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鑑定士は主役になれない  作者: 藤
プロローグ
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案内人と彷徨人③


結論からいうと、自分が遠い異国に引っ越したと考えるようにしたら大分落ち着いた。

単純に会えないだけで、皆まだ生きている。同じようで死別とはだいぶ違う。

多少無理やり納得した感じもあるが、嘆こうがどうしようがどうにもならないのだろう。


「すみません、お待たせしました」

「いえ……当然のことだと思いますので」


それでも軽く一時間くらいはたってから、ようやく彼女に声をかけると(名前を聞いてなかったので「おーい」みたいな感じになってしまったが……)確かに聞こえたらしく、すぐに彼女はまたふわふわと浮かびながら戻ってきた。


力なく笑みを浮かべている彼女は、きっとこの反応には慣れているのだろう。半狂乱になる人間もいたはずだ。そう考えると対人関係に割と冷めていた自分に、少し感謝してもいいかもしれない。

まだ会ったばかりだが、少なくとも好意的な相手に、あまりつらそうな顔をして欲しくない。気分を変えるためにも話を進めてもらった方がいいだろう。


「とりあえず、落ち着いきました。続きを頼んでいいですか?」


ええ、とうなずいて、彼女は再び正面の椅子に腰を下ろす。


「それでは……この世界のことと、貴方のこれからに関してお話しします。そこまで差し迫っていないとは時間は有限ですのですべてを語ることはできませんが」

「有限?どういうことです?」


まぁいつまでも迷子の相手をしている暇は確かにないかもしれないが。


「まずですね。ここは世界の狭間のような場所で、セラトス……その本来の大地とは異なる場所にあるんです」

「あー、神界みたいな?」

「私は神ではなく案内人みたいなものですし、この世界における神と呼ばれる存在は、こういった場所にいたわけではなく普通に大地で暮らしていたとされますが……まぁ現在の人の生きる場所と異なるところと理解していただければ」

「……わかりました」


今出てきたこと、世界設定にいろいろ関わってそうだし細かく聞いておきたいところだが……先ほどの彼女の言葉を聞く限りあまり脱線させると重要な話を聞き逃しそうだ。


「本来はあなたのような彷徨人はそのままセラトスの大地に現れるのです。それを私の力で感知して引き寄せたのがここなんです」


「いうなれば、無理やりここに一時滞在いていただいている形になります」

「なんでそんなことを……?」

「言葉も通じず、見知らぬ場所に投げ出されるのはあまりに酷すぎるでしょう。あなたは新たなこの世界の住人にです。できることは限られますが、最低限の支援くらいはしたいのです」

「あなたが女神か」


思わず手を合わせて拝んでしまうと彼女はわたわたと手を振る。さっきも言ったとおり外見も女神のように美しい彼女だがときどきやたら可愛いしぐさをするのでなんというか……いいよね?


「やめてくださいやめてください!それに多分これが"案内人"として私に与えられた使命なんだと思いますし!」

「使命でもなんでもしてくれてることは女神様ですしはい」

「あー……うー……」


やべぇめっちゃかわええ。スマホで写真撮りたいけどさすがに失礼か。


って、ん?


彼女の可愛さに木を取られていたが、気になることを言ったな?


「言葉が通じない……?」


今めっちゃ話せてるぞ?


「……ええ、はい。あなたのいた世界とこの世界では当然言語体系が違います。言葉は通じません」

「それじゃ、今通じているのは?」

「あなたに『言語翻訳』というスキルを与えました。私が持つ……セトラスの民風に言えば、"権能"の一つになりますね」


おおうスキル!ファンタジー系のノベルやゲームにある程度手を出していた身としてはちょっと気になるキーワードですよ!そして言語翻訳!ノベル系だとよく見るやつ!ということは


「頭の中のイメージを直接伝える的な?」

「いえ、貴方が聞こえたものや目にしたものが自動的にあなたの世界の言葉に変換され、逆に発した言葉は声に出した瞬間セトラスで幅広く使われている公用語に変換される形ですね。流石に書くときは自動変換はされませんが」


……なんか最先端の翻訳機みたいな効果だった……


「なので、あまり利用者のいない言葉とかだと翻訳できません。お気をつけて」


いよいよ翻訳機くせぇー!


「ということは、今も貴方はこの世界の言葉でしゃべっている?」

「はい」


そういえば、さっきから喋ってる時に若干の違和感を感じていたんだがこれか。彼女の口の動きと、実際発せられる言葉がいまいちあってなくて質の悪い口パクでもみてる感じなんだ。


ふむ。

ふと思い立ったので聞いてみた。


「この『言語翻訳』ってスキル、オンオフ可能ですか?」

「できますよ。頭の中でスキル呼び出してください」

「どうやって」

「なんとなくで大丈夫です」

「そんなアバウトな……あ」


できた。頭の中にスキルリストみたいなのが浮かんできた。いいのかこんなんで異世界。


「おそらく神代の世の神々たちが、自分たちが残したスキルを後世の存在達に使えるようプログラミングしたものが、祝福とともにインストールされるようになっているのだと思います」


俺の怪訝な顔から察したのだろう、彼女が説明してくる。ただその説明セリフの中にファンタジーらしくないキーワードがあったような……いや、これもスキルの効果でわかりやすいように変換されているだけか。


謎過ぎる技術ではあるが、深く考えるのはやめよう。ここは俺の知らない世界だ。俺の……いや、地球の常識は通用しないと考えておくべきだろう。


「このスキルをオフにしようと意識をすればオフにできますよ」


さっそくやってみた。


おおう……確かに口の動きと言葉は一致したけど何言ってるか全くわかんねぇー

意思の疎通が全く不可能となったので即座にスキルをオンに戻す。


「どうでした?」

「いやー、このスキルなしだったら酷いことになってたのは理解した。やはりあなたは女神様です」

「やめてくださいよぅ」


可愛い反応されるとついいじりたくなっちゃうからやめてください。でもやめないで。

複雑な感情で彼女を見ていると彼女は一つ咳払いをし


「少し言葉の話で長くなりましたが丁度スキルの話も出ましたし、次はスキルについてご説明しましょうか。」



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