放課後、家に帰ったら天使がいた。
ふと思いついた短編をどうぞ
「ああー、今日も疲れた…」
俺は仲真切嗣、どこにでもいる普通の男子高校生(16歳)だ。
高校生というものは疲れる。とは言っても悪い意味ではない。友達だっているし好きな授業なら楽しいとさえ思える。もちろん印象良くない奴だっているし教師にもいい人悪い人がいる。
まあ有り体に言えば感性は人それぞれってことだ。
ただ普通に過ごしているだけでも体力は消耗していくものだし、これで働き出した後のことも考えるとさらに億劫である。
そしてそんな俺は授業が終わり次第早々に帰宅する。友達は部活やってるしバイトも今日は休み、つまりは久しぶりになにも予定がないまっさらな時間なのだ。こういう日は家でゆったり寝るに限る。勉強?知るかそんなもん。俺は寝ると言ったら寝るんだ。
寄り道もせずに歩いていくと自分の城、もとい俺が住んでいるアパートに着いた。今通っている高校が実家とかなり距離があるため一人暮らしをしている。俺は近くの高校でもよかったのだが、多少距離があってももっといいとこ行きなさいと言われたので今の高校に通っている。本当、親には頭が上がらない。
この恩は必ず返そう、いつかね。
カバンから鍵をとりだし、ドアの鍵を開ける。そういえば、冷蔵庫に何かあったっけな…と考えながらも家に入ることにする。なかったらなかったで何か買いに行けばいいしね。
というわけで…
ガチャッ
「ただいまー!帰ってきたぞマイホーム!」
おかえりなんて帰ってくるわけでもないのにただいまと言ってみる。まあこういうのは気分なんですよ気分。ついでに言えばここは借家であってマイホームではないので深く突っ込まないでください。
「あ!お帰りなさい!」
バタンッ!!
「…………。」
待て待て待て待て待て待て待て待て待て。
ちょっと待ていや落ち着け俺今なにが起こったのか状況を把握するのが先決だいやちょっと待ってなんでなんでなんで???
頭ん中ぐっちゃぐちゃになりそうだけどひとまず深呼吸してと……。
ここで今に至るまでの流れを整理すると、
学校が終わり、意気揚々と帰宅する。
↓
冷蔵庫の中考えながら家のドアを開ける。
↓
金髪美少女が出迎えてくれた。
↓
思わずドアを閉めて慌てふためいている。←イマココ‼︎
「いや、さっぱりわからん…」
部屋番を間違えた?いや、鍵は合ってたし、どっからどうみても俺の住む場所だ。
それじゃ実家からの刺客?いや、それなら俺も以前に会ってたっておかしくはない。あの人は完全に初対面だ。
もしかして、空き巣?でも空き巣がおかえりなんて言うか?
結局どれだけ考えても答えなんて出やしなかった。
もしかしたら俺は本当に疲れているのかもしれない。それで幻覚なんて見ちゃったんだ!ハハッ…笑えねえ冗談だよ…。
「とりあえず家に入るか…。もしかしたら本当に幻覚かもしれないし」
あれこれ考えても仕方ないので家に入ることにした。
どうか誰もいませんように…。
ガチャッ
「おかえりなさい!もうっ、いきなりドアを閉めるなんてどうしたんですか一体?」
「やっぱりまだいたあああああああああああああ!!?」
拝啓、お父さん、お母さん。
お元気ですか?
あなた方の息子は今、幻覚が見えてます。
助けてください。
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「今日も学校お疲れ様でした!冷たい麦茶でもどうぞ!」
「あ、ありがとう…」
結局俺は目の前のこの美少女に連れられ、なんとか帰宅することができたのである。
というか幻覚じゃなくてリアルだった。
手、柔らかかったなあ…。
お茶を一飲みしてから目の前の美少女を眺めてみる。
綺麗な金髪に映える碧眼、白のワンピースが滅茶苦茶似合う日本中探しても10人いるかどうかの絶世の美少女である。
そのクリっとした碧眼でこちらを眺めてて俺と目が合えばニコッと笑顔を返してくれる。天使かこの娘。
「な、なあ、ちょっといいか…?」
「はい!なんでしょうか?」
「君って何者…?どっからきて、どうやってこの部屋に入ってきた…?」
「………」
あれ?急に黙り込んだぞ?
もしかして聞いちゃいけないことだった?いやでも、色々聞いておかないと俺も困るし、ここは心を鬼にして…。
「…ご、」
「ご?」
「ご、ごめんなさい!そうですよね!私がいきなり訪ねちゃったからキリツグくん混乱しちゃいますよね!なんの説明もなしにズケズケと人様の家に上がり込んで奥さん面しちゃってごめんなさい!」
「お、奥さん面って…。とりあえずこれから説明してくれればそれでいいから。ってそういえばなんで俺の名前…?」
「あ、はい!そうですね、その件も含めて今からお話し致しますね」
深呼吸をしてから真面目な顔つきに変わる。
一目見た時から可愛いとは思っていたけどこうして真面目に話す時もめっちゃ可愛い。
「まず初めに私は天使ミカエル。家の事情でこの度、人間界に過ごすためにキリツグくんに居候をさせていただきたく…」
「ちょっと待って、初っ端から情報量が多くて混乱してる」
「?わかりました」
天使?今天使って言ったこの娘?比喩表現とかではなくガチ天使?いやー、まさかそんな…。
それとなに、ISOUROU?こんな美少女と一つ屋根の下であんなこと(結婚)やこんなこと(marriage)をするの?(しません)
だめだ、混乱するから一つずつ聞いていこう。
「えーっと、ミカエルさん?まず天使っていうのは…」
「別にさん付けはいらないですよキリツグくん。そうですね、まず私が天使だということを認識させなければですね」
そう言ってミカエルはいきなり光出したと思ったら白い羽根と天使の輪が現れた。ガチの天使だった!?手品にしちゃ羽がなんかすごい動いてるし天使の輪もすごい輝いてる。どうやらマジモンの天使だったらしい。
「どうですかキリツグくん。これで信じていただけましたか?」
「え?ああうん、とりあえずわかったよ。あとで羽とか触らせてね」
「ひぇ!?は、羽根をですか…?わ、わかりました…」
いきなり顔が真っ赤になりましたよこの天使さん、可愛いですね。
ってか触らせてくれるのOKなんだね。あとでたくさんモフらせてもらいます。
「それじゃ、次行くね。家の事情と居候っていうのは?」
「あ、はい。家というより天使のしきたりといいますか、天使は成人する前に人間界で過ごして慣れ親しもうというのがありまして」
「事情がそこまで重い事情じゃなくてよかった。天使にも成人とかあるんだ」
「まあ天使の寿命って最高位の天使様とかでなければ人間とそこまで変わんないですよ。私自身キリツグくんと同い年ですし」
「そうなの!?なんか思ってたのとだいぶ違う!」
「みんなそう言うらしいですよ」
それからミカエルから天使のことについて色々聞いた。
天使は成人前に人間界で過ごして情勢を知り、慣れ親しむこと。人間界に来たとして住む場所がないから誰かの家にお世話にならないといけないこと(住む場所は天使の強い希望がない限りは安全に過ごせる場所に決定される)。成人してから人間界で過ごすか天界(天使たちの住む世界)で過ごすかを決めること。人間界で過ごすからといって天界に戻れないわけじゃなく、人間で言うところの実家に帰る程度の認識だということ。成人したら人間を陰ながらサポートしたり天界で仕事に勤しむこと(この辺りは人間と対して変わらない)だそうな。
「そっか。天使にも色々あるんだね」
「でも私も含めて天使って人間が好きなんですよ。だからあまり苦でもないんです」
「それならよかった。それで俺の名前を知ってるのも俺の家に居候するのも安全に過ごせる場所に選ばれたからって理由なんだね」
「そ、そうですそうなんです!(本当は違うんですけど…)ボソッ」
「ん?何か言った?」
「い、いえ!なにも!そ、それで、私をこの家においていただけますか…?もちろん家事は私が率先してやりますしお金だって出しますので…」
「え?うん、それは全然いいよ」
「ほ、本当ですか?」
正直なところ、断るなんて選択肢はなかった。
もしここで断ったりしたらミカエルはまた違う家を探さなければならない。安全な場所提供されるから最悪な事態にはならないんだろうけど、せっかく頼ってくれているのにここで締め出すのは本意じゃない。ましてやミカエルに寂しそうな顔をされると心が痛む。
それにこんな美少女と一緒に過ごせるなんて夢のようだし、前世で一体どんな徳を積んだらこんなことになるんだか。
「本当だよ。だけどその代わり、家事は二人で協力してやること。お金は少しでも出してくれるなら嬉しいけどそこはまた話し合っていこう。それでいいならこれからもよろしく」
「は、はい!ありがとうございます!よろしくお願いします!」
やっぱり笑うと可愛いなぁ。
安全だと思ってくれてるんだ、これから誠実な心を持ってこの娘と…ちょっと待って?こんな美少女と?一つ屋根の下で?共同生活?果たして俺の理性が持つだろうか…。いや、なんとかするんだ。ここで欲を出したら…あ、ダメ、風呂上がりとか想像したら自分で自分を抑えきれない!ああああああああああああああ!
「…優しいところ、やっぱり変わってないなぁ。本当に…」
俺が変な妄想して悶えていたからミカエルの呟きはてんで聞こえなかったのだが、慈愛に溢れた顔でこちらを眺めていたのは確認できた。
こうして普通な俺こと仲真切嗣と美少女天使ミカエルの共同生活が始まった。
この日から俺の周りではいろんな出来事が起こるのだが、今の時点では知る由もなかった。
短編でも評価をいただけると嬉しいです!
よろしくお願いします!