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本読みクラブ  ー怪人二十面相が好きだった僕らの時代ー  作者: だるっぱ
ファイル3ー本荘先生
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ホームルーム

♪キーンコーンカーンコーン


 休憩時間が終わるチャイムが鳴った。四時間目の始まりだ。このホームルームが終わったら、今日は学校から帰ることが出来る。教室のドアが引かれると、本荘先生が入ってきた。


「はーい、皆さん着席して。今から、ホームルームを始めます」


 本荘先生は、若くて綺麗な先生だ。熱心で真っすぐで、皆から人気がある。太田なんか、先生に頼まれてもいないのに、立っている生徒に「着席しろ」と命令なんかをしている。


「夏休みは、どうでしたか。十分に楽しめましたか」


 本荘先生は、ニコニコとしながら僕たちを見回す。


「夏休みで、皆さんが楽しかったことを、今、思い出してみてください。海に行ったという方は手を挙げてください」


 「はーい」という声とともに、半数くらいの生徒が手を挙げた。僕も手を挙げる。


「じゃ、山に行った方は」


 「はーい」海よりも少なかったが、三分の一くらいの生徒が手を挙げた。先生は手を挙げている生徒を一人一人確認する。


「あれれ、山は人気がないのかな」


 山と言われて手を挙げていた小川に、先生が視線を向ける。


「小川君は、山で何をしましたか」


 先生に当てられた小川が、「えー」と声を上げて、嫌そうに立ち上がる。


「えーと、家族で六甲山にハイキングに行ったけど、歩いてばっかりで、ちょっとしんどかった」


 先生はそんな小川のことを、微笑ましく見つめながら、更に質問をする。


「じゃ、小川君は、山でどんなことをしたら、楽しくなるのかな」


 小川は、発言が終わったので座ろうとしていたのに、まだ質問が続くので、仕方なしに、また立ち上がった。


「えーと、キャンプかな」


 本荘先生は、ニコニコとして小川の意見を聞いた。


「今度、五年生は林間学校があります。みんなで山に行きますが、そこで、キャンプをします」


 本荘先生がそう言うと、教室の皆が歓声をあげた。


「キャンプや、キャンプ」


 太田は立ち上がって、片手を突き上げている。さっきまで嫌そうにしていた小川まで「イエーイ」と、声を上げて喜んでいる。


「はーい、静かにして」


 先生は、騒いでいる生徒たちをなだめる。教室の興奮した空気はなかなか収まらないが、先生は話を続ける。


「今日のホームルームは、その林間学校を、どのようにして過ごすのかを説明をします。また、当日一緒に行動する班は、もう先生が決めています。ここに内容を説明したザラ半紙がありますので、前の席から順番に後ろまで回してください」


 本荘先生は、そう言うと、林間学校の説明が刷られたザラ半紙を皆に配った。僕は、そのザラ半紙を手にすると、ざっと読んでみた。林間学校では、みんなとカレーを作ることになっている。夜は、キャンプファイアーも行うんだ。へー、面白そう。今度は、気になる班編成を確認した。僕は、誰と一緒なんだろう。


三班

 太田 秀樹

 小林 博幸

 二宮 誠

 加藤 裕子

 坂口 直美

 米倉 由美


 太田と一緒だ。これはかなり賑やかになるな。二宮がいてくれるのは、とても助かる。太田の暴走を抑えてくれそうだ。女子はあの百合コンビと一緒なんだ。あの絵を思い出してしまう。米倉はしっかり者だから、カレーを作るときなんかはリードしてくれそうで安心だ。そんなことを、メンバーを見て思ってみる。


「ザラ半紙に書いてありますが、日程は九月十日の木曜日と十一日の金曜日です。必要な持ち物についても記載してあります。必ず、ご両親にこのプリントを見せてください。いいですか」


 ホームルームでは、その後も、当日のイベントの説明や、その役割分担を皆と話し合った。 


♪キーンコーンカーンコーン


 チャイムがなった。四時間目の終了だ。でも、本荘先生はまだ、話を続けようとする。


「まだ、立ち上がってはいけません。最後に、夏休みの宿題を、まだ提出していない方がいます」


「太田や」


 小川が、悪戯っぽく太田を指差すと、教室のみんなは太田を見て笑った。本荘先生も太田を見ると、ワザとらしく口を尖らせて言う。


「いいですか、必ず提出をしてくださいね」


 太田は、先生に指摘されて頭をかいている。先生は、そんな太田の様子を優しく見つめると、今度は米倉さんに視線を向けた。


「では、米倉さんお願いします」


 米倉は立ち上がる。


「起立」


 ガタガタと椅子を引く音をさせて、僕たちは立ち上がる。


「礼」


 教室の皆が、先生に向かってお辞儀をする。


「さようなら」


 僕たちは、声を合わせて先生に向かってお辞儀をする。小川のやつが、「さよ、おなら」と言ってふざけていた。


 ホームルームが終わると、太田が僕の所にやって来た。


「一緒の班やな」


「ああ、一緒やな」


「学校が終わったし、家に帰る前に、秘密基地に行こうや。何人か連れていく」


 太田は、そう言うと、ニヤッと笑った。

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