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序章
ここは剣と魔法の世界、『オーレティア』。創世の女神アストリアが創ったとされている。アストリア聖教会はその奇跡を讃えんと、暦を「アストリア暦」と改めて更なる信仰の拡大を望んだ。
アストリア暦783年、春。リオレーノ大陸の南西部に位置するルーフレッド王国の王都、ルーファニアで1人の男の子が産声を上げた。男の子の名前は「レイル=クラウン」。ルーフレッド王家に仕える騎士爵の家系、クラウン家待望の長男で、この物語の主人公である。
ーー時は少し流れてアストリア暦703年。レイルは10歳となり、背も130センチを超えたくらい。亜麻色の髪は癖もなく、眉に掛からず耳を半分覆う程度。男の子にしては少し大きな黒い瞳が、将来は爽やかな二枚目になるであろうその顔立ちを中性的なものにしている。
さて、このレイルが今何をしているか。一般的な平服であるシャツにズボンを着ており、場所はクラウン家が所有する「クラウン騎士爵領」の領主館ーー。その一室で彼は机に木板と木炭を置いた状態で座していた。
「エレナ姉様、」