホログラムとなり、文字を映した。


お か え り な さ い


と。

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