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幽霊鯨へようこそ  作者: 雪国氷花
第五章 変わらないもの、変わり行くもの。思い出を抱いて
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第三節

 同じ日の午後、ジーノは潜水艦の格納庫へ向かうと、コルルがいた。


「コルル、大丈夫か」

「何が」

「いや、さっきぎゃん泣きしてただろ」

「はあ? してないし」

「してただろ」

「し・て・な・い」

「……してなかったな」


 聞いてはならないことだったようだ。


「ここで何してるんだ」

「新兵器の配備よ、ほらこれ」


 コルルが透明な銃を見せてきた。一瞬驚いたが、これは完璧におもちゃの水鉄砲だった。

 大きさはやや大型の水鉄砲だが、とても兵器には思えない。

 透明なボトルの中に真っ赤な液体が入っていること以外は、特に気になるところはない。


「なにこれ」

「新兵器だけど」

「新兵器? これが」

「馬鹿にしてない?」

「いや、そんなつもりでいったわけじゃないが」

「あんたはこれのやばさがわかってないようね」


 コルルはどこかから、スポイトを取り出すと、赤い液体を吸い込んだ。


「手を出しなさい」

「毒か」

「いいえ、違うわ、もっと恐ろしいやつよ」


 ジーノは嫌な予感がし、手を出さずにいると、勝手に掴まれ、手の甲に一滴赤い液体を垂らされた。

 刹那、ジーノは絶望する。

 たった一滴にも関わらず、手が震えた。

 穴が空いてしまったかのように痛い。

 コルルがすぐに液体を拭き取ると痛みは和らぐ。

 しかし、焼けるような痛みは残ったままだった。

 汗をかきながら、ジーノは聞く。


「これ、なんだよ」

「辛草だけど」

「辛草?、あのやばいスープのやつか」

「そう。あの殺戮料理よ。あれを食べた瞬間、殺戮兵器になると思ったわ。だから、濃縮して作ってやったよの」

「へえ」


 とんでもない発想に、ジーノは軽く引く。


「しかも、効き目は抜群よ。ほら」


 コルルが水鉄砲の引き金を押すと、その辺を歩いていた先生に命中する。

 先生は全身に痙攣を引き起こし、汗だくになって倒れた。

 しばらく、まともに動けそうにない。


「え、すげーな」

「脊髄反射で起こるから、脳の命令を無視できるわ」


 ゾンビを無力化する技術は浅海にはなかった。

 こんなギャグみたいな武器が本当に役に立つとは思ってなかった。


「ただ、弾速が遅いのと、射撃距離が短いのが傷ね。あんたの銃みたいにしてもよかったんだけど、量産が間に合わない。だから、こうなった」

「いや、十分使えそうだが」

「あと、はいこれ。あんたの分」


 渡されたのは弾薬ケースで、銃弾がびっしり詰まっている。


「これ、もしかして辛草弾」

「そう。あたしの手作りだから、大事に使いなさいよ」

「助かる」

「どういたしまして」

「今日は素直にお礼を言うんだな」


 コルルの顔が「はあ?」という怒りに変わる。


「失礼ね、あたしだって、言ったっていいじゃない!」


 びしばしとジーノの頭を触手で叩き始めた。

 クララに言われたことを気にかけているのだろうか。


「ああ、もう、慣れないことはするもんじゃないわ」

「いや、俺が悪かった」

「だよね」

「本当に素直だな」

「もういいわ。次々。あんたは何しに来たのよ」

「ああ、そうだった」


 そう言って潜水艦の上に乗る。


「点検とか、メンテとか」

「それなら、あたしとか、先生達にやらせてるけど」

「あ、そうだったのか」


 言われてみれば、格納庫には先生がよく歩いている。


「先生達も乗る予定だから、いろいろ全部見てるのよ」

「あー、なるほど」


 ドクトルが、リタに協力的になったことにより、先生はより自由に動かせるようになっていた。

 先生達を動かしているのはドクトル。

 そのため、ドクトルに言えば、先生はその通りの動きをしてくれる。


「まあ、一応、自分で見ておくよ。なにもしないのも疲れるし」


 ジーノが潜水艦の中に入り、機器を弄っていると、見慣れない機能がついていた。

 名前はソナー。

 ジーノはソナーを立ち上げてみると、モニターが一個写らなくなった代わりに、同心円を放つ画面に切り替わる。

 ちゃんと障害物を認識しているようで、画面にしっかり反映されている。

 ジーノは急いで潜水艦を出る。


「コルル、お前、潜水艦にソナーの機能をつけたのか」

「あー、つけたわ。なんかあんたが好きそうだったから」

「まじか、助かる」


 ジーノはこの上なく嬉しそうだった。


「そんなに、喜んでもらったらつけたかいがあるけれど、それ、本当にいる? 映像解析と電子技術の方が圧倒的に直感的でわかりやすいと思うんだけど。情報も速いし」

「俺もそう思うんだけど、なんか使いやすいんだよな」

「へー、よくわかんないけど、そうなのね。まあ、操縦士が使いやすいことに、こしたことないか。他にほしいのかある?」

「ないが、このソナーに撃墜した潜水艦を写さない機能とかついてないよな」

「そんなの私、知らないんだけど。浅海にはあんの」

「あるが、ゾンビ相手なら、邪魔だ。だから、なくてちょうどいい」

「そ、ならよかったわ。他は」

「ない。こいつがあれば、あとはどうだっていい」

「変わってるわね。あんた」


 コルルは不思議そうにジーノが乗った潜水艦を眺めていた。

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