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鑑定士は主役になれない  作者: 藤
プロローグ
4/53

案内人と彷徨人②

まず最初に教えてくれたのはもちろん俺自身がどうなったかということだった。


「元の世界から弾きだされた……?」

「はい。そうなります」


彼女の話によると、非常に低い確率(それこそ数億分の一くらい)であるが"生まれる世界を誤って"その世界に誕生してしまうことがあるらしい。それは外見とか能力的ではなく、波長というかそんな感じのなんだかアバウトなものらしいが──その誤って産まれた存在は無事その世界で生涯を終えることもあるらしいが、あくまでその世界では"異物"のため、なんからのきっかけで世界から文字通り弾きだされてしまうことがあるそうだ。


え、そのきっかけって俺の場合トラックに撥ねられたこと? 物理的な話?


弾きだされた存在は、大抵は本来生まれるべきだった世界に引き寄せられるらしいが、運が悪いと世界と世界の狭間を延々と漂流することもある、らしい。


「あなたが元の世界を弾きだされた理由は私にはわかりませんが……こちらの世界にたどり着いていただけて良かったです」

「いやマジで……ありがたやありがたや」

「いや私も何もしてないし拝むのはやめてくださいよ!?」


狭間を漂流がどんな状態なのかいまいち想像はつかないがろくでもない状態なのは確かだろう。これに関しては本気でありがとうである。


しかしこの子さっきまでは神々しさもを感じるくらいだったのに、いざ語りだすと表情はよく動くし身振り手振りも大きくて、むしろかわいらしく見えてきた。あっちの世界でYoutuberでもやってたら推しにしていたかもしれない。


ちなみにこの世界では俺のような存在を彷徨人というらしい。

その数はごく少数ではあるが数年に一人の頻度くらいではあるそうで、おそらく俺と同郷……地球人もいたとのこと。もしかしたら会うこともあるかもしれませんねと彼女は笑った。


だがその後、帰る方法はあるのかと問いかけたところ、その笑顔はまたたくまに曇った。


「元の世界への帰還は……不可能です。世界を渡る手法は私の知る限りありませんし、この世界に来た人が元の世界へ帰った話もの観測していません」


それに、と言いにくそうに、だが彼女は続ける。


「酷い言い方になりますが。あなたは元の世界に排斥されたといえます。ですので……」

「ああ……まあそうですね」

"異物"として元の世界から弾きだされたのだ。もし戻る方法があっても門前払いのようなことになるのは想像に難くない。


そうか。帰れないのか。


会社の同僚や学生時代の友人、家族の姿が次々と浮かんでは消える。


もう会えないのか。


自分には恋人や妻、子供はいない。残してきたことを心配する必要はない。

だが、それでも。そこまで強いつながりがなかったとしても。

もう二度と会えないということは心を少々きしませた。


「そうか……」


仲の良かった叔父と死別した時の感覚に近いのだろうか。

なんだかごちゃごちゃになってきてよくわからない。


「あの……」


彼女が声をかけてくる。


「少し休憩にいたしましょうか」

「そうですね……少し時間を貰っていいですか」


こくりとうなずき


「少し私は席を外しますので落ち着いたら声をかけてください。姿が見えなくても届きますので」


そういって席を立つと、ふよふよとどこかへと去っていった。

その彼女の背中に頭を下げ、そして、俺は──

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