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鑑定士は主役になれない  作者: 藤
プロローグ
9/53

ダイジェストでお送りします。


──フラウベルと別れ、この世界に降り立ってからのことはダイジェストでお送りしよう。

特に大きなイベントはなかったからな。


あの後気が付いたら俺はセラタスの大地にたっていた。


大量の町人に囲まれて。


何事かとビビッていると、一人の男(後で知ったことだが、この町の役人だった)が歩み出ていろいろと説明してくれた。


何やら彷徨人がこの世界に現れる時、巨大な光の柱が出現するらしい。そしてその光が消えた後に彷徨人の姿が残されるそうだ。

これ、何もしらない人達が見たら、英雄か何かが降臨したと勘違いされたのでは?


とか考えてたら、昔は本当に勘違いされていたらしい。

ただその勘違いされた中の一人が本当に英雄的な活躍したらしく、またある程度自分のような存在が現れた時のルールを制定してくれていたらしい。


なので街の住人としての登録と、しばらくの仮宿は提供されるから安心していいよとなった。

なんかこの世界至れり尽くせりでは? 先人のおかげではあるけれども。


ともあれ、特に苦労もなく異世界での戸籍?を手に入れた俺は、まずあることを行った。


所持品の売却だ。


住民登録した際に、支援金みたいなのの貸し出しとかあるのか聞いてみたところ、そんなものがなくても君たちには稼ぐ手段があるよと言われて紹介されたのが町の商人だった。

働かざるもの食うべからずということかと思ったらそういうことではないらしい。


どうやら彷徨人として出現した存在の持ち物は、高値で買い取りがなされているらしい。

まぁこの世界に存在しないようなものが多いだろうし、単純に「異世界から来た物」というだけで価値が付くのだろう。


どうせ戻れることがないなら残すこともないかと考え(そもそも手持ちのものも少なかったので)俺はパンツを除いてすべてを売り払うことにした(さすがに履いていた下着を人の手に渡すのは躊躇したので……)


スーツ、革靴、ワイシャツ、靴下(これも躊躇したが最終的に売った)、スマホ(壊れたのか電源は入らなかった。入ってもカメラくらいしか使えない気がするが)、イヤホン、財布とその中に入っていた紙幣硬貨カードetc……


その結果、贅沢をしなければ数年充分に暮らせるという額になった。特にスマホと免許証が高く売れた。

参考にいくらくらいで好事家に売れるのかと聞いたらにっこり笑顔だけ返された。ハイソウデスネ。


ああ、あと驚いた点が一つ。

この世界、カメラが存在していた。もちろん最新鋭のものではなくピンホールカメラのようなものだったが。この世界で普通に発明されたのかもしれないし、彷徨人の誰かが教えたのかもしれない。

商人の所で所持品を売却した後、そのピンホールカメラを利用して数枚写真を撮られた。何に使うのかといったら商品と並べて使うといわれてちょっとアレな気分になったのは秘密だ。


ともあれ、戸籍と住居、当面の資金はさして苦労もせず手に入れた。案外この世界の生活ちょろいのでは?と一瞬考えてしまったが、冷静に考えれば戸籍以外は時限付きだ。何もせずに遊んで暮らせば数年後には地獄が待っている。


何にしろとりあえずの足場は整った。となれば次にやることは一つ。

情報収集だ。

フラウベル嬢にいろいろ教えてもらってはいたが、時間制限があったせいでまだまだ足りていない。

とりあえずはこの街で集めるだけ集めようと、いろいろ手続きが終わってから数日間ひたすら情報収集にひた走った。

この世界のこと、この町のこと、スキルのこと。

特に最重要としたのはスキルのことだった、が。


まず鑑定士に関してだがマジで資料がない!


どうやらそもそも祝福を受ける絶対数が少ない上に、最初からツリー上に見えているスキルは戦闘能力があるように見えない(実際ない)。

彷徨人以外には俺がもらった初期ポイントが存在しないようで(途中参加者へのボーナスみたいなものなんだろうか)、怪物を倒すという入手方法から生身での戦闘能力を上げる必要があるため鑑定士でなくともスキル取得を目指さない場合は多い。そのうえ鍛えてなんとかポイントゲットしても戦闘能力に関して未来がない可能性が高いため(スキルがないとどんだけ生身を鍛えても戦闘系は絶望らしい)、自分が鑑定士だとしった時点で諦めるものが大半のようだ。

そのうえでまだ諦めない人間がいたとしても、身を護る手段も少ないため、入手のために命を落とすこともあるだろう。そう考えるとまぁまともにスキルを取得人間はほとんどいないだろう。ついでにいえば、その極一部の取得した人間がいても、その情報を記録に残すとは限らないわけだ。


これでスキルを上げるために必要な神血の欠片が流通していれば金を溜めて頑張って購入する、という手法もあるのだろうが、レアどころか流通としては全くの0だ。


その理由を見つけた時、思わず呻き声が出てしまった。


どうやらこの神血の欠片、何かしらの生物に結び付いていないと形状が維持されないらしい。

怪物でも動物でも植物でも、その宿主と切り離されるとものの数分で大気に溶けるように消えてしまう。

そのため、基本的にはその場にいないと摂取できない。


これを知った時、これスキルの習得はあきらめた方がいいのでは?と思わなかったわけでもない。

ただ戸籍と住居はいただいたとはいえ、この世界で深いつながりを持つ人間がいるわけでもなく、目立った取り柄がない人間が上手く暮らしていくには、やはりこの力は欲しい。戦闘能力はないにしても商人としてやっていくにはかなり有効なスキルが存在する可能性は低くはないはずだ。


それにだ。


折角の異世界で、しかもこんなわかりやすいスキルのルールが存在するのだ。ゲームや小説をそれなりにたしなんできた人間なら、どうしたって使いたくなるだろうこんなの。


いつまでも夢を追っていないでどこかで現実見ないといけないタイミングは来るかもしれないが、少なくとも現状は生活に不安もなく余裕がある。


「ある程度は追ってみるべきだよな」


世界を救えだの魔王を倒せだのそういった使命は特に与えられていない。俺がどんな選択をしようと困るのは俺一人だけだ。諦めようと思えばいつだって諦められる。

だったらやってみましょういけるとこまで。


俺が鑑定士のスキルを解き明かせてみせよう!(できれば)


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