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26.悪夢

 また、いつもの夢か。


 見慣れない風景に、カイはそう思った。


 目の前にはカイがへたり込んでいる。


 荒地で静かにカイを見下ろすと、アキラは厳かに言った。


『勇者カイよ、汝何故に我と我が同胞に刃を向けるか』


「知れたこと!」


 一歩踏み出すと、カイは高らかに答えた。


「勇者である私が魔王であるお前を倒すに理由がいるか!」


『愚かな』


 あくまで涼やかに、静かに笑うアキラの傍らで、マキは胸の前で手を組んで祈りを捧げて


いる。


「ご心配なく。私があなたを守ります」


「これで最後だ! 魔王!」


 大剣を空高く掲げたカイがアキラに襲い掛かった。






「……」


 船室のベッドの上で身を起こし、アキラは額を掌で覆った。


「……なんて夢だよ」


 カイが自分に襲い掛かってくる夢を見るのは初めてではないが、まさか自分の側にシスターがいる夢を見るとは。


「我ながら妄想満載で頭が痛くなる」


 ごそごそとベッドを抜け出す。本来、カイやアキラの手持ちの金銭では大部屋がぎりぎりのところだが、前もってフジから預かっていた「支度金」でアキラは個室を取った。


 岩山での野宿でも寝るときは別の洞穴を使っていたから、と強情を張っての行動だった。


 船上では逃げる場所もないと考えた為か、最後にはカイは渋々了承した。


 その様子が、本当に致し方ないという風情で、どこまで自分を監視したいのかとアキラは首をかしげたぐらいだ。


 何となく目が冴えたアキラは、夜の船内を歩いてみた。


 月灯りが差し込むとはいえ夜の海は昼の海とはまったく違う顔を見せる。


 肩に乗っていた黒猫が床に飛び降り、先導するように前を歩く。


 意外なほど強い月の光に誘われ、アキラは甲板へ足を延ばした。


 さっと視界が開ける。


 黒に近い紺青の夜空に、宝石のような輝きを持つ星々が瞬いている。


 一際強い光を放っているのはちょうど真上にある月。


「今日は満月か……」


「やはり魔王は満月に沸くのか」


「わっ!」


 ふいに肩越しにかけられた声にアキラは飛び上がった。


「なんだ?」


「ミユか、驚かすなよ……」


 毛布を肩にかけてきょとんとした顔をしているミユにアキラは小さく顔をしかめた。


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