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鑑定士は主役になれない  作者: 藤
プロローグ
1/53

スキルはとても便利です。

スキルというものがある。

ゲームやマンガなどでよく見かけるソレだ。この世界の場合は遥か昔に滅んだ神が残した祝福だと

されており、この世界に生まれてくるすべての人間にその才能は与えられる。

ただしスキルの系統は祝福の元となる神によって生まれる時に決まっており、選択することはできない。

それは、この世界の"途中参加組"である、俺も一緒だ。


「レアクラスだってんだから普通は無双できるもんじゃねぇのかなぁ!」


生い茂ったが空を覆い隠し、薄暗さも感じる森の中を全力疾走しながら、思わず愚痴が叫びになる。

少し後方からは複数の獣の声。やべぇやべゃべぇさっきより近い!ていうか大きな声上げちゃだめだろ、俺!


【危険鑑定LV1】!


スキルの使用方法は簡単だ。頭の中でどのスキルを使うかを念じればスキルは発動する。

スキルの効果で獣たちの位置を認識!ほぼ後方100mくらい!


相対速度を考えると俺の足で逃げ切るのは無理だ。何よりもう息が切れ始めている。こっちにきてから体を鍛え始めてはいるがたかだか100日ちょっとで大きく成長できるなら世の中みんな陸上選手だ。


覚悟を決めるしかない。


俺は走りながら腰の革袋の中に手を突っ込むと取り出したものを耳に当て、足を止めて振り返る。

目的の場所まではもう少し。一度相手をかく乱できれば後は逃げ切れるはず!


木々の隙間からこちらに駆けてくる姿が見える。狼のような獣。

恐怖か心臓が高鳴るが、パニックはなっていない。これまで何度か危険な目にあったことが生きている。

残り距離50m……40……30……いまだ!

「くらいやがれ!」

俺は革袋の中から取り出したもののセーフティとなる金具を外すと、獣たちの方に投げつけて背を向け、耳をふさぐ。

ぶっちゃけ変な方に投げててしくじってたら一貫の終わりだが、背中向けてなくってもこのままだと結局一貫の終わりだ、問題ない。いやあるけどどうしようもない。


次の瞬間。後方で爆音が響いた。


耳栓した上で耳をふさいでも轟く音だ。なんの対策もせずに聞けばたまらないだろう。

そしてここに来る前にあいつらが大きな音に弱いのは調査済み!そのために持ってきたとっておきだ。

奴らはこれでしばらく動けないはずだ。あれわりかし高かったんだぞ、そうであってくれ!


後方は確認せず走り出し、再度【危険鑑定LV1】。よし、連中はさっきの位置から動いてない!

心臓が鼓動で張り裂けそうだが後少し……見えた!


前方で森が開け、明るくなる。というか地面もなくなる。崖だ。高さ10m前後なのは確認済み。あとは覚悟を決めるだけ!

「おらぁーーーーーーーーー!」

ちゃんと足から落ちるように体勢を意識して、空中に大きく飛び出す!


一瞬の浮遊感、落下する感覚、そして


着水!


俺の体は崖下に広がっていた泉に、奇麗に沈み込む。腹からビターンなんてことにならずに幸いだ。

水底がみえるあたりまで沈み込んだあと、慌てて逃げていく魚たちを横目にみつつ、水を掻いて水面に浮かび上がる。


「ぷあっ!」


まだ安心するには早い、【危険感知LV1】!


獣たちはまだ先ほどの辺りにいた。思ったよりショックが長引いているようだ。

ゆっくりと岸の方へ泳ぎながら、息をひそめる。


──数分くらいたっただろうか。


獣たちはこちらを見失ったのだろう。しばらくうろうろした後危険感知の範囲外へ立ち去って行った。

辿りついた湖岸に仰向けになって身を投げ出しながら、両手でガッツポーズをする。


「大・勝・利!」


逃げ切り勝ちだけどな。



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