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鑑定士は主役になれない  作者: 藤
プロローグ
2/53

悲しみのレアクラス


なんとか生き延びてからしばらく。

全力で走りつづけた疲れと、落ち着いたことによって浮かび上がってきてしまった恐怖心によって暫く動けないでいたが、水浸しのままでは風邪をひく。

幸い今は夏だ。日差しも強いからすぐ乾くだろうと服を脱ぎ、そこら辺に引っ掛ける。真っ裸になったが、このあたりにはまず人はこないはず。もしうら若き乙女とか来ちゃった場合は──ごめんなさいしよう。


念のためもう一度【危険鑑定LV1】を使ったが、周囲に危険の気配はなかった。


まぁ、ここはあの狼もどき達のテリトリー外だ。あいつらがテリトリー外まで来て獲物を襲うことはほぼないとあったし、大丈夫だろう。

逆に言えば、先ほどの俺は奴らのテリトリーに踏み込んでいたわけで、要するに襲われたのは完全に自業自得である。あの爆音他の動物たちも驚いただろうし森を騒がせてごめんなさい。


だがまぁ……目的は果たした。


戦闘に使えるスキルが一個もない状況でよくやったもんだと自分でも思う。

俺の使えるスキルは現状以下の3つだ。


①危険鑑定

さっきから散々使い倒しているが

多分今覚えているスキルで一番有用で生命線といえるスキルだ。

一定範囲内の危険な生物を感知するスキル(人間とか害のない小動物とかは感知されないのでどういう判定しているのか謎だが、元は神の力ということだし、そもそも別の世界なので自分の世界の基準で考えてはいけないと強引に納得した)で、これがなければ俺は間違いなくこんな森の中の探索など行えないだろう。


②植物鑑定

これも今の時点では助かっているスキルだ。

鑑定できる内容はその植物が食えるかという品質、品質のゲージが高いとその植物として質が高いということで甘かったり美味かったりする。

ただまぁこのあたり、経験を積めばスキルなんかなくても目利きできそうなのが悲しい所だが。

最もこのスキルがあるおかげで今回目的物が見つけられたので俺には必要なスキルといえる。


③能力鑑定

現時点では間違いなくクソスキル。

何せ鑑定できるのは相手の体型とすごく大雑把な生命力のみ。体型なんざ見ればわかるし、生命力が分かったところでどうしようもない。


とまぁこんな感じで、逃げること以外に危険に対して役に立ちそうなスキルが一つもない。

そして将来的にもわりとこの件に関しては絶望的な気がしている。


この世界でのスキルは先ほど言った通り、祝福を受けた対象の神によって系統が決まる。変更は不可だ、

俺の祝福はアマテという神。その力の内容から呼ばれるクラスの名は『鑑定士』だ。名前と初期スキルから見て、レベルが上がっても戦闘系スキルを覚える可能性は低い。


そう。

可能性、なのである。

この先取得できるスキルが不明なのだ。スキルツリーで現在取得できないスキルが見れないのはまだいい。問題は、スキルに関する情報が全くないのだ。

例えば祝福を受ける人間の数がトップクラスの、サウザリオンという神の祝福を受けたクラス『魔術士』はこんなことはない。流石に最上位スキルになると情報が少ないらしいが、大体のスキルツリーとその効果は判明している。

では何故かといえば理由は単純。『鑑定士』は絶対数の少ないレアスキルなのだ。


ここで悲しい勘違いをしてはいけないのが、レアスキルだからといって強いというわけではないのである。

この世界の祝福を受ける数の割合は、元の神様の強さがベースになっているらしい。

ようするに前述のサウザリオンは非常に強い神で

俺の祝福元であるアマテは非常に弱い神だったということだ。


ただじゃあレアクラスは弱いのかといえばそうでもない。もともとは弱体化しているであろうが神の力だ、便利なのは間違いない(ただし【能力感知LV1】、テメーはだめだ)。


レアクラスとはいえ、過去に俺一人しかいなかったわけでは当然ないので、本来はさすがにもう少し情報があってもおかしくないはずなのだが──ここで、俺が危険を冒してまであの森に向かった目的がかかわってくる。


さぁここで問題だ。

スキルのレベルあげや新規取得するためにはどうすればいいと思う?


スキルを使いまくって熟練度を上げる?

この世界のスキルに熟練度なんてものはない。ただ使いまくっても疲れるだけだ。


クエストを攻略しまくって冒険者Pをためて、協会で上げてもらう?

俺が知る限りそんな協会は存在しない。


モンスターを倒して取得した経験値であげる?

かなり近いがちょっと違う。


正解は「神の力が宿ったレアアイテムを喰う」でした。

「神血の欠片」と呼ばれるアイテム(実際に血というわけではなく、単純に赤いからそう呼ばれているらしい)を文字通り食べて摂取することでスキルに必要なポイントをゲットできるので、あとはそれを任意に割り振ってスキルを取得していく。


世界観はどちらかというとラノベ系ファンタジーなのに、なんでここだけえらくゲームくさいのか……


まぁいい。

このアイテムの入手が曲者で、とある理由から街で買うとか人に譲ってもらうとかは無理。よほど財力があるとか、すごいお人よしの友人がいるとかでない限り自分で取りに行くしかない。

で、取りに来た結果が先ほどの有様である。カッコよくモンスターを倒すわけでもなくただの獣から逃げ回るだけで、最後は泉へとダイブ。そして今の姿は全裸である。格好つかないことこのうえない。


「でもまぁ大勝利だよな」


どうせ誰も見ていないんだ、格好良さなんざどうでもいい。怪我も今の所していない感じだし、結果だけみれば大成功だろう。


空を見上げる。別に"彼女"はそっち側にいるわけでもなかろうが、まぁなんとなくだ。

拳を突き上げ、まずは最初に世話になった彼女に報告しよう。


「やってやったぜ女神様」


おっと、違いますうって幻聴が聞こえてきたぜ。



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