- 1 - 譲渡
「俺はヒーローになりたかった」
睦月が眠りについた後、俺は近所の居酒屋に足を運んだ。カウンターしかない縦長の造りは、誰かがトイレに行く時は椅子を引かなければならないほどに狭い。
俺が入った時には賑わっていた店内も、気付けば店主と俺ともう1人の客の3人になっていた。店主と客は子供の頃の夢について話している。どうやら店主は漫画家になりたかったらしい。しかし才能の壁にぶち当たり、2つ目の夢であった自分の店を構えるという夢を叶えたとのこと。突然2人に話を振られて、俺がした回答がそれだった。
店主は俺のありがちな回答では話が広がらないと思ったのかつまらなそうにしていたが、客は違った。
「今もなりたいのかい?」
1つ空けて座っていた客は席を詰めて俺の横に座した。
客は40歳くらいの男だった。目尻に出来た皺は彼の苦労を表していたが、決して疲労の色は見えなかった。鋭角に吊り上がった眉に力強く俺を見つめる眼。会話の流れに沿ったただの質問である筈が、その迫力により人生を左右する回答になる錯覚を覚えた。
「なりたいですよ。でもなれない。ヒーローには『変異』がいる」
「その『変異』を与えられると言ったら?」
何を言っているんだこの男は。『変異』は生まれ持った能力であり、いわばその人の才能だ。顔が良かったり、口が立ったり、勉強が出来たり、運動神経に優れていたり、そういった才能と『変異』は同じで人に与えることなど出来ない。
「酔っ払いを馬鹿にしないで下さいよ。そんなこと出来るわけがない」
少々ムカついた。こんな問答をするくらいなら、店主のような態度を取られた方が幾分かマシだった。出来る筈もない理想の話をして何になると言うんだ。
「僕はね、ヒーローなんだ。顔を隠して活動をしているから信じて貰えないかもしれないが、そこそこ名前は知れている」
ああ、そういうことか。『変異』を持っていない俺を『変異』を持ったヒーロー様が見下し、優越感に浸るためにこんな馬鹿げた話をしているに違いない。「『変異』が欲しいです」と回答しようものなら。「あげられません(笑)」と返ってきていたのだろう。
「自慢ですか? 誰もが望む職業に自分が就けているというのは大層気持ちいんでしょうねえ」
向けられた悪意には悪意で返す。向こうから売ってきた喧嘩だ。俺は悪くない。
「そう捉えたのなら謝ろう。しかし自慢する気も馬鹿にする気もないよ」
男は深々と頭を下げた。肩透かしに合い、握った心の拳が行く先を見失った。
「僕はもうヒーローを辞めたいんだ。ヒーローという職業は脚光を浴びる反面、浴びすぎる。プライベートもなければ自由もない。ヒーローという市民が抱く理想像を演じ続けるのはもう疲れた」
それはヒーローになった者の権利であり義務だろう、と思った。
「だからこそ、ヒーローになりたい人を探していた。僕の『変異』は人に譲渡が出来る。望む人にこれを与えたいと思っている」
「聞いたことないですよ。そんな話。才能は人に与えられるものじゃない」
「嘘じゃないよ。なぜなら僕自身もこの『変異』を人から貰ったから」
食い下がる男に不信感を抱いた。そういって人の夢につけこんで高いツボとかを買わせる気なんじゃないか。「その方法はこのツボを買うことです! ツボに水を注ぎ、願いを込めれば夢がかないます!」とでものたまいだしたら店を出よう。
「じゃあ貰いますよ。アンタはヒーローを辞められる。俺は長年の夢を叶えられる。こんなウィンウィンな関係はない」
男の顔がぱあと晴れた。重荷から解き放たれたと言わんばかりの表情であり、じゃあなんでヒーローになったんだと怒りが湧いた。なりたくてもなれない人がいるというのに。
「まずは一か月だ。一か月で『変異』を正式に受け取るか決めて欲しい」
「何で一か月?」
「ヒーローという職業の実態を分からないまま与えてしまうと僕の二の舞になる。一か月ヒーローを経験してからどうするかを決めて欲しい」
尤もらしいことを言ってはいるが、1か月後にやっぱりヒーローを辞めたくないという気持ちが出た時用の保険だろ。そう言ってきたとしても返す気はさらさらない。
「一か月後のこの時間にこの居酒屋に来る。その時に答えを聞かせて欲しい」
すでに答えは見えている。今日この場で正式に回答をしても良かったが、男がそれを固辞した。
「手を出して」
男は握手を求めてきた。それが譲渡の儀式なのだろう。俺は男に従い彼の手を握った。
「はい、終わり。じゃあ一か月後ね」
男はそう言い残し、居酒屋を出ていった。体には何の変化も感じられない。ヒーローになった実感も、『変異』を受け取った感覚もない。
30歳を超えて何をしてるんだ俺は。いくら酔っているとは言え、酔っ払いの戯言を少しでも信じてしまうなんて恥以外の何物でもない。
俺は会計を済ませ、男への嫌悪感を土産に家路についた。
*
目を覚ますと僅かに頭痛がした。久しぶりにアルコールを摂取したからだろうか。昨日飲んだのはビール一杯とハイボールを二杯。たったの三杯で二日酔いになるとは。
酒は飲まなければ弱くなっていくと言われるが、あながち間違いでもないらしい。飲みサーに所属していた大学生の自分に、今の姿を見せたら失笑されることだろう。
月曜日。今日からまた一週間が始まる。
1人で使うには余りにも大きいダブルベッドから足を下ろし、体を伸ばした。バキバキと関節が鳴り、日ごろの運動不足を実感する。
「時々運動しないとダメだな、こりゃあ」
欠伸をしながら寝室のドアノブを掴み、手前に引くと「バキィ!」と何かが壊れる音がした。欠伸によって閉ざされた瞼を慌てて開けると、手には1枚のドア。ドアとしての機能を失った木の厚板がそこにあった。
蝶番を見てみると、ねじがひん曲がっており、無理やり引きちぎられたような跡があった。あり得ないが、俺が壊したとしか思えない。
「パパ! 朝からうるさ……」
その音に導かれるように、リビングにいた睦月が寝室に来る。俺の手に持たれたドアを見て、口を大きく開けた。
「何壊してるの……」
俺の怪力っぷりに青ざめた表情を浮かべる睦月。逆の立場だったら俺も同じような表情を見せるに違いない。俺自身、何が起きたのか分からなかった。
「いや、いつも通り引いたら壊れたんだよ」
「元々壊れかけていたのかもね」
ドアを開いただけで蝶番を壊すなど、人間の力ではあり得ない。睦月の言う通り、壊れかけていたところに力が加わったと考えるのが普通だ。
俺はそっとドアを壁に立てかけてリビングに向かった。
リビングの食卓の上にはトーストとサラダ、そして目玉焼きが用意されていた。トーストの香ばしい香りが鼻孔に充満し、俺の意思とは反して腹が鳴る。
睦月が10歳になってからというもの、俺が行っていた家事を積極的に手伝ってくれるようになった。掃除洗濯料理、そして仕事。これまではその全てが俺の担当だったが、今は仕事以外の分野を睦月が負担している。
娘に助けられる父親はどうなのだろう、と思うところもあるが、助かっているのは事実だ。父親としてのくだらないプライドよりも体力の方が重要に決まっている。そう言い聞かせて睦月に家事をお願いしていた。
「パパこれ」
席に着いた俺に、睦月は1枚の紙を手渡した。そこには「授業参観のお知らせ」と題が付けられており、その下には授業参観の日程、時間などが記載されていた。
「この日に授業参観あるから来てね」
俺が子供の頃は親に学校へ来て欲しくなかったから黙っていたが、睦月は来て欲しいようだ。良い娘を持ったと感動していたが、今後到来するであろう反抗期のことを考えると胸が締め付けられた。良い子ほどその反動が怖い。
「9月30日か。有給申請しとく」
俺に提案を受け入れられて、睦月は満面の笑みを向けた。
最近どんどん千夏に似てくる。6年前に亡くなった妻の面影が睦月に表れると、嬉しい反面、寂しくもあった。どうしても千夏のことを思い出してしまう。
「睦月、牛乳取って」
「ん」
睦月は牛乳パックを取り、俺に手渡した。
軽く掴んだはずだった。軽く掴んだはずだったのに、牛乳パックは握りつぶさされ、中身が睦月に噴射された。睦月は真っ白になり、生臭い匂いを漂わせた。
「ごめん、わざとじゃ……」
「パパ最低」
睦月は軽蔑の目を浮かべながら席を立つと洗面台に向かった。宝石のように輝いていた笑顔が一変、ゴミを見る様な視線になった。睦月が反抗期になると毎日この視線を向けられるのか。考えるだけで頭痛が酷くなった。
朝目覚めてからというもの俺の体がおかしい。ドアや牛乳の件も、別に力を入れてないのに考えられないような力が湧き出てしまっている。自分の身体なのに自分の身体じゃないみたいだ。
『緊急ニュースです。トヨデン自動車と契約を結んでいたNo.1ヒーローのバーンズ氏が引退を表明しました。突然の申し入れにトヨデン自動車は引き留めを表明しておりますが、バーンズ氏の決意は固く「覆ることはない」と語っているそうです。バーンズ氏引退の報道により、ヴィランたちの活動が活発になることが予想されます。くれぐれも夜道を歩く際は……』
つけっぱなしになっていたテレビから緊急速報が流れた。その内容はあるヒーローの引退について。ヒーローたちによって街の治安は維持されているため、そのトップが引退するとなれば、緊急速報にもなるだろう。
「バーンズ、ヒーロー辞めちゃうんだ」
牛乳を洗い流し、服を着替えた睦月がタオルで濡れた髪を拭きながらリビングに戻ってきた。そしてそのニュースをみてポツリ呟いた。
『これからバーンズ氏の記者会見が行われます。中継の山中さん』
場面が切り替わり、トヨデン自動車の本社ビルが映し出された。
『バーンズ氏を乗せた車が先ほど到着しました』
カメラがキャスターから車へと移り、アップになる。窓にはスモークが貼られており、車内の状況は分からなかった。
後部座席のドアが開き、バーンズが姿を現した。
全てを飲み込むような漆黒な全身タイツに、燃え上がるような真っ赤なマントを羽織ったお馴染みのコスチュームに身を纏い、No.1ヒーローの風格を漂わせている。
バーンズの顔をカメラが抜く。バーンズのタイツはタートルネックのように顔面の半分を隠しており、また目の部分がくり抜かれた鉢巻を巻いていたためにその素顔は分からない。
何も変わらない、いつものバーンズだったが、俺はなぜか昨日あった居酒屋の男をテレビに映るバーンズに重ねていた。
今思えば、男の声とバーンズの声は似ていた。『ヒーローは未然に登場する!』というお決まりのセリフが男の声で再現される。そして、バーンズに造形が似た顔。間違いない。昨日会った男はバーンズ本人だ。
バーンズは立てた人差し指をカメラに向けた。それは俺だけに伝わるメッセージだ。『変異』は与えたぞ。
「大変なことになっちゃったね。ヒーローたちに頑張って貰わなきゃ」
「ああ、頑張らないとな」
「パパに言ってないよ」
これでドアを壊した説明が付く。この怪力はバーンズの持つ『変異』だ。
しかし本当に『変異』を渡すことが出来るのか? 『変異』を渡したのではなく、あの男は『変異』を持っており、それで一時的に人の力を増幅させるという能力なのではないか?
俺はまだ、自分の怪力が『変異』による力だと確信することが出来ずにいた。
*
「課長今朝のニュース見ました?」
社用車を運転しながら中田が話しかけてきた。中田の指しているニュースとはバーンズ引退の件だろう。
「バーンズの引退だろ? ああ、今朝見たよ」
「どうなっちゃうんですかねこの先。俺、バーンズの穴は大きいと思うんですよ。バーンズ一強時代と言われるほど、ヴィランの検挙率が高かったですからね。他のヒーローたちがそれを埋められるかなあ」
「お前はヒーローの心配より自分の心配をしろ。ぽっかりと空いた売り上げを埋められるんだろうな?」
中田は口笛を吹き始めた。聞こえていないふりをするには方法が古典的すぎるぞ。
「そういえば、今週の金曜日に飲み会をするんですけど、課長いかがです?」
「あー悪い。また誘ってくれ」
中田は「はーい」と軽い返事をした。
断ることが分かっているのに毎回誘ってくれることは有難かった。何回も断り続けていればいずれは誘わなくなるに決まっている。それなのに懲りずに誘ってくれるということは、上司として信頼されているという証でもあった。
千夏が死んでから飲み会には一度たりとも参加していない。睦月は行ってくればいいのに、と言ってくれるが、1人で寂しく夕飯を食べさせるわけにはいかなかった。
母親がいない分、俺がその穴を埋めなければいけない。それが父親としての使命だ。
「睦月ちゃんっていくつになるんですっけ?」
「10歳だ」
「彼氏とか……」
「いるわけないだろ」
食い気味に否定した俺に中田は失笑を浮かべた。
「最近千夏に似てきていてな。学校で一番可愛いに違いないから心配だ」
「千夏さん美人でしたもんね。僕とかどうですか? お父さん」
「冗談でもやめろ」
中田の脳天に軽くチョップを打つと「痛ってえ!」と中田が絶叫した。軽く打ったつもりだったが、その痛みで中田はハンドル操作を乱した。
午前中の外回り営業を終えた俺たちは定食屋に入った。
中田の頭頂部に出来たたんこぶを見て申し訳なくなったため、そのお詫びで今日の昼食は俺の奢りとなった。
自分が思っているよりも更に弱い力が本来の俺の力に相当する。この力に早く慣れなければ、俺はいつか誰かを怪我させてしまう。ちなみにたんこぶは怪我の内に入らない。
卓上に置かれた割り箸を手に取り、力加減の練習をしている俺を見て、中田は怪訝な表情を浮かべていた。
「バーンズが辞めた後はどうなるんだろうねえ」
「早速各地でヴィランが暴れまわっているらしいわよ」
真横の卓に座る老婦人たちが話している内容が意図せず耳に届く。
定食屋の中だけではなく、点けられているテレビもバーンズの引退ばかり取り上げていた。
「俺にも『変異』があったらなあ。ヒーローになって大企業と契約して金持ちになって昼ごはんには唐揚げじゃなくて寿司を食べていたのに……」
中田は先ほど運ばれてきた唐揚げ定食をつつきながら虚空を眺めた。それは中田だけではなく、俺も他の人たちも一度は思ったことがある欲求だった。
「ないものをねだっていても仕方ないだろう。俺たちは配られたカードで戦うしかない」
「課長ったら夢がないなあ」
中田は唐揚げを掴み、口に運んだ。
誰もが小さい頃に抱く夢。人によってその内容は様々だが、人は皆、何かになりたいと願っていたはずだ。社長、スポーツ選手、芸能人、医者、教師。俺の場合はヒーローだった。ヒーローになれるのは『変異』を持って生まれた、いわゆる第二世代のみ。あいにく、俺は第一世代だった。
「今の俺の夢は睦月が立派に成長してくれることだけだよ」
「そういうものですかねえ」
中田は行儀悪く箸を咥えた。
嘘ではないが誠でもなかった。睦月を立派に育てること、それは俺の一番の夢ではあるが、唯一ではない。32歳にもなるのに、まだ未練がましく子供時代の夢をポケットに忍ばせている。
例えばスポーツ選手になるという夢であれば、挑戦したその先に挫折があり、挑戦したという事実によって諦めがつくのだろうが、ヒーローは違う。生まれ持った才能、それが足切りであり、挑戦することすら叶わない。どうして諦められるというのか。
俺は未だにあの頃見たヒーローの後ろ姿を自分に重ねていた。
「ごっそさん」
昼食をとった俺たちは、午後の営業に向かうため定食屋を後にした。
一服しようと胸ポケットに入れた煙草を取り出したが、中には1本も入っていなかった。先ほど最後の1本を吸ったことを思い出す。
「悪い、先に車に戻っていてくれ。煙草買ってくる」
「分かりました」
中田は駐車場へ、俺はコンビニへと歩みを進める。千夏に嫌いと言われて禁煙していたが、彼女が死んでからは禁煙を止めた。煙草を吸っていれば、千夏がふと現れて俺のことを叱ってくれるような気がしたからだ。彼女はもう帰らぬ人になっているというのに。
「未練がましいな、俺も」
夢と妻。手を伸ばしても届かない物を求めてしまう自分を揶揄した独り言だった。
コンビニで煙草と2人分の珈琲を買い、社用車へ戻る。
「いやあ! 誰か助けて!」
その道中、女性の叫び声が聞こえた。
思わず振り返ると、女性を右脇に抱え込み、左掌から炎を噴射する男の姿があった。男は道路の真ん中に立ち、車の往来を遮っていた。運転手たちは初めクラクションを鳴らしていたが、男が『変異』を持つ第二世代だと気付くと、慌てて車から降りてその場を離れた。
「この女を殺して俺も死ぬ!」
男は冷静な判断を失っている様子であった。叫びながら涙を流し、ひどく感情的になっている。
「この女は俺以外の男と関係を持ちやがった! 罰としてコイツの顔を燃やす!」
どうやら2人は恋仲にあったようで、女が不貞行為を行い、男がキレているという図式だった。そして自分が受けた屈辱を晴らすため、この大勢が見ている中で彼女を制裁するつもりなのだろう。
気付けば俺は走り出していた。放っておいてヒーローの到着を待てばよいものの、今朝の怪力によってヒーローになった気でいたらしい。
自分の利益よりも他者の利益、というヒーローの心構えを持ち、男の前に跳び出した。
「待て。そんなことをして何になる」
ビデオテープが擦り切れるほど見たアニメや映画、ドラマのヒーローに自分を重ねる。
あれだけカッコよかったセリフも自分の口から飛び出すと陳腐に聞こえた。
「何だお前は。お前に俺の苦しみが分かるのかよ! 結婚の話までしていた相手が浮気するなんて、悪いのはどう考えてもコイツだろうが!」
「言い分は分かる。だが一時の感情に身を任せてその子を傷つけてみろ。いつかお前はこの行いを後悔することになる」
「うるせえ!」
男が左手を女の顔面に押し付けようとした時、体が跳ねた。人ならざる力による瞬発力によってその距離が一気に縮まる。
男は命の危険を感じたのだろう。標的を女から俺に移し、左手を向けたが遅い。俺の右拳が男の顔面を捉えると、その勢いのまま男を後方へ吹き飛ばした。
男はボールのように何度も地面をバウントした後、動かなくなった。
女は、唖然とした表情で地面に座り込んでいる。
「ありがとう御座いました。あなたは……?」
俺は慌てて手に持ったビニール袋から中身を出し、それを被った。無理やり穴をあけ、目と口を露にする。ヒーローは顔を見せず、その行いに見返りを求めない。それが俺の思い描くヒーロー像だった。
「えー、ホープーンです」
苗字である望月を英語にするとホープムーン。それを縮めてホープーン。これが小さいころから考えていた俺のヒーローネームだった。
まだ疑っていたがこの力は本物だ。俺はヒーローになれる。
俺はこれまでにない高揚感を味わっていた。
約20000文字の短編です。
4回に分けて投稿します。